70モモと六地蔵

わが家の猫生活【その二十三/モモちゃん、再び行方不明になる】

猫が2匹に増えた生活に慣れてきた実家から、ある日モモちゃんが帰ってこないと連絡がきた。

どんなことがあっても、ごはんだけは食べに帰ってくるあいつが!?

思い返せばモモちゃんが行方不明になったのは、これだけ。
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どこを探しても見つからないという。

またどこかで死にかけているのではないかと母は心配になって、近所のおばちゃんたちに「うちのモモちゃん、見かけなかった?」とふれてまわったらしい。田舎なので、あっという間にその話は広がっていく。

「いなくなった直前のことは覚えてないの?」と姉に尋ねると、
「朝のパトロールからものすごい勢いで帰ってきて、ガオガオ鳴きまくってた。ごはんもものすごい勢いでワシャワシャ食べて。休む暇なく出て行ったっきり」と言う。

猫は飼い主の見えないところで死ぬために、死に際はいなくなるとよく言うけれど、「ピンピンしてたよ。だってものすごいもん、最近食欲が!」と姉。
「もしや、また発情期なんじゃ? ウオウオ雄叫び気味に鳴いてなかった?」
「いや、でも時期的に恋の季節じゃないじゃんね」

そんな会話をした覚えがある。

結局、モモちゃんは外泊したまま翌日の朝を迎えた。
その日の昼、母のおふれが功を奏して、カドヤのおばちゃんから有力情報をゲット。おばちゃんは、前日ほぼ一日中、道向かいのどこかから猫の鳴き声が聞こえていたという。モモちゃんがいなくなったと聞いて、「あの鳴き声、モモちゃんだったわー、たぶん」と電話してきたのだ。

近所の猫の声を聞き分けられる田舎のおばちゃんたち、すごい(笑)。

早速母とおばちゃんは、猫の鳴き声がしていたという道向かいへ。そこは田んぼとの間に細い側溝があり、その横に川があった。川に落ちたとか? 川に向かって母が「モモちゃーん!」と呼んでみた。

ガオーン。

ん? どこか違うところから、鳴き声が聞こえた。

もう一度「モモちゃーん!」と呼ぶ。

すると、ガオーン!!と、こもった鳴き声がもう一度聞こえた。
外じゃないな、どこだ? とグルグル見まわしていたら、草むらの中の側溝、途中まで蓋のある細い側溝の中に、そろそろ5kgになろうかというモモちゃんがすっぽりはまって、何やら涙目でガオガオと鳴いて訴えていたという。

「どうしたの? モモちゃん! あんた、昨日からずっとここにいたの?」
と母が覗き込むと、その向こうに小さな子猫の体が見えた。

モモちゃんは、一生懸命子猫の体を舐めていたそうだ。

ふたりは、モモちゃんをまず外に出そうとした。しかしガオガオと鳴き、子猫から離れようとしない。

「わかった、わかったから、モモちゃん。子猫を先に出そう」


子猫はもう手遅れのようだった。外傷が少しあったため、母とおばちゃんは、子猫は車にはねられて側溝に落ちたのではないか、それをたまたま縄張りパトロール中のモモちゃんが見ていたか、子猫を偶然見つけたのではないか、という考えに至った。

昼間鳴き続け、想像だけれどひと晩ここに居たのは、この子猫をどうにか助けようとしていたのだろうか?
気づいてあげられなくて、ごめんな。

人間ふたりは、無力さを感じながらそれぞれの家に帰った。一方はガオガオとまだ鳴く雄猫を抱きかかえ、もう一方は小さな亡骸を抱きかかえ。

子猫はカドヤのおばちゃんが、代々飼ってきた猫たちと同じところに埋葬した。(つづく)

41猫組合


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