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庭作りとレンガ菜園と

袋麺の『札幌味噌』が一個残っていた。味噌といえば札幌。札幌と言えば北海道。北海道と言えば牧場。牧場と言えばバター。てなわけで、バターを投入。中々の味になる。最近、謙也はニラに凝っているので、冷蔵庫にあったニラを数本を抜いてラーメンに入れた。

ニラがお気に入りなったので、ホームセンターでニラの種を見つけた。感動の出会いだった。定石通り苗床に入れて育てながら、移植すると書いてある。謙也は煉瓦の隙間で育てたい。大根で成功している。ネットでは、キャベツやその他の野菜も、煉瓦畑で、育てている。しかしながら、ニラが好きなので、意外に踏ん切りがつかないものだ。「失敗したって、買えばいいじゃん」と優子が言う。「最後の一袋でもうないかも」と謙也が悲しそうな顔で言う。何を躊躇っているのか、自分でも分からなくなってきた。「明日、決断するよ」と言い切った。

他のタネは全部蒔いた。「ジニアも苗床を作って蒔いたわよ」と直蒔きがほとんどだが買って来た種は、ニラを残して全部蒔いた。ジニアの他にミニひまわり、百日草、野菜ではゴーヤ、ミツバそしてニラ。苗では、八丈島で栽培が盛んな「アシタバ(明日葉)」を買った。

アシタバは、「今日、葉を摘んでも明日には芽が出る」と形容されるほど生命力が旺盛であることに由来する。別名でアシタグサ(明日草)ともよばれ、野菜としてアシタバが常食される。八丈島は産地として有名なことからハチジョウソウ(八丈草)の名でも呼ばれている野菜だ。

謙也が明日葉の存在を知ったのは、原宿にある八丈島郷土料理の居酒屋がある。謙也は、友達の細川力や佐田絹江とよく通った店だ。店名は「はっとり」。女将は、無愛想だが、これがむしろ心地良い。「何にする」と聞く。「アシタバの天ぷら」「アオリイカのゲソ唐」「刺身盛り合わせ」「クサヤ」日本酒を冷やで、一気に注文する。この店では、テンポよくやるのも、暗黙のルールなのかもしれない。


絹江は、ファッション関連のPR会社を経営している賢い美人の女性だ。細川は、大手スーパーなどの売り上げ金の管理をしている。詳しくは、聞いても解らないので、謙也はそれ以上聞かないことにしている。馬が合うというか相性がいいのだろうか、気を使わない関係なのかもしれない。そんな三人だが、たまに違う人も呼んで会食する。

気分良く終わるのも飲み会のルールだ。「最近、ファッション誌がファッションページを減らして、芸能関連やダイエット、占いなどに力を入れすぎじゃない」と謙也が絹江に聞いた。「そうなのよ、CMが入る順に記事化しているみたいだよね」と返ってきた。

細川は、あまりファッションと関係ないが、飲み屋の情報に詳しい。焼酎の「金宮」を知ったのも細川からだった。中目黒に金宮専門の飲み屋がある。そこで、ホッピーをたらふく飲んだ。パッケージデザインが他の焼酎と比べて女子好みで可愛い。それからは謙也は、焼酎を買うときは、「金宮」に決めている。

ニラの種は、結局レンガを敷き詰めて、たね袋に粒が結構あったので蒔いた。芽が出るか出ないかは解らないが、最初の案で結構した。レンガを敷き詰めた場所には、ドクダミが生えていた。土を掘り返すとネットワークのように根っこが繋がっている。地中帝国のように、白い根っこが無数につながり、どこから生えているのかも解らない状態だった。「これを壊滅させるには、除草剤のような毒薬しかない。ドクダミだけに毒を毒で制すか」と駄洒落の独り言を言ってしまった。

それでも、不自由な体で一生懸命作業して、レンガ畑が完成した。充足感があった謙也である。身体中から汗が吹き出している。「お風呂沸いているよ」と優子が呼びに来た。「後10分待って」と言った先から、遅々として進まない作業。結果30分以上経って完成した。仕事や命令されたことは、すぐ終わらせるのに、「おもろいことはやめられない。」と謙也は独り言をまた言った。


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