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分福楽雲
2024年2月29日 22:55
目的の家のドアの前で、エメとディアは並んでいた。「ほんとに行くのか?」「もちろん。ついでに、今夜はここで泊まらせてもらおうぜ」 顔が引きつるエメをよそに、ディアは後ろ脚で立ち、前足で玄関ドアをトントンカリカリし始めた。「トゥインクル〜、オレだぁ〜。ディアだぁ〜。入れてくれ〜」サッ… 玄関の右隣にある部屋の窓辺から光が漏れてきている。その枠の中、下から跳んで現れた1匹の猫が、ディア
2023年12月3日 21:14
ディアは、ベンチの下に転がったままのパンを咥えて、ベンチの上に戻った。「来いよ、エメ」 運んでもらったパンのところに、エメはジャンプした。「痛っ」衝撃で傷口が痛んだ。「後で手当してもらおうな」 傷は痛むし、パンは食べかけだが、エメにはこっちの方が気になる。前脚をディアの背中に伸ばし、翼の下に差し込むと、くい、くいと押し上げて、上下した。「お前、飛べるのか?」「いや、飛べない。残念
2023年11月2日 20:54
彼は痛む足で走り、誰もいない公園にたどり着いた。パンを咥えたままで。「ンンッ…」 開いた扉に驚いて跳んだ時に、誤って、自分で自分の足を踏み、爪で引っ掻いてしまっていたのだ。少し落ち着いてきた今、血が流れていることに、ようやく気が付いた。モフモフの言う通り、彼はケガをしていたのだった。 あいつは一体何だったんだろうと思いつつ、ベンチの下へ潜り込む。パンを下ろして、傷口を舐めた。すると。「
2024年2月21日 11:15
それは少し前にあったお話。夜の街、薄暗い路地に、音も無く歩く影がひとつ。カサカサッ 彼はその物音を聞いて、ピクリと足を止めた。 美味しそうな香りが漂うこの一帯の壁際には、私たちの目にはわからない、小さな獣道があるようだ。「……」 キョロキョロクンクンと辺りを確認しながら、用心深く早歩きする尻尾の長いその子を、エメラルド色に煌めく瞳が捉えた。 スッスッと静かに近づいていく。その暗