首都の品格《⑧裸の王様》

『新たな世界を明るみに出すのは罪ある傲慢ではなく、つねに目覚めている<戯れの本能>である。』
                                                                                    ドゥルーズ『ニーチェと哲学』

 かつて、作家の堺屋太一氏が雑誌『中央公論』の中で「政治家のベルサイユ化」を指摘したことがある。これは、二世、三世の世襲議員を18世紀フランスのルイ16世治世の時代にベルサイユ宮殿に閉じこもっていた貴族になぞらえたのである。「その多くは、東京生まれ東京育ち東京暮らしで、選挙区に行くのは選挙運動の時だけ。だから地方のことがわからない」――その結果が東京一極集中と地方軽視というのが、堺屋太一氏の主張である。一方、政治家と同様に、官僚もまた、東京(あるいはその近郊)に住んでいるため、東京のことしか見えていない。

雑感 2020年4月12日(日)
 安倍晋三首相(東京生まれ東京育ち東京暮らしの山口4区選出の国会議員)がツイッターを更新し、自宅ソファで愛犬のミニチュアダックスフントのロイを抱く姿や、カップ片手にくつろぐ様子を公開した。「ステイホーム」を訴えるのが狙いとみられるが、新型コロナウイルスの蔓延で国民が疲弊しているのをよそに優雅にくつろいでみせた――「政治家のベルサイユ化」は想像以上に深刻である。

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