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一人にさせない みんなのホーム

※文化時報2022年5月13日号の掲載記事です。

 生活困窮者支援に取り組む認定NPO法人抱樸(ほうぼく)(北九州市八幡東区)は4月25日、東京都内で会見し、特定危険指定暴力団工藤会の本部跡地(同市小倉北区)に建設する「希望のまち」のプロジェクト概要を発表した。家族機能を備えた福祉の拠点として、困った人は誰でも入れるコミュニティーをつくる。牧師でもある奥田知志理事長(58)が、地域に根差した活動を続ける寺院住職らと連携を図り、モデルケースとして全国に発信する。(山根陽一)

 希望のまちは、1752平方メートルの敷地に3階建て延べ約3千平方メートルの複合型社会福祉施設を建設。生活に関するあらゆる困り事に対応する総合相談をはじめ、子ども食堂や学習支援、孤立・孤独を防ぐ「コミュニティカフェ」、生きづらさや障害などを抱える人の自立支援施設など七つの機能を持つ。

 工藤会の本部跡地を福祉の拠点にしようと、抱樸が2019年から約1億円の寄付を募り、今年3月に自己資金と合わせ約1億3千万円を支払って、土地を取得した。建築にはさらに約10億円かかる見通しで、公的制度に乗らない約3億円分を法人・個人からの寄付で賄う。24年10月のまちびらきを予定している。

 プロジェクトには北九州市も協力。北橋健治市長は「地域の課題解決につながる活動はしっかりと支援したい」とメッセージを寄せた。

 奥田理事長は「教会の牧師は数年で異動するケースが多いが、お寺の住職は長い歴史の中で地域と密接な関わりを保っている。宗教や宗派を超え、希望のまちの未来に向けて協力してほしい」と述べ、仏教界にも支援を呼び掛けた。

家族機能を社会化する

 抱樸は1988(昭和63)年に北九州市で発足。ホームレス支援を中心に、生活困窮者や社会から孤立する人々の生活再建を支援してきた。1923人がボランティア登録し、約2千人の生活を支えている。34年間の活動で、路上生活者ら3750人が家に住めるようになったほか、14万7895食の炊き出し弁当を配布。14万5204件の生活相談を受けた。

 奥田理事長は、日本バプテスト連盟東八幡キリスト教会の牧師であり、「困窮者支援の第一人者」として福祉関係者に広く知られている。ホームレス支援全国ネットワーク理事長、共生地域創造財団理事長なども務める。

 希望のまちプロジェクトが目指すところとして、奥田理事長が会見で強調したのが「家族機能の社会化」。家族がいないと住居を借りられず、葬儀を出せないといった慣習や、"ハウスレス"は解消しても社会的孤立という意味でのホームレスが続いていく現状を踏まえ、他人同士でも助け合って生きられる場をつくる。

 このため、まちの住人は世代や障害の有無などを限定せず、「ちょっと生活に困った人」が誰でも入れるようにする。「わたしがいる あなたがいる なんとかなる」をキャッチフレーズに、誰にとっても「希望のまち」となるようにしていくという。

 奥田理事長は「家族以外に相談できる友人や知人がいない」「8050問題=用語解説=が9060問題になろうとしている」などと、日本で深刻化する孤立・孤独の問題を訴えた。その上で「企業や家族が支えてきた日本型社会保障に代わる仕組みをつくらねばならない」と語った。

【用語解説】8050問題(はちまるごーまるもんだい)
 ひきこもりの子どもと、同居して生活を支える親が高齢化し、孤立や困窮などに至る社会問題。かつては若者の問題とされていたひきこもりが長期化し、80代の親が50代の子を養っている状態に由来する。

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