本当の敵はパリにいる。フランスの大物政治家の誰が失脚するのか?
アフガニスタンに逃げた暗殺者の告白が公になれば、フランスの大物政治家が失脚するのは確実である。軍事雑誌の編集部に戻った主人公は、辣腕の編集長から急ぎ原稿を仕上げるように求められる。
書き上げた原稿を一読して、編集長は事の重大さに思わずうなった。「これは爆弾だ・・・」と。
しかし、原稿を印刷する印刷所が、突然の火事に見舞われてしまう。さらに、オリジナル原稿のコピーを1部残していた編集部に、印刷所からの急な使いと称する者が現れ、その控えの原稿もどこかへと持ち去られてしまう。(当時は紙に書く原稿ばかりです)今のようにテキストデータになっていれば、クラウドに保存したり、しかるべき頼れる友人にメールしたりできるのだけれども。
そして、とある女性のもとに身を隠した主人公にも、口封じの魔手がだんだんと迫って来る・・・。
というストーリーなのでありました。
これを書き上げたのは、親戚の持っていた湖畔の別荘で、1か月ほどこもって書き上げた。書いては休み、書いては眠り、書いては食べたり飲んだりする、というとても贅沢な執筆環境だったと回想する。
それを知人の奥様がワープロに起こし、5インチのフロッピーディスクに入れてくれた。そのプリントアウトがたった一部残っていたのである。
それから30年後、あらためて電子出版で、この小説を世に出そうと考え、プリントアウトから読み出してデータ化した。
そして改めて読みなおして、一部修正を加えたり、推敲したりしながら、なんとか出版にこぎつけた。
表紙のデザインは、暗殺者が使ったドイツ製のG3の銃口に、フランス社会党を象徴する赤い薔薇を差したデザインとした。ベトナム戦争に抗議したフラワーチルドレンみたいなデザインである。
今も、世界中ではこんな世界が展開している。ウクライナで、スーダンで。それを考えると、こんな昔の小説でも多少は今を見通す役に立つのかもしれない、と思っている。