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古代戦士ハニワット

『古代戦士ハニワット』という漫画がある。
作者は『鈴木先生』が代表作の武富健治である。

埴輪?そして、表紙を見るとヒーローものである。なんだこりゃって感じである。
『鈴木先生』と言えば、一冊読むのに『デスノート』の倍近く時間と思考を必要とされる漫画である。その作者の新作が埴輪でヒーロー?

武富健治は上田秋成の『雨月物語』も漫画化している。そちらの『青頭巾』の和尚の怖さはとんでもないものがあったが、いわば文学畑に親しい漫画を描く人である。

その人の漫画が埴輪でヒーローとは……、と、軽い気持ちで読んでみると、これは面白い……。
半端ない面白さ!である。

物語は長野から始まる。突如顕れた目的不明の土偶的なものが、ゆっくりと街を闊歩していく。通行人はバカにしている感じで写メなど撮るが、幾人かの関係者は表情を引きつらせ、『蚩尤』(しゆう)だ、と呟く。
この土偶は、ただ前進するだけだが、途中で姿形を変えたり、敵意を感じたり攻撃を受けると、戦闘体型になって、攻撃してきた人間を殺しまくる。

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作中の雰囲気が、『GANTZ』の肌触りに近いと思う。とにかく残虐に殺しまくり、それが終わると前進を始める。また、急に変形して、光線を放つ。そして起こる大惨事。
そこにやってきたのが巫女たちと、仮具土(カグツチ)と呼ばれる術者である。巫女たちの祈りを受けて、仮具土の仁はハニワットになる(正確には魂を移し操作する)。

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そこからはバトル、バトル、なわけだが、この土偶ことドグーンがめちゃくちゃ強い。強すぎて、勝てる気がしない。
そして、このハニワットたちは、古代から連綿と続く寺社を中心とした組織で、多くの巫女や仮具土、そして真具土たちは闘いに備えて準備してきたのだ。無論、お上もそれに関わっている。

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一般人、寺社連中、自衛隊など、様々な視点でこのドグーンの進行が語られる。『シン・ゴジラ』を想像してほしい。あのような空気感である。

私は『ハニワット』をなめていた。けれども、『ハニワット』は武富健治先生が学生時代から温めていた、まさに金玉(きんたまではない)とも言える企画だったのである。

設定は奥深く、そして謎めいている。
土偶、埴輪、巫女、真具土、仮具土、御霊、神剣など、日本の古来からの物語がこのようなヒーロー譚になるとは…。

既刊は6巻、もうすぐ7巻が発売される。

とりあえずステイホームしている人は、この作品も読む候補に入れてほしいと思い、この稿を草した。

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