ゲーム大会に関する任天堂のガイドラインと某イカゲームの大会
任天堂が「ゲーム大会における任天堂の著作物の利用に関するガイドライン」(以下「本ガイドライン」)を2023年10月24日に掲載しました。
本ガイドラインについては、同年11月15日から発効されるということですので、任天堂のゲームの大会主催者は、同日以降の大会運営について注意が必要です。
この記事では、スプラの1ファンが、本ガイドラインを受けて大会の開催が消極的にならないよう、本ガイドラインを解説し、適切な大会運営や告知を行うための支援をするためにまとめたものです。
なお、執筆者がスプラ好きなため、特にスプラの大会について書いているだけで、他のゲームでも同様の議論が出来る場面は多々あると思います。
それらの点は、読者自らが判断してください。
1.前提
この記事は、任天堂とは全く無関係な第三者が執筆しているものであり、任天堂の公式見解でも何でもありません。この記事を掲載後に、任天堂が異なる見解を出す可能性も大いにありますので、実際の大会運営に際しては、最新の本ガイドラインをご確認ください。
また、本ガイドライン自体が、一定の場面について任天堂が「著作権侵害の主張を行」わないことについてのみ触れているものである以上、他の法令等(eスポーツ界隈で、よく言われている景表法や賭博該当性の議論等)の違反を保証するものではないことにご注意ください。
※この記事は、2023年10月25日の情報を基に作成しています。
2.本ガイドラインの概要
時間なくPointだけ知りたいという方向けに、本ガイドラインで筆者が特に気になった点について、独断と偏見で抽出し、箇条書きにしました(その中でも特に明らかに影響出そうな2つは、箇条書き直下に記載。)。
「3.本ガイドラインの詳細」では、これらの各Pointについて、執筆者が気になった点を触れていますので、興味ある方は「3.本ガイドラインの詳細」も適宜確認ください。
また、ここ以外にも重要なものも多数あるので、一通り原案に目を通しておくことを推奨します。
スプラは、4人で1チームで参加することを考えると、人数制限の条件は地味に厳しそうですね。原則として、単純計算75チームが上限になりそうです(Point2)。なお、この点は、開催日を分ける方法で多少クリアできるようです(詳細は、「3.本ガイドラインの詳細」参照)
また、大会の告知物に記載しなければならない文言が増えた点も、少し大会主催者としては注意した方がよさそうです(Point10)。
3.本ガイドラインの詳細
(1)本ガイドラインの構成
任天堂は、本ガイドラインの公開に伴い「ゲーム大会を計画、主催される方へ。『ゲーム大会における任天堂の著作物の利用に関するガイドライン』を公開。」と題したプレスリリース(以下「本リリース」)を公開しています。
本リリースにおいて、任天堂は、本ガイドラインは、以下に該当する大会を対象としており、これに該当しない大会は事前に任天堂の許諾を得ておく必要があると説明しています。
「主催者が個人」かどうかは分かりやすいと思いますが、「営利を目的としない」、「小規模である」というのは抽象的で基準が良く分からないって感じですよね。
そこで、その補足説明のために本ガイドラインがあるとご理解ください。
このため、本ガイドラインの究極目的は、本リリース上に掲載された上記3要件(主体の属性、非営利性、規模)の判断基準を明確化することにあるといえます。
※本ガイドラインは、「主催者が個人」を対象としていますが、任天堂に大会の事前申請を行う際には、しれっと本ガイドラインの遵守の同意が求められるようです。
(2)本ガイドラインの適用範囲
本ガイドラインは、以下の2パターンのどちらかに適用される大会を対象としております。
スプラの大会は、概ね日本国内向けウェブサイトで募集されていますので、基本的には、これらの基準は満たすと考えてよいかと思います。
海外向けには別途ガイドラインが提示されているようですし、海外向け大会を主催する場合は、念のため、そちらも確認した方が良さそうです。
(3)本ガイドライン違反の効果
本ガイドラインを遵守した大会の主催に対して、任天堂は「著作権侵害の主張を行いません。」と明言されています。
ゲームの配信では著作権が特に問題視されやすいことを考えますと、本ガイドラインの公開は大会主催者にとって基準が分かりやすくなったものとして、かなり参考にできるものかと思います。一方で、「著作権侵害の主張を行いません。」の記載は、あくまで「著作権侵害」以外の問題が見つかった場合は別途対応する可能性は残したものと考えられます。
では、任天堂がどういう請求根拠でユーザーへ請求するのか、という点は気になるかもしれませんが、ここでは割愛します。
この記事上の着地点としては、本ガイドラインに沿っていればオールOK!と言われているわけではないことだけ頭の片隅で注意してもらえればよいかなと思います。
(4)「2.本ガイドラインの概要」の各Pointへの考察
ここからは、「2.本ガイドラインの概要」で触れた各Pointについて、個人的に気ままに少し考察します。
ア)Point1について
これは、言わずもがな、広告収益にあたっては「ネットワークサービスにおける任天堂の著作物の利用に関するガイドライン」も遵守してね、という話ですね。こちらのガイドラインについては、また別の機会でまとめられればと思い、今回は割愛します。
ちなみに、一人の主催者が直近1年間にこれらの投稿から得る収益の総額は、税込100万円未満にする必要がある旨添えられています。この点について、外部からどこまで明らかになるのか若干疑問がありますが、大会主催者側としては注意しておくべき要素かと思います。
余談ですが、「直近1年間」の基準のカウント方法(基準日)については、本ガイドライン上では明確化されていないので、今後、任天堂が追加説明等を行うかもしれません。1年間の起算点がずっと1年前で設定されててもやりにくいでしょうから、初回の大会開催日を1回目として起算し、そこから1年が自動更新されているようなカウント方法が現実的なのかなと思いますが・・・
イ)Point2について
小規模の基準として、大会の出場者について人数制限が課されています。
この点について、本リリースでは、以下のとおりスプラが大会例として例示されております。
これによれば、128チーム×4人=512人として、許諾申請が必要なものとして扱われております。
そのため、本ガイドラインの小規模基準を満たそうとすると300÷4=75チームを参加チームの上限とする必要と考えるべき、ということになりそうです。ちなみに、カウントにあたっては1日あたりの出場者数の合計のようですので、別日でブロックを分けたりして実施すれば人数制限を回避できたりする余地はあります。
例えば、大会の全てのブロックの出場者数を合計するとオンラインで300人を超える場合でも、Aブロック100人とBブロック201人の大会を別の日に開催すれば、1日に300人を超えるわけではないので本ガイドラインにおける小規模扱いとできると考えられるようです。
このロジックでいけば、今後は、予選と本選で2~3日に分けて実施、なんていうのも出てくるのかもしれませんね。
ウ)Point3について
観客から「料金を徴収」した場合、本ガイドラインによる許可が下りないこととなっています。
ここでの料金の範囲について、本ガイドライン上記載がないため、座席台としての「料金」のみを指すのか、スパチャのような投げ銭まで含むのかは謎です。
ただ、本ガイドラインが非営利性を特に重視していることを考えると、スパチャも「料金」の対象に含むと解釈して運営するのが無難かと思います。
エ)Point4について
「第三者」からの「物品や金銭等」を「受け取って開催」される大会は禁止されています。
ここでの「第三者」ですが、例示として「スポンサー等」と記載されていることから、例えば有志が優勝賞品を善意で提供することは、ここでの「第三者」に該当しないとも読めそうです。自己PRや広告目的での優勝賞品の提供は、「スポンサー等」に該当しそうですから、結局、「スポンサー等」の「等」に、どこまで含まれるか次第ですね。
オ)Point5及びPoint6について
Point5及びPoint6は、スプラ界隈では知られていそうな某〇〇杯との関係でセットで触れたいなと。
「出場者と観客の健康と安全に配慮」することは、オフライン大会等を想定したものかと思いますが、飲酒という要素で行くと地味に牽制されそうな記載ですね。
「賭博」と「薬物」と並列して「酒類」の使用についても「看過してはなりません。」と記載されています。
オンラインでは、自宅でお酒を飲みながらゲームしたい人もいるはずで、そのような人の行動まで制限しろ、ということは現実的ではありません。また、「賭博」、「薬物」と同様に「違法な飲酒」(未成年の飲酒や、ペナルティとしての一気飲みの強制等)のみを制限する趣旨と考えることもできます。
その前提に立てば、未成年の飲酒や「健康と安全」を脅かすような過度な飲酒のみを制限してるとも解釈できそうです。
ただ、この点は、任天堂からしたら全年齢を対象としているゲームにおいて「酒類」自体が子どもたちにとって「薬物」と同じくらい悪影響があるという前提で一律禁止している可能性もあります。
個人的には、大会参加者が任意で飲んでいる分には仕方ないよね、という話になると思いますし、飲酒についての相応のルールを作れば、「酒類の使用」を「看過」したには該当しないとも言えるのではないかな?と考えたいですね。
この点は、任天堂さんにもう少しどのような「酒類の使用」を制限しているのか決めて欲しいものです(飲酒の自由はユーザーにもあるはず!)。
カ)Point7について
この点は、eスポーツ界隈で以前から指摘されている賭博罪との関係で定めたものかと思われます。
オフラインの大会の場合の出場料と観戦料の金額が定められたことも大きいと思いますが、個人的には、徴収したお金はあくまで「大会設営費用に充てる目的」に限られていること、また、「会計書類を、誰もが閲覧可能なウェブサイトやSNSに直ちに掲載し、公開」することが求められていることは、主催者側にとっては注意が必要です。
特に後者は、結構、手間かなと。。。
キ)Point8について
ゲームのプレイ映像やスクリーンショットを広告物に使用することは掲載してよいようです。
一方で、ロゴやキャラクターイラスト、イメージイラスト等は使用できない旨が明言されています。
あくまでゲーム内から持ってきた範囲で使用してね、ということですね。
大会PRのためのPVで、過去の試合の様子等の切り貼りは認められそうですが、その中で任天堂のゲームのロゴやイラスト等を入れた場合には、注意が必要です。
ク)Point9について
通常の大会で出場者に出演料等の費用を支払うことは滅多にないでしょうが、集客目的でプロゲーマーに出演や出場を依頼した場合には、出演料等を支払うことがあるかと思います。
この場合、「出場者に出演料等の費用」を支払っていることとなるため、ガイドラインでの許可が下りないと考えられます。
出場者に出演料等の費用を支払っているかは、外部から必ずしも明らかではないと思います。ただ、出演料等の費用を支払う前提として、それに見合う収益が発生する仕組みがあるはずなので、対外的にはその収益化のスキームの確認の過程で確認が入ってくるのかなと思われます。
大会主催者としては、とりあえず出演料等の費用は支払わない対応が無難でしょう。
ケ)Point10について
「出場者」の属性について、「個人であるお客様」または「非営利のチーム」が要求されています。
この点からいけば、例えば特定のスポンサーがついているプロチームの4人が揃って大会に出ていると、これは「非営利のチーム」ではないと判断される可能性がありそうです。
あくまで「チーム」単位での記載となっていることを踏まえると、ストリーマーとして活動し、普段は別のチームで動いている人たちが、大会のために集まることは、一応「非営利のチーム」であるとは解釈できそうです。
コ)Point11について
広告・宣伝のために任天堂のゲームを利用することはできないという観点から、大会名に第三者の法人名、団体名、商品・サービスの名称、屋号等をつけることが禁止されています。
個人的には、「広告・宣伝のため」に制限することと、第三者の法人名等を利用することは論理必然で繋がるものではないと考えております(執筆者が全く無関係なサービス等の名称を使っても、広告・宣伝目的がどこまであるかは怪しい)。
「広告・宣伝のため」を重視するならば、「広告・宣伝のため」ではない、全く利害関係のないサービス等を名称に付す場合は、NGな場面にはならないと考えられそうです。一方で、「広告・宣伝のため」は方便で、第三者の商標権等を侵害しないように配慮してのものであれば、全く利害関係のないサービス等を名称に付すこともNGな場面といえそうです。
いずれにせよ、大会主催者としては、コンサバに第三者の法人名、団体名、商品・サービスの名称、屋号等を使用することは控えた方が無難でしょう。
※YouTuberやVtuberが自身の名前をつけた大会を開催することが見受けられます。
これらは、まさに「広告・宣伝のため」という意味で考えると、今後は、そのような大会名は付けることができない、と考えられそうです。この点は、「第三者」が大会主催者以外の第三者を指すのか、任天堂以外の第三者を指すのか、にもよりそうですが、コンサバに運営するならば、一旦、任天堂に申請して様子を見るのが無難でしょう。
サ)Point12について
これは、大会について広告する際に一律記載することが求められているので、大会主催者としては、必ず記載するよう心がけましょう。
一方で、少し気になるのは、「X」(旧:Twitter)上で投稿しようとすると文字制限があるかと思います。このような場合の投稿にまで、この記載がどこまで求められるかは、明確化されていません。
一般的に、広告物への表記については広告スペースに限界があれば、一部の法定記載事項等も簡略化して記載ないし省略等工夫することで足りるとされていることも考えると、文字制限があるような場合や、広告スペースに限界があるような場合は、この規制は及ばない、と考えてもよいのではないかと思います。
4.最後に
本ガイドラインには、経過措置が設けられています。
①本ガイドライン掲載日前に告知し、2024年以降に開催する大会
②本ガイドラインの掲載日以降に告知し、発効日以降に開催する大会
については、本ガイドラインの対象とならない場合、事前申請が必要ですのでご注意ください。
本ガイドラインでは、他にも商品の提供金額や収益化の上限等の記載もあります。また、任天堂との関係で「公認」等は名乗ってはダメとか、大会名等のルールや今回触れていない点も色々記載されていますので、繰り返しになりますが、大会主催者は、是非一度目を通してみてください。
この記事は、あくまでご自身で理解するための一つの標として自己責任で読んで、楽しくスプラの大会開いてください!
機会があれば、その大会にお邪魔します
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