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映画「あのこは貴族」感想(ネタバレ)

「花束みたいな恋をした」「あの頃。」その他諸々などの感想を漁っていると「今年の邦画は豊作だな」などというフレーズとともに浮上してきた作品。「あの頃。」の今泉監督もTwitterで良かったと言っていたので観てきました!

美紀の部屋で過ごす場面

一番良かったところは、華子ちゃんがミキティーの部屋を訪れて、「居心地がいい」「だってこのへやはミキちゃんのもので溢れてるもんね(意訳)」と言ったところ!!!!あれいいよね。正直、ずーと「この映画は私には刺さらないで終わるな」と思ってたけど、普通にこのシーンは良かった。

そもそも華子ちゃんのお家とか洋服って、過剰に派手なものでもなくとっても感じの良い暮らししてるから、あまり気づかなかったけど、「別に華子が気に入って選んでるわけじゃないもんな・・・」と気づかされる瞬間でもある。「自分で選んだもの」てめちゃ価値ある。いいよね。ってポロッとこぼれ出る感じがなんとも言えん伝わるものがあった。センスや予算があるないとかの次元じゃない「いいね」の気持ち。そもそもこの映画、"田舎出身と上層階級の2人の女の子のお話"という前フリがあったので、「二人がギャップを感じるシーンてどんな感じなるのかな」って割と最初から構えてたけど、あまりに自然に訪れたので、「おおっ!」となりました。

その後に続く、二人でアイスキャンディーを食べながら、ミキティーが「生まれ育ちが違うくても、いい日も悪い日もあるし、悪い日はそれを話せる相手がいるといいよね、なかなかおらんけどね(意訳)」的なことをいうまでの全ての雰囲気が素敵よね。思ったより距離保ったままの二人だったけど、なんとなくずっと空気が優しかったよね。

序盤の感じなど

序盤は正直、作り手の怒りみたいなのが随所に感じられて、トゲトゲしているぞ!!と思ってたんですが。「女性の分断」とか「(興信所で)調べた」とかセリフもそうだけど・・・。親からの圧力、地方と都市部の格差、的なモチーフがあまりにも記号的に描かれてて、どちらかというと、私は田舎だけど、ある意味お金に困ることはなくてぬるま湯で世間知らずだったので、努力で上京して東京で過ごすミキティーにも、お家柄がよい生粋の東京人の華子にも投影できなくて、割と居心地が悪くて「このまま映画が終わってしまったらどうしよう・・・」と評判の映画が自分に刺さらなかったらどうしよう!と恐怖に慄いていたんですけど、それも伏線かと思えば良かったと言えよう。大きな事件は起きないけれど、その距離感みたいなものを保ち続けた結果、あの部屋のシーンに優しさが生まれたとでも解釈しておこう!みたいな感じですね。

由緒正しい家の描き方

由緒正しい家生まれじゃないけど、田舎ゆえ体裁気にする文化は普通に経験してきた私的に気になったのは「君のことは調べたよ(興信所で)」的な発言。あまりにストレートすぎる!物語をわかりやすくするための演出かもしれないけど、そーいうのは影でやるものでは?あまりに嫌味を露出するのはお行儀が悪くてよ???と思いました。「綺麗な身の上の人を嫁に迎え入れることができてよかったぞよ!」的なポジティブな言い回ししてそうだ。ただ、普通に相手の素性を調べるのは当たり前の文化っていうのはなんとなくわかる。親世代で「そういうのは時代遅れ」て割とみんな意識して断ち切ろうっていう風潮あったけど、どうしてもじーちゃんばーちゃんにはその価値観があったので、あるある感。祖父が仰々しく一家の中で偉い扱いされる感じもあるある感よね。

座布団までの進み方

上流階級のことはよく知らないので、あの、和室でこぶしで体を支えて、すん、すん、すん、て座布団まで進んでいくお作法が「なんかすごい」となった。ここまでやるんか・・・。

田舎の描き方

ほとんどの田舎の描き方が悪すぎて泣いた・・・。内心「風評被害!」と叫ばずにいられなかったわよ。そら嫌な部分もあるけど、露骨すぎて「ひでぇ!」となった。弟がカジュアルにセフレの話を会話に入れたり、元同級生がホテルに誘うガサツさとか、おとんがたんをかーぺっ!てやるのとか、もちろん部分的にはあるあるやけど、なんかこれ全部揃うことってあるかな??凝縮しすぎ!コトコと煮込みすぎ!!!やでほんまに。いまだに田舎の認識ってそれなん?怒られるで?ってなったわ。最近地元に帰って友達と会うことも少なくなったし、地域によっても違うと思うからなんとも言えんけど。(そう言えば、とりわけ富山は閉鎖的だという話を富山出身の男の子と結婚した友人が言ってたので、なきにしもあらずなんかなぁ。)おかんがご飯食べるときに、中腰なんは「わかる!」てなったけどな。ただ、やっぱおとんが・・「女やのに料理もせんで」「めかしこんでどこいくねん」「タクシーの人も忙しい時期に迷惑やろ」みたいななんかおとん世代てか祖父世代っぽいよな、ってお若干もやったわ。でもまあ、当たらずとも遠からずというか、普通にそーゆーおっちゃんゴロゴロおるやろうから、飛躍してるとも思わんけど。あと、おかんと美術館いかんのはわかる。でも、貴族側も一般庶民がおかんと美術館いかんとかいちいち季節のイベントやらんってことぐらいはわかってんのちゃうのかな?と思ったりする。知らんけど。

恋する場面

最後の方にかけて、高良健吾がパッとしない青年になっていくので忘れかけてたけど、最初の恋する場面よかったな〜〜〜!色々、パッとしない出会いが続いてからの、王子登場!!!みたいな感じでこっちの「好きになるやろ!!」と思い、華子とともにときめいたよ。なんか、スマートでイケメンで、声も低くて良くて、落ち着いてて素敵男子やないの!!となり、楽しい時間だった。その前の男たちの絶妙な感じがなんとも言えん。あのお見合い相手はなぜ他人にカメラを向けてパシャパシャやり始めた?怖い・・・。キョドリ男子が悪いわけじゃなくて、そのカメラの概念何??となったし、姉が紹介してくれた男の「ジャズ好きっていう女子は大体男の影響」ってえ、いきなりDisってくる感じ喧嘩売っとるん??これで遊び慣れとるって言って言い訳?姉大丈夫か?となった。ただ、弱そうな女やなってジャッジした場合だけ上目線になるタイプかもしれないので姉は悪くないかもしれん。これに関しては、内心「女がハマる趣味とか浅い」的な価値観持っている人はたくさんいたとしても、実際口に出していうやつはかなりちょーしのりじゃないか?と思った。だから序盤は結構記号的だなと思った理由の一つかな・・・。

謎の女子二人組

なんか道挟んで向こうの方ではしゃいでる謎の女子二人組が、華子ちゃんに向かって「イエーい!バイバーイ!」って手を振ってくるところが好き(笑)なんか楽しいよね。なんか意味ない感じが救われるよね。華子ちゃんも楽しそうだったしこっちも笑顔なったわ。

女の苦労

「うちのことサーキュレータ扱いかよ」意訳、は笑えた。確かにそーゆーのってようやく言えるようになった感あるよね。世間的に。なんとなくだけど社会人として女性は華やぎとか円滑にするとかなんかそういうのあるっぽいのはわかる気がする。でも女性っていうか若手に求められるもの・・・かな。なんか私はあまり今集団生活とは離れているから、そういうニュアンスではないが、下っ端キャラからぬけだせない自分がいるので、なんか、そういうのもどかしいよね、って思うわ。場の雰囲気よくするのも仕事のうちだっていうポジション、同じコミュニティにいる間は覆すの無理めよね。もう疲れてきたから、ちょっとは自分の主張うまくできるようになりたいもんね。

「独身だからって子ども嫌いって思われるのシャクなので子供に優しくする」はえっ、めちゃオコですやんと思った。私は自分自身が子供っぽすぎるので大人になれって社会でも実家でも劇的に怒られることが多いので私にとっての子供は「子供に戻りたい」という対象が多いので、その圧は感じないし、周囲の環境を見渡しても、独身の女は子供嫌いみたいな価値観で揶揄される感じをあまり見聞きしてないからピンとこなかったがそーゆーのも、言う人を選んだり、経験する人が限られてて実は怒ってる人がいるのかもしれん・・。みょうにそのセリフが浮き上がって見えた。

最後まで高良圭吾が悪者にされないかヒヤヒヤしたけど、そうでもなかった女が被害者だ!という感じに傾くかな?と思いながら見てたけど、そこまで高良健吾がガン詰めされる展開じゃなくて、普通に、高良健吾も大変そうだね、みたいな描かれ方だった。なんか、みんなお互いに恋愛に執着する感じでもなく、進んでいったから余計にそう映ったのかもしれん。誰か一人でも恋愛感情強めの人がいたらこういう展開にならなかったのかも?「なんかモヤモヤする」みたいなのをそれぞれに抱えている、みたいなのに終始してたように思う。

華子の気持ち

この映画って誰の感情も説明されなくてモノローグ的なものがなかったので、察するしかないけど、華子の気持ちを想像するに、最初は割と、「無」って感じで、何がいいとかもよくわからんな・・・なんか楽しくもないけど不幸でもないし。みたいな。「結婚相手は普通でいい」って言ってるのにさ「普通が難しいんよ」「決められたくないよね」みたいな、みんなの意志のある感じについてけない感じ。あの、勝手に服をコロコロされて「うざい!!!」って思う気持ちはあるんよね。わかるわ〜。「入ってくんな!」みたいなね。後、あの胸糞男に「ジャズって男の趣味」って言われた時も「わーやなこと言われたわ〜」って感じ。後、汚い居酒屋のトイレ!あれが結構「生理的に無理だわ!!!!」てなってたのが面白かった。「あ、それはダメなんや!」ってなった。

最後はなんで離婚したんだろ?当たり前のレールにのってたのに、外れよう。レールから。って思ったわけよね。やっぱミキティの言葉の影響強めかな。なんでも話せる友だちが、バイオリンの子で。自分にとって無理なもの好きなものを考えた結果、旦那はあまりにも距離が遠すぎてしんどくなった、、、。なんとなしに野菜育てたいとか。人のためになりたいとか。こう、自分のこと注意して観察してみると自分の中にささやかな欲求があることに気づいた若しくは無かったものが芽生えたけど。それを高良健吾相手にボールをなげてみた。一応。だけどどうしようもなく暖簾に腕押し感やったもんね。そこで、そっちに「もっとアプローチするぞ」じゃなくて、ただただ、離れる選択できるのってすごい客観視できてるよね。自分の気持ちと状況を。華子かっこよすぎか?こーゆーとき、なんやかんやで変化怖いし、同じ環境のまま働きに出るって選択肢もあったはず。昔からの友人たちの世間話をずーっと冷静に受け止めてきたからこそできた決断かもなぁ。そう考えると話が綺麗すぎる!!華子かっこよすぎか!!素敵なお話よね。

華子の好きな部分

華子の好きなところ紅茶を頼むとこ。毎回お上品で素敵よね。「ダージリンを・・」って、「〜にします」とか「〜ください」じゃなくて「〜を・・・・」っていうだけでこんなに品あるんやと思い「かっこよ!」となった。後ミキティーがフォーク落としたときに「さっ」と片手あげるやつ!あれもスマートで「こうすればいいんや!」と学びになった。(あってるよね?)。なんかマナーが必要とか姿勢をよくするとか洋服のみだしたみってクソって思ってる時期長買ったし、今もなおそういうメンタリティを持ち合わせてるけど、確実にそれが含まれる文化が存在するから、なんか、それはそれだよね。ってこういうの見ると思う。美しいから身につけろっていうと乱暴だけど・・・なんかそれが「ある」ってことだな。って思うよ。

俳優さん

門脇麦ちゃんが、本当に由緒正しき家柄の娘さん、みたいになってるのがすごい!!と思った。特に根拠のないイメージでサブカル個性派みたいなのがあったので、配役Whyと思ってたけど普通に。品が良くて控えめで、序盤特に中身がないというか自我がない感じ、でもピュアででも、現実味もあるという感じをとても受けて「すごい」となった。水原希子ちゃんは上昇志向バリバリ女子っていうイメージぴったり!と思ったけどよくよく映画を見てるとそこまでキラキラ女子っていう役柄でもなかったので、「あまりにも造形が洗練されておるんだが」という意識が入ってしまった。ただ、田舎に美人がいないわけではないので、別にそこは問題ではないのかもしれない。そして山中さんは「ロビさん!!!!」(映画あの頃。)となり、革ジャンも来てないし、オナラを食べる人には見えないほどに、程よく普通に由緒ある家に住んでいる婿だった。あと華子の姉は、湯を沸かすほど〜のクライマックスに出てきた重要人物の人かな?(ここにきて謎のネタバレ配慮)など。美紀の友人は、どっかで見たことあるぞ!!!とひたすら頭を働かせたが最後まで思い出せず。というか途中で「あとで調べよ」となった。そして調べたけどピンとくる出演作がなくて、あれ?なんの記憶?となった。


この映画の辛い部分(自分語り)

今回、感想を書いてて思ったけど、あまりにも長文をだらだら書いているくせに、内容が・・・なんというか奥歯にものがはさまったような言いよう。それは、やっぱ、こう、華子も美紀も幸一郎も、あまり身近な存在じゃないというか・・・言葉で説明してくれないとわかんない!!という感じで映画としてやや難易度が高い・・・。余白が多い・・・。焦ったわ・・・。多分、そこまで上流階級の人と付き合いがないからかな。仕事で薄く関わることもあるけど、私があまり理解してないので・・・そこが結構、負い目があるというか「世界が狭い」ことに関するコンプレックスあるよね。もともとはいろんな世界が知りたくて、興味ある人だったのに、違う階層の人と付き合ったり、その人のこと知ろうと思ったら勉強とか相手を思いやる気持ちとか相手の気持ちを想像する力とかが必要と思うんやけど常に「自分自分」だから、それで仕事で注意されてばっかで「勉強しなさい」ってよく言われるけど(PR系の仕事する時、例えばホテルとか価格帯が高いサービスとか、どういう人が利用するんだ?って想像して仕事しなきゃいけない。だから勉強しろってよく言われるんよね。無理だよ!!てよく思ってた。いろいろ方法あるんだろうけど・・・)ずーーーっとサボってきたので・・・。自業自得だわ・・・・。っていう、自分の弱みに近い話題だったので、こう、「刺さらなかったらどうしよう」っていう焦燥感があったね。結局わからない部分も多かった!(ピエン)なんだかんだ、組織で働いてないから、社会進出した女性の辛さとか、状況した田舎者の辛さとかあんまわかんないよね・・・ただ、そう言ってしまうと、自分がボーーーーッと生きてるみたいで恥ずかしいので、何か刺さりたいから探して書いてみたよ。あとやっぱ、カルチャーとか文化とか映画のこと語れないとか(別に語ってないけど)感受性ないと思われたら嫌だもんね!!!!(迷走)そういや!ここまで書いて思い出したけど、犬山紙子さんのSUUMOのコラムで東京の煌めきを固有名詞まみれで綴られてたやつあったんだけど、読み応えあったし、素敵だなぁと思った。あとはよくはてなブックマークで都会と田舎とどっちがいいか論争を文学的に綴ったものを読むのが好きなので、だからこの映画に期待してたんだった!そうそう、具体的に表現していただけると、分かるし、すごい引き込まれるんよね。そう考えると、自分の中には「無い」のかもしれん。。。えっ、なんか辛いね。だけど、これから近い未来か遠い未来か、知らんけども偶然に人との出会いとかで、何か変わるかもしれないし、あまり決めつけないでおこう!(放棄)終わり。

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