「離郷檀信徒」の葬儀仲介 都市と地方の寺結ぶ
浄土宗東京教区は、地方から都心に移り住んだ「離郷檀信徒」の葬儀や年忌法要を、地方の菩提寺に代わって都内の浄土宗教師が営めるように仲介するインターネットシステム「浄土宗東京教区・寺院ネットワーク」(https://samgha.jodo-tokyo.jp/ ) の運用を始めた。
地方の菩提寺か離郷檀信徒自身が、納めたい布施の金額を入力して申請。条件の合致する教師が自動的に選び出される。依頼者は、受託の意思を示した教師の中から委託先を決める。
布施の約半分を、離郷檀信徒の菩提寺に「御本尊前」として還流させる。配分の割合は、菩提寺を交えた話し合いで決める。菩提寺が後から判明した場合は、内規に従った金額を菩提寺に納める。
これまで東京教区では、離郷檀信徒から問い合わせがあるたびに菩提寺に相談するよう伝え、菩提寺が寺院名鑑から委託できそうな寺院を探して個別に法務を依頼していた。
近年は、インターネットを通じて僧侶を派遣する企業が台頭するなど、伝統仏教教団を取り巻く環境が変化。檀信徒のニーズに組織的に対応する必要があるとして、浄土真宗本願寺派の築地本願寺などで行われている事例を参考にしながら、独自のシステムを構築した。
西日本でも、過疎地域に菩提寺を持ちながら京阪神に移り住むケースがあり、東京都内と共通した課題がある。愛媛教区の教師は「大阪に移り住んだ檀信徒に対応できていない。寺院ネットワークのような仕組みがあるとありがたい」と語る。
一方、大阪教区の教師は「法務も教化もすべて都市部の教師が担い、菩提寺はキックバックを得るだけになる。菩提寺が教化しないなら、檀信徒とは何かという話になる」と懸念する。
宗が「寺院ネットワーク」と同様のシステムを運用すべきだとする声も聞かれるが、京阪神では、檀信徒宅で月命日に読経する「月参り」の習慣が残っており、教化の機会としても機能している。離郷檀信徒の法要を受託し「月参り」も行くようになると、元の菩提寺から離郷檀信徒が離れてしまう懸念がある。
大阪教区の山北光彦教区長は「大阪教区でも、離郷檀信徒からの問い合わせがあると、菩提寺に相談するようアドバイスしている。東京教区での運用状況を見ながら、今後の対応を考えるべきだろう」と話している。
私たちが週2回発行している宗教専門紙「文化時報」の中から、2020年4月18日号に掲載された記事を再構成しました。皆さまの「スキ」と「フォロー」をお待ちしております。
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