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こいびとになってくださいますか吽(うん)

という句を識ったのは、漫画『あかぼし俳句帖』を読んだからである。大西泰世さんの川柳である。

『あかぼし俳句帖』は素晴らしい漫画なので、創作者の皆様方にはもはや購入は義務と言えると思いますので、買って読んでみてください。

然し、川柳はどこか安っぽく思われている気がしてならない。いや、私がそのように思っているのかもしれない。
どうしても、藝術に関して、表現方法に関しては、優劣を付けたがるのが性である。良くないことだ。
例えば、絵画よりも彫刻の方が難しいという。彫刻は空間を把握する力とかも必要になるようで、立体造形は二次元よりも遥かにものの構造などの知識が必要になるようだ。
然し、だからと言って、絵画が彫刻より上かと言われると、そんなこともないだろう。
芸術表現は山とある。絵画、彫刻、音楽、歌、ミュージカル、歌舞伎、能、華道、茶道、香道、写真、染め物、バレエ、ダンス、HIPHOP、小説、短歌、俳句、川柳、詩、切絵、書道、建築、料理、映画、演劇、グラン・ギニョル、人形、ゲーム、グラフィックデザイン、コピーライティング、評論、エッセイ、ファッションデザイン、陶芸、汎ゆるスポーツエトセトラ……。
その、山と存在する表現の中で、自分が一番好きな、自分の表現を一番抽出できるものを見つけるのが、まずは肝要ではあるが、川柳は私には安いものとしか思えていなかった。ひどく短絡的で愚かである。俳句にも有季定型などの基本的なものからアヴァンギャルドなものまで様々にあるが、川柳はただ五七五のダジャレめいた世界だとばかり考えていたが、然し、美しい言葉は、何も見事に構築されたものばかりではない、いや、或いは見事に構築されたものよりも遥かに巧みに仕立て上げられた楼閣であることに、私が気付けていないだけかもしれない。

然し、美しいもの、素晴らしいものには、表現の垣根を超えて、何か一種の共通項があるように思われる。それが何かを名言することは、今はまだ出来ないのだが、ただ、そういうものは見た時に、心を一瞬でそれ一色に染め抜いてしまうものだ。そうして、自分の美意識を、自分自身に色を塗っていく。絵の具のようなものである。様々な表現が、私の好きな色になってくれていて、私の人生は大変に素晴らしいものだと、改めて思わせてくれる。そういう彩りを人に与えることが、やはり藝術の喜びであるのだろうか。

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