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介護用おむつ 余ればお寺が受け渡し

※文化時報2021年8月26日号の掲載記事です。

 家族が亡くなって不要となった新品の介護用おむつを必要な人に使ってもらえるようにと、浄土宗安福寺(大阪府柏原市)の大﨑信人住職(44)がおむつを集める活動を始めた。すでに地元の社会福祉協議会の協力を取り付けており、各地の介護事業者や寺院などにも参加を呼び掛ける。おむつを購入して必要な人に送る取り組みも始める予定で、資金を集めるクラウドファンディングの準備も進めている。(大橋学修)

グリーフケアにも

 活動の名称は「おてらおてあわせ」。支え合う手と理解し合う心が重なっていく様子をイメージした。介護用おむつが不要になった人と必要な人をお寺が結び、受け渡すことを目指す。今年5月に企画し、柏原市社会福祉協議会の協力が決まった。10月に初めて開催する介護者カフェ=用語解説=を通じ、参加者を募る。

 余ったものを持ち寄って困窮者支援に役立てる活動は、食品だと「フードドライブ」が知られているが、介護用おむつに特化した例は珍しい。大﨑住職は「おむつを提供してくれるのは、大切な方を亡くした人。受け取る僧侶はグリーフ(悲嘆)ケアに当たることになる」と話す。

遺族と介護者に出会う

 大﨑住職が介護用おむつに着目したのは、介護者カフェの準備を巡って檀信徒とした会話がきっかけだった。

 この檀信徒は、仕事を在宅勤務に変えて母親を介護していたが、思いがけず早くに亡くなった。「もっと長生きしてくれると信じて疑わなかった。介護用おむつを多量に購入していたが、たくさん残ってしまった」と打ち明けたという。

 檀信徒のおむつは、関西福祉科学大学の学生が運営する認知症カフェに提供。この時、人と人がつながることに気付いた。不要になったおむつを受け取ることは、遺族と向き合うことを意味する。また渡す時には、介護で苦労している人に出会う。僧侶ならではの活動だと確信したという。

 介護者カフェに関しては、昨年3月に浄土宗が開催した実践講座を受講。分かち合いの模擬体験で、親族を亡くした僧侶が涙ながらに自らの体験を語ったことに、胸を打たれた。「グリーフを語るとは、こういうことなのか」と実感した。

2021-08-23 大﨑信人氏・介護おむつの活動01

 地域貢献の必要性は分かっていたが、介護が鍵になるかどうかは半信半疑で、ニーズがあるかも分からなかった。だが、講師を務めた浄土宗総合研究所の東海林良昌氏(宮城教区雲上寺副住職)から「参加者が1人でもいい。ゼロなら、1人になるよう努力すればよい」という言葉を掛けられ、意を強くした。

 檀信徒らも賛同し、関西福祉科学大学の活動を紹介してくれた。さまざまなつながりができ、10月の第1回には東京都健康長寿医療センターの岡村毅氏を講師に招くことが決まった。

 自身もグリーフを抱えている。2年前、第2子が亡くなった状態で生まれてくる経験をした。「夫として、父親として、僧侶として、自分と向き合いつつ、妻にどう寄り添うのかを深く考えた」と明かす。

 自分と同じように大切な子どもを失い、苦しんでいる人のグリーフに耳を傾ける活動も模索する。晩婚化や不妊治療の進歩による高齢出産などを背景に、赤ちゃんの死に直面する人は多い。大﨑住職は「妻に寄り添う夫の在り方などを、参加者と共に考えていければ」と話している。
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【用語解説】介護者カフェ
 在宅介護の介護者(ケアラー)らが集まり、悩みや疑問を自由に語り合うことで、分かち合いや情報交換をする場。「ケアラーズカフェ」とも呼ばれる。主にNPO法人や自治体などが行い、孤立を防ぐ活動として注目される。

2021-08-23 大﨑信人氏・介護おむつの活動02

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