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子ども食堂×寺子屋 地域全体が居場所

 大阪市住吉区の浄土宗願生寺(大河内大博住職)が、子ども食堂=用語解説=と寺子屋を同時開催する取り組みを始めた。近くのカフェとお寺を子どもたちが行き来することで、地域全体を居場所にしようという試みだ。人々が交流するためのハブ(結節点)にお寺がなることで、支え合う地域づくりを進める。(大橋学修)

お寺はハブ、交流つなぐ

 7月19日にオープンした「こども食堂『にじっこ』すみえ」と「寺子屋さっとさんが」。8月を除く毎月第3月曜の夕方に開く。
 
 子ども食堂は、願生寺近くの「DELI CAFE 102(デリカフェ・イチマルニ)」の定休日に店舗を借りて開催。住吉区内で子ども食堂を運営するボランティア団体「こども食堂にじっこ」(中西秀美代表)と協力して運営する。

 新型コロナウイルス感染予防のため、オープン日の19日は定員30人の事前予約制とした。前日から仕込みを行っていたメニューは、サンマと夏野菜のトマト煮や沖縄パイナップルコンポートなど、栄養満点の内容。食堂に来た親子は、にぎやかに言葉を交わしながら、食事を楽しんでいた。

 4人の子どもを連れてきた棗田あかりさん(36)は「家では、私と子どもだけでイライラすることが多い。外で食事できることに子どもたちのテンションは上がるし、いろいろな人に話し掛けてもらえる」と満足そう。中西代表も「いっぱいしゃべってもらうことが一番大切」と話した。

「恩送り」を根付かせたい

 「こども食堂『にじっこ』すみえ」は、経済的に困窮する人だけでなく、誰もが食事できる場所として地域に開かれる。大人300円、子ども100円が必要だが、子どもには無料食事券「みらいチケット」がある。

 「みらいチケット」は、通常営業日の「DELI CAFE 102」で食事した客が、子どもの代わりに1枚100円で購入。子どもは「誰かを助けること」を条件に利用できる。助けた内容は必ず手紙に書き、手紙は店内に掲示される。

サンガ・図

 チケット購入者は再来店すれば手紙を読めるため、リピーターになる可能性がある。この仕組みを他店にも拡大させられれば、チケットが地域通貨のように流通する。

 大河内住職は、食事を提供された「恩」を他の人に送る「恩送り」が次々とつながる地域社会を目指している。この「恩送り」の習慣を定着させるために、食事をあえて有料にしたのだという。

地域と寺院の存続

 一方の寺子屋では、大学生や高校生が小学生の勉強を手伝う。ここも、互いに顔の見える関係をつくる交流の場となることが目標だ。

 願生寺は昨年5月、近くの南海沢ノ町駅前に訪問看護ステーションを開設。今年5月からは毎月第2月曜(8月を除く)にまちの保健室=用語解説=介護者カフェ=用語解説=を同時開催し、矢継ぎ早にお寺を開く活動を行っている。

 始めるコツは「何事も〝NG(できない)〟からスタートさせること」だという。訪問看護ステーションはさまざまな事情で境内に置けなかったが、地域全体を伽藍と考える逆転の発想で駅前に事務所を構え、地域包括支援センターや社会福祉協議会などの多職種連携につなげた。

 「一人にさせない」「一緒に考える」「共に歩む」という共生(ともいき)を大切にしている大河内住職。「一人一人のニーズに届く場づくりと、メッセージ性が必要。課題解決の仕組みをどうデザインするかが大切」と話す。

 意識しているのは、さまざまな人々がお寺や地域を出入りすることによる「化学反応」だ。世代や職業を超えた交流のハブとなることで、お寺も地域も活性化すると考えている。
 
「人口減少は、過疎地域だけでなく、都市部にも起きる問題。地域が残らなければ、寺院も残らない。住みやすい地域をつくることが、寺の存続につながる」。大河内住職は力を込めた。
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【用語解説】子ども食堂
 子どもが一人で行ける無料または低額の食堂。困窮家庭や一人親世帯を支援する活動として始まり、居場所づくりや学習支援、地域コミュニティーを形成する取り組みとしても注目される。NPO法人「全国こども食堂支援センター・むすびえ」の2020年の調査では、全国に少なくとも5086カ所あり、宗教施設も開設している。

【用語解説】まちの保健室
 学校の保健室のように、地域住民が健康などさまざまな問題を気軽に相談できる場所。図書館や公民館、ショッピングモールなどに定期的に設けられ、看護師らによる健康チェックや情報提供が行われる。病気の予防や健康の増進を目的に、日本看護協会が2001年(平成13)度から展開している。

【用語解説】介護者カフェ
 在宅介護の介護者(ケアラー)らが集まり、悩みや疑問を自由に語り合うことで、分かち合いや情報交換をする場。「ケアラーズカフェ」とも呼ばれる。主にNPO法人や自治体などが行い、孤立を防ぐ活動として注目される。

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