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"General theory of relativity"(Dirac)を読む3

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Chapter 3 "Curvilinear coordinates"

chapter3では”Curvilinear coordinates”、すなわち曲線座標系の話を見ていく。

時空上(原文ではspaceと書いているが、後述の様に4元ベクトルを考えるのでは、時空という意味か?)のある点での量を考える。この様な量は様々な要素を持ち、その点での座標系で言及されるものである。時空上のすべての点で同じ性質を持つなら、それは場の量として考えられるであろう。

その様な物理量$${Q}$$を考える。この物理量の4次元時空上で微分を次のように書く。

$$
\frac{\partial Q}{\partial x^\mu}=Q_{, \mu}
$$

微分は下付きの添字で表しているが、これは次に見るようにバランスを取るためである。

ある地点$${x^{\mu}}$$から微小距離離れた$${x^{\mu}+\delta x^{\mu}}$$を考えると、$${Q}$$の変化は次のように表せる。

$$
\delta Q=Q_{, \mu} \delta x^\mu \tag{3.1}
$$

先程、添字が下付きになっていたのは、式(3.1)の様なバランスを取るためである。

明示していないが、ここで考えた物理量$${Q}$$はスカラー量であるが、ある場所での物理量としてベクトル量やテンソル量も考えることができる。その場合も同様にベクトル量やテンソル量の成分は座標変換に伴い、式(3.1)で表された様な変換を受ける。また、添字の上げ下げは以前見た様に$${g_{\mu},g^{\mu\nu}}$$で行う事ができるが、以前と異なり、曲線座標系ではこれらは定数でない事に注意しよう。計量も場の量なのである。

さて、座標変換について考える。新しい座標系$${x^{\mu^{\prime}}}$$は古い座標系$${x^{\mu}}$$の関数である。

新しい座標系での微小変化は反変ベクトルを用いて次のように書くことができる。

$$
\delta x^{\mu^{\prime}}=\frac{\partial x^{\mu^{\prime}}}{\partial x^{\nu}} \delta x^{\nu}=x_{, \nu}^{\mu^{\prime}} \delta x^{\nu}
$$

これは、任意の反変ベクトル$${A^{\nu}}$$の変換則を与える。すなわち、

$$
A^{\mu^{\prime}}=x_{, \nu}^{\mu^{\prime}} A^{\nu}  \tag{3.2}
$$

また、二つの座標系を入れ替えた場合(新しい座標系から古い座標系への変換を考える場合)、添字を変えれば良いので、

$$
A^\lambda=x_{, \mu^{\prime}}^\lambda A^{\mu^{\prime}}. \tag{3.3}
$$

となる。

また、偏微分の計算ルールより、

$$
\frac{\partial x^\lambda}{\partial x^{\mu^{\prime}}} \frac{\partial x^{\mu^{\prime}}}{\partial x^\nu}=g_\nu^\lambda,
$$

だが、これを上で導入した添字を使った微分の形で書き表すと、

$$
x_{, \mu^{\prime}}^\lambda x_{, \nu}^{\mu^{\prime}}=g_\nu^\lambda      \tag{3.4}
$$

となる。この関係式を使うと、式(3.2)と式(3.3)はconsistentになる。というのも、式(3.3)に式(3.2)を代入すると、

$$
x_{, \mu^{\prime}}^\lambda x_{, \nu}^{\mu^{\prime}} A^\nu=g_\nu^\lambda A^\nu=A^\lambda .
$$

となるからである。

次に共変ベクトル$${B_{\mu}}$$がどの様に変換されるかを見るために、スカラー積$${A^{\mu}B_{\mu}}$$がコンスタントになることを利用する。式(3.3)を用いると、

$$
A^{\mu^{\prime}} B_{\mu^{\prime}}=A^\lambda B_\lambda=x_{, \mu^{\prime}}^\lambda A^{\mu^{\prime}} B_\lambda
$$

左辺の式と一番右辺の式を比較すると、共変ベクトルは以下の形で変換される必要があることがわかる。

$$
B_{\mu^{\prime}}=x_{\mu^{\prime}}^\lambda B_\lambda  \tag{3.5}
$$

式(3.2)と式(3.5)で上付き添字や下付き添字のテンソルがどの様な変換を受けるか分かったが、これは任意の階数のテンソルに対しても同じことが言えるので、例えば3階のテンソルは座標変換に伴い、以下の様な変換を受ける。

$$
T^{\alpha^{\prime} \beta^{\prime}}_{\gamma^{\prime}}=x^{\alpha^{\prime}}_{,\lambda}x^{\beta^{\prime}}_{,\mu}x^{\nu}_{,\gamma^{\prime}}T^{\lambda\mu}_{\nu}\tag{3.6}
$$

このテンソルの変換で一言言っておきたいのは、テンソルでは添字の対称性や反対称性が意味を持つということである。例えば$${\mu,\lambda}$$の対象性や反対称性は変換後も保存される。

さて、式(3.4)は次のように書けるだろう。

$$
x_{, \alpha^{\prime}}^\lambda x_{, \nu}^{\beta^{\prime}} g_{\beta^{\prime}}^{\alpha^{\prime}}=g_\nu^\lambda
$$

($${A^{{\rho}}=g^{\rho}_{\mu}A^{\mu}}$$を用いて、計量によってテンソルの添字を変更するとこうなる。)

もう一度、上の式を見ると、$${g^{\lambda}_{\nu}}$$もテンソルの変換則を受けているので、計量もテンソルと言える

あるいは、任意のベクトル$${A^{\alpha^{\prime}},B^{\beta^{\prime}}}$$のスカラー積が座標変換で不変であるという

$$
g_{\alpha^{\prime} \beta^{\prime}} A^{\alpha^{\prime}} B^{\beta^{\prime}}=g_{\mu \nu} A^\mu B^\nu=g_{\mu \nu} x_{, \alpha^{\prime}}^\mu x_{, \beta^{\prime}}^{\nu} A^{\alpha^{\prime}} B^{\beta^{\prime}}
$$

の条件より、

$$
g_{\alpha^{\prime} \beta^{\prime}}=g_{\mu \nu} x_{, \alpha^{\prime}}^\mu x_{, \beta^{\prime}}^{\nu} \tag{3.7}
$$

が成り立たないといけないので、やはり計量はテンソルであるということが示せる。同様に、$${g^{\mu\nu}}$$もテンソルである。

もし、任意のスカラー量$${S}$$があり、その微分を考えると、微分の連鎖律より

$$
S_{, \mu^{\prime}}=S_{, \lambda} x_{, \mu^{\prime}}^\lambda
$$

と書ける。これはつまり、スカラー量$${S}$$の4元ベクトルによる微分$${S_{, \lambda}}$$は$${B_{\lambda}}$$の様に共変ベクトルの様な変換を受けている。すなわち、スカラー量の微分は共変ベクトル場として振る舞うということを意味している。

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