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後半はノンストップ!怒涛の種明かし/日曜劇場『アンチヒーロー』最終回

ついに明墨と伊達原が法廷で激突した。

最終回は25分拡大版だったけれど、え、もう終わり!?と感じるほど、熱量を帯びたまま、あっという間だった。

(以下、最終回の内容を含みますので視聴後にお読みください)

志水の無実を証明するもっとも有力な証拠を消されてしまった今、明墨はイチかバチかの勝負に出る。それが、白木を使っての自身の逮捕劇。制作陣による話で、白木にはキャバクラで働いていたという裏設定があると後で知り、なるほど、ならばあの伊達原を目の前にしても演技できる肝が据わってそうだ。しかし、あんなに執念深く用意周到な伊達原が、どうして白木にコロッと騙されたのだろう。それだけ、緋山のジャンパーが物的証拠として確実に明墨を追い込めるものだと考えたのか。

しかし視聴者側からは、伊達原のもくろみが最初から崩れていたことがうかがえる。だって明墨の裁判は、伊達原の思い通りに進んでいるように見えて、実は12年前の糸井一家殺人事件をもう一度検証する公の場となっていたからだ。何が出てきても言い逃れできない場所で、明墨は伊達原を挑発する。

途中、ハラハラする場面もあったけど、前半CMが多くてちょっとイラッとしたけど、「ドラマの続き?」ってほどナイスタイミングで船越さんが刑事役で出てきて、しかもそれが「にしたんクリニック」のCMでちょっと笑ったりもしたけど、信じていたよ、緑川!(何のこっちゃ)

きっと緑川は味方になると、いや、なってほしいという望み通りの展開。だけど、まさか最初から桃瀬の遺志を継いで伊達原に近づき、その下で働いていたなんて思いつきもしなかった。桃瀬が明墨を呼び出して冤罪について語ったあの場に、緑川もいたのだ。3人いたことにまったく気づかなかった。友を信じられずに後悔した緑川の闘い。彼女のこれまでを思うと、胸が締めつけられる。その強さを称えた瀬古判事も、弱いわけじゃない。信用を失い、叩かれてもおかしくない状況に置かれている中で、弱い人間があんなに頭を下げて表に出るなんてことはしない。彼女は闘い方を間違っただけだ。

鑑定書の一件で、強気だった伊達原が一気に崩れ落ちた。攻勢は逆転する。怒濤の展開と種明かし。でも伊達原を泳がせるために用意した鑑定書、偽造なんでしょ?(苦笑) そこが明墨弁護士事務所らしいと言えば、らしいところ。志水親子が塀の外で抱き合うシーンでは、やつれた志水のブカブカのスーツがこれまでの年月を物語っていた。登場はいつもわずかなのに、緒形直人さんの志水の存在感は凄まじかった。そして倉田と紫ノ宮の親子も、塀の中と外だけど本来の関係を取り戻した。緋山も、自分の罪とようやく向き合うことになった。

それにしても、いつも青山さんは偽造がうまい。終盤、そんな彼の妻役にバッジをつけた山本未來さんが出てきてびっくり。えーー、今? 今出ちゃうの? 続編があったら、絶対登場するパターンではないか。ラストでは、赤峰がアンチヒーローに昇格(違う!)したし、数年後を期待しよう。

このドラマは、4人の脚本家による共同脚本。担当回があってそれぞれが書いているのかと思っていたが、クレジットに名前が4人一緒に出ていることに最近気づいた。

そして下の記事で、なるほどそういうことなのかと。あ、『VIVANT』も共同脚本だったのか。

他局だけど、吉野千明(キョンキョン)がホワイトボードにアイデアを書きながら、みんなと会議するあの場面を思い出した。

共同脚本だと、豊富なアイデアで緻密なストーリーを練り上げることができる。書くことよりも、何度も打ち合わせてすり合わせることに時間を割く。全員が同じ方向を向いているのが功を奏するのだろう。世界観にバラつきがなく、統一感がある。脚本家の個性を惜しむことなく楽しめるドラマもいいけど、このドラマで共同脚本の良さを実感した。とにもかくにも、おもしろかった。こうしたつくり方は、今後もっと増えていく気がする。


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