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ゴキブリハンドブックができるまで

ゴキブリ……好きな人や興味をもつ人が増えたものの、この4文字だけで飛び上がってしまうほど苦手な人もいる昆虫です。
この「ゴキブリ苦手レベル」は人それぞれで、目の前に出てきてもへっちゃらな人、写真なら全然平気な人、昆虫図鑑でゴキブリが出てくるページだけホチキスで留めたいほど苦手な人、イラストですら嫌な人、冒頭のように文字だけでも鳥肌が立つ人などなど……。
本記事では、そんなゴキブリを集めたハンディ図鑑、ゴキブリハンドブックができるまでの紆余曲折を紹介します。

ゴキブリの写真がたくさん出てくるので、苦手な人はスクロールせず、別の記事をお楽しみください。



当初から、ゴキブリハンドブックの表紙は工夫の必要があることは挙げられていました。
ワンクッションなしで表紙でゴキブリの写真を使うと、新刊やフェア、話題書として面陳(背表紙ではなく、表紙を向けて陳列すること)しづらくなってしまうかもしれないからです。
大きな書店なら、そもそも昆虫を扱った棚に配置するなど、比較的すみ分けができるのですが、小さな書店だと「アウトドア」の棚に入れざるを得ないことも!
何の心構えもないまま、苦手な人が遭遇してしまう悲しい事故は避けねばなりません。それはamazonなどの通販サイトでも同じことです。

そういう訳で、ゴキブリを愛する人や興味のある人にこの本を届けつつ、苦手な人はスルーできる方法を模索する必要がありました。
営業部や著者の柳澤さんと話し合いを重ね、ブンイチのハンドブックシリーズでは初の、紙のカバーをつける結論に至りました。どんなカバーがよいか、あーでもない、こーでもないと試行錯誤の日々が始まります。
ここからは担当編集が迷走したボツ表紙案やカバー案をボツ理由と一緒に晒していきます。

ボツ案コレクション〜表紙編〜

・触角

 ぬっ……

カバーをかけない足掻きの案が没表紙シリーズです。
「ゴキブリを姿を見せずにイメージだけしてもらうには……」
そう考えると、印象的なパーツだけを見せるのも手法の一つだと考えました。
ニュウ……と伸びる触角はゴキブリ「らしさ」として申し分ないのでは!

ボツ理由
「いい感じの触覚の形の写真がない」
「触角が出ているだけの方がよけいリアルで嫌

・正面顔はカワイイ!

大きいお目目がかわいい

ゴキブリの正面顔はカワイイ。これは編集中に写真を見ていて思ったことです。
眼が黒くて大きくて、多くの人が苦手な黒光りする背中やトゲトゲした足がなければ、カワイイ枠としてもいける……!!
営業部の一部でも「イメージ違いますね!」と好感触。

ボツ理由
「ゴキブリなのかわからない」
「ゴキブリに限らず、昆虫の裏側は苦手な人が多い」

なお、もっとトリミングした顔だけの更にカワイイバージョンが店頭ポップとして採用されました。

ぴょこ

ボツ案コレクション〜カバー編〜

・ブラックカバー

よーく見ると

格好いい黒いカバーの案もありました。
特殊加工を施し、一見ただの黒い本が、光にかざすとゴキブリのラインに反射して浮かぶ……。
すごく格好良さそう!と盛り上がったのですが、あえなくボツ。

ボツ理由
「何の本かわかりづらく、地味すぎて目立たない。視覚に障害がある人への配慮も必要」
「ゴキブリのタイトルで黒光りするのは嫌だと書店員の意見があった」

・冷蔵庫

形はぴったり

真っ白なカバーに紹介文を配置する、シンプルな案も検討しました。カバーではゴキブリを連想させるものを限界まで排除しよう、という案です。
でも、もうちょっと何か遊び心がほしい……。何か……ムム。この形……閃いた!
冷蔵庫にそっくり!冷蔵庫のカバーをめくるとその下から出てくるゴキブリの写真……。家に侵入するゴキブリのイメージにぴったりなのでは!?

ボツ理由
「文芸書のようで図鑑らしさがない」
家の冷蔵庫でそんなことがあったらと思うと……」

・ヒメマルゴキブリ

くるん

ヒメマルゴキブリの防御姿勢のかわいさは抜群!
これならゴキブリが苦手な人でもきっと抵抗は少ないはず!

ボツ理由
「ダンゴムシ図鑑だと思われそう」

完成!ゴキブリハンドブック表紙&カバー

現在まだ追い込み
編集中のためイメージ図

そんな紆余曲折を乗り越えて完成したのが、このカバーと表紙です。
カバーは刺激少なめで、黄色の色上質紙でちょっと警告色っぽくしつつも上品に仕上げました。これならどこの書店でも問題なく並べてもらえるし、新刊が詰まったダンボールを開けた書店員さんを飛び上がらせることもないはずです。
ちなみに、営業部からこのカバーは「脱皮カバー」と呼ばれています。

カバーをめくった肝心の中身は……

図鑑パート
実物大ゴキブリ一覧も掲載

日本のゴキブリ全64種(2022年7月現在)を取り扱っており、高精細な写真で雌雄、幼虫、卵鞘を掲載しています。採取の方法や飼育の方法まで網羅した、ゴキブリで初のハンディ図鑑になりました。海外のゴキブリも少し紹介していますが、イラストはゲッチョ先生(盛口満さん)が担当してくださっています!

さぁ、カバーをめくって、ゴキブリの世界を覗いてみませんか?


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