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勝つことと出場機会確保は両立するのかあるいはやりがいとは何か

背景

我がチームは昨年度は優勝を目標として掲げ、今年度より新体制となって、今秋より全勝優勝をすることを目標として掲げることとなった。一方で草野球において、そもそも試合をするためにチームの人員数を確保するということも大事な要素であることを鑑みると、勝利に全振りをすることだけで目標を成し遂げられるわけでもない。それを踏まえて、昨年度まで代表陣を務めていて、チームの「人」を大事にするという前提に立って運営を行ってきたつもりである。だがそれゆえに勝つことと出場機会を確保することの難しさに直面し、結果としてそれは成し遂げられなかったと感じている。
今年度の新代表陣は、今春は勝利と出場機会を確保する2刀流を目指し、結果として5位に終わった振り返りを踏まえて、秋には勝利に全振りする、と考えている。だが、それでチームの「人」はついていくるのか、単純に実力だけを考慮することが目標を達成することに繋がるのか、これまでの経験を踏まえても答えられない問いは多い。
これまで様々な組織に携わった経験や、昨年度までの代表陣としての経験を踏まえて、標題にある問いについて考えたことを記す。

前提となる考え方

まず前提として、草野球という大人の趣味の世界において、日曜日の3~4時間という少なくない貴重な時間を割いてくることを踏まえて、「試合に出場する→やりがいを持てる」という関係にあることを定義しておく。
チームに貢献する方法はいろいろあり、私自身も学生時代にチームへの貢献の仕方を自分なりに捉えなおし、出場せずともモチベーションを維持することは行ってきた。だが、控えもレギュラーも経験した経験上間違いなく言えることは、自身が選手である場合は、出場できること以上に出場せずにやりがいを得ることはない、と感じている。ただ、単に試合に出場することができれば良いかというとそういうわけでもない。試合に負け続けてしまうこともモチベーション低下につながるし、DHで打席機会だけ与えられればやりがいを持てるわけでもない。

勝つことと出場機会確保は両立するのか

結論として、ある1試合を切り取った場合、勝つことと出場機会確保は両立しないと考えている。年齢も経験も実力も幅が広いチームであればなおさらである。仮にリーグ戦に挑んでいる我々のようなチームの場合、リーグ戦1戦1戦においての両立は不可能であると考えている。
では今回の当チームのように、春は出場機会確保、秋は全勝優勝とした場合はどうだろうか。私の考えとしてはこちらも両立はしないと考えている。人の脳は貢献感やステータスの実感(自身が他者よりも優位と感じる状況)、公平感に報酬を感じる仕組みとなっているが、それを踏まえると、春は勝てないことにステータスの実感が損なわれ、秋は著しく貢献感や公平感が損なわれる。

やりがいとは何か

上記にも書いたが、人の脳が報酬を感じる仕組みからやりがいについて考察をしてみた。
貢献感
これはチームの活動に貢献している実感であると考える。具体的に言うと、チームの目標やコンセプトを実現することに自身が寄与することができたという実感である。目標が優勝だとすれば、勝利に貢献することができたもしくはそれを他者から認められたことで感じることができる。コンセプトが走塁で相手を崩すことだとすれば、自身の出塁から走塁によって得点を得られたら実感できるだろう。
公平感
これは代表なりチームから自身が他者と同等に重要な存在として扱われていることであると考える。自身だけ出場機会がもらえないだとか、意図や説明も不十分な状態で打順が低いだとか希望ポジションを守らせてもらえない、といったことで生じる。
ステータス
これは自身が他者よりも優位に立てているという実感であり、チーム内で言えばレギュラー争いにあるなかで先発出場機会を獲得できたことであったり、相手チームに勝利することで得られると考えている。チームが勝てなければステータスに対する報酬は当然得られないし、先発出場機会を得られなけれれば当然得られない。
この貢献感・公平感・ステータスを維持及び向上するような働きかけをしていくことが、チームメンバーのやりがいを醸成つながることになると考えている。

やりがいを醸成するためにどうしたら良いか

いくつか方法があるなかで、メンバー自身の実感の仕方・運営のやり方という2観点において考えてみる。
メンバー自身の実感の仕方
こちらに関しては、ステータスにフォーカスを置いてみる。
脳科学的に最近言われていることだが、他者との比較ではなく、自身との比較によって報酬を得ることに主眼を置くことである。あるメンバーよりも自身の方が実力が上である、あるメンバーよりも自身の方が打撃成績が良い、あるチームに対して勝つことで自身の方が上である、ということで報酬を得ることが一般的かもしれない。(私自身はそうだった)。そうではなく、昨年の自分よりも成長している、先週の自分よりも球速が上がっている、という自分自身との競争に主眼を置き、自分の成長によって報酬を得るのである。これまでの経験に基づいて形成されている価値観によって優位な情報認識の仕方がある程度決まっているので、このように捉え方を変換することは難しい。私自身も昨年度のシーズン終了から半年以上かけて、自分の成長に主眼を置く捉え方に、ようやく移り変わることができている。ただこれによって、試合の勝ち負けであったり、試合時の成績に一喜一憂することは低減された実感がある。
運営の仕方
公平感という観点を考えると、出場機会を確保するために、リーグ戦とは別の練習試合の設定もしくは別公式戦への参画だとか、先述した春と秋での位置づけの転換(春→出場機会を確保、秋→勝利)という方法が考えられる。一方で、チーム全体としての成果を考えた場合、リーグ戦での優勝を目標として掲げているのであれば、その成果に貢献する人間は一部になってしまう。それでは全員の貢献感は維持・向上できない。
仮にリーグ戦への優勝を目標としているのだとすれば、リーグ戦への優勝に貢献感を全メンバーが持てることが、やりがいの醸成につながるであろう。それを醸成するためにはどうするか、具体的に述べる。
①戦力的な観点
・まずチームの目標に到達するための道筋であるコンセプトを明確に定義する。
・そしてそのコンセプトに基づいて個々の選手に期待したいこと、伸ばしてもらいたいことを期待値として伝える。
・期待値に沿った活躍が見られればその貢献をたたえ、期待値に到達しないパフォーマンス状況なのであれば、パフォーマンスが向上するように支援する(これを繰り返す)
②リーグ戦への臨み方の観点
まず、当チームは全人員としては20人というそこそこ多い人数であること、参加率もそこそこ高いことを前提とする。
・リーグ戦へ参加することで勝ち点を得られることも考慮し、基本的に全日程参画するよう調整する→勝ち点1を得ることをまずメイン目標とし、さらにチームとしてのテーマを設定したり個々の期待値に対してのパフォーマンスを磨く場とと定義する
・一方で、必ず勝ちにいく試合も設定し(相手によって決めるのか、他チームの勝ち点状況を見て中盤からそうするのか、決勝トーナメントなのかなど選択肢はある)、その試合は実力的にベストメンバーとなるように調整する→勝つことを目標とし、さらにチームとしての理想の戦い方を体現する場として定義する

おわりに

ここに書いてあることは、前代表陣での振り返りで出た内容であったり、メンバーの方々から頂いた意見であったりを参考に書かせて頂いている。つまり、これを実現するための考え方自体はすでにチーム内に存在している。また、今回上げた方法以外にも効果的な方法があるかもしれない。
一方で、これを実現するために考えなければならないことはたくさんあるし、とても代表陣だけで取り組めるようなものでもないと感じている。
だが、私がこのチームに携わり始めてこのチームが良いなと思った理由は「年齢・実力・経験に関係なく、向上心をもって成長していく」という要素を強く感じたためである。動き始めたらチームの方々はきっと協力してくれるはずである。そういった要素を加速させるトリガーを引くことも代表陣としての醍醐味であると考えている。こういった考え方をもし良いと思ってもらえるなら、ぜひ参考にして運営に取り組んでもらいたい。

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