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恋愛のない世界


を描いた漫画が『ルポルタージュ』である。

私はこの漫画がとても好きなので、ここで紹介させて頂く。

売野機子先生の作品である。

今作は全3巻刊行されて、その後、リメイクという形で再び3冊刊行された。
リメイクではあるが、オリジナルとは視点も変わっていて、後半は話の展開が異なってくる。

舞台は2034年の日本である。
私はこの漫画はジャケ買いをしたのだが(私は漫画を買うときは
①ジャケ買い 
②巻数が少なそうなもの 
③これから売れそうなもの
 
を選ぶ)、それは近未来の日本が舞台のようで、絵のタッチも好きで、
かつ、『ブレードランナー』感を装丁から感じたのだが、実際に読んでみると、一切ブレラン感はなく、近未来のガジェットもない。ここは、2034年という名の、現代の日本である。

作中の日本では、もはや恋愛して結婚する、というのは著しく古い価値観であり、今や、マッチングシステムからの結婚が主流となっている。
そして、そのことを作中では『飛ばし』と言っていて、恋愛は必要のない過程として、スキップされる存在になっている。

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このような世界で、主人公の聖(ひじり)は恋をする。
そして、彼女の職業は記者なのだが、非恋愛コミューンで起きた無差別殺傷テロ事件の、被害者のルポルタージュ記事を書いていて、被害者達の話を聞くうちに……という話である。

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今作は、恋愛が必要ではない、という価値観に覆われた世界で、恋愛に対しての問いかけをするのに加えて、様々なセクシャリティに関しての話にも移っていく。
ヘテロセクシャル、ホモセクシャル、アセクシュアル、パンセクシュアルなど、様々な性向に人々が登場する。

合理的に、無駄を省いていくと、恋愛までもが必要ではなくなる。
然し、この漫画でも、そのような価値観が広がっているだけで、誰もが恋をしているわけである。このような、恋愛を飛ばす世界など、数十年前の日本や世界では当たり前だった。
然し、それは結婚というものをゴールと考えた場合で、幼い頃から、人は誰かに恋をして、そうして、好きでもない人と結婚しても、愛が始まる時があるだろう。
無論、それが悲劇に通じることもあるだろう。然し、いずれにせよ、感情が引き裂かれるのは、人間が情けに触れたときなのだ。

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人間は、誰かに恋をするように出来ている。それは人であるかもしれないし、物であるかもしれない。『飛ばし』ているのは、今のその時だけで、愛情が追いついてくる。『飛ばし』たつもりが、不意に来る愛情に、戸惑うこともあるだろう。

『飛ばし』ているはずの人が多くなっている時代なのに、なぜか皆、繋がりを求めている。


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