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心のケア、尼僧だからこそ

※文化時報2021年7月12日号の掲載記事を再構成しました。写真右は玉置妙憂氏、左は玉置氏がデザインしたロゴマーク。

 高野山真言宗の僧侶兼看護師で、非営利型一般社団法人「大慈学苑」(東京都江戸川区)の代表を務める玉置妙憂氏が、女性僧侶による超宗派団体「比丘尼(びくに)サンガ」を立ち上げた。スピリチュアルケア=用語解説=に関心を持つ女性僧侶同士の連帯を図り、女性ならではの視点で社会に働き掛けたいという。(安岡遥)

 6月22日に第1回交流会がオンラインで開かれ、真言宗や日蓮宗、浄土真宗などから11人が参加。現在の取り組みや今後行いたい活動について意見を交わした。

 修験道の行者でもある参加者からは「豊かな暮らしへの慣れから生まれる生きづらさは、厳しい修行で和らげることができるのでは」とのアイデアが寄せられるなど、参加者らは学びを深め合っていた。

 今後は、台湾の「大悲学苑」に関するドキュメンタリー映画の自主上映を計画。新型コロナウイルス感染拡大終息後は、対面での大会も構想している。

 玉置氏は「各宗派の本山を会場に、活動報告や交流の場を設けるのが夢。メンバーそれぞれがスピリチュアルケアについて学び合い、尼僧の存在感を社会へ発信したい」と展望を語った。

台湾をモデルに

 玉置氏が比丘尼サンガを立ち上げた背景には、台湾で活動する女性僧侶への思いがある。

 玉置氏が2019年に設立した「大慈学苑」は、訪問看護ステーションのいわばスピリチュアルケア版。僧侶や看護・介護職でケアの研鑽を積んだメンバーが地域や病院・施設と連携して家庭訪問し、傾聴に当たる。

 このモデルとなったのが、台湾の「大悲学苑」。玉置氏は15年から通い詰め、技術と仕組みを学んだ。

 台湾では、男性僧侶が教義研究や自己の修行達成を志すのに対し、スピリチュアルケアをはじめとする社会実践活動のほとんどを女性僧侶が担っているという。

 例えば大悲学苑には、多数の女性僧侶が在籍している。自宅で死を迎えようとする患者や、グリーフ(悲嘆)を抱えた遺族の話に耳を傾け、精神的苦痛(スピリチュアルペイン)を和らげる。

 また、第38回庭野平和賞を受賞した昭慧法師のように、自然保護や男女差別の解消といった社会課題に向き合う僧侶もいる。

 国内でも、スピリチュアルケアに携わる女性僧侶が少なくないものの、僧侶間の交流は少ない。「宗派の違いもあり、誰がどこでどんな活動をしているのか分かりにくいのが現状。他者の取り組みを知り、高め合う場をつくりたかった」と、玉置氏は明かす。

 また、スピリチュアルケアには、包容力や柔らかい立ち居振る舞いなど、女性が持つとされる特性が欠かせないという。玉置氏は「善悪の価値判断や一方的なアドバイスを交えず、黙って話を聴く姿勢が最も重要。男女の区別は望ましくないかもしれないが、女性の方がより適していると感じることが多い」と分析する。

 特に、他者に話しづらい悩みを抱えた相談者の中には、男性より女性を話し相手に望むケースも目立つ。

 玉置氏は言う。「女性で僧侶だからこそできることがある。台湾の尼僧たちのように、先頭に立って社会活動を牽引できれば」

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