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「生物」をプログラミングする技術について

皆さんこんばんわ!バグプログラミングです!今回は少し難しめのお話になります。自分の研究分野にも関連のあることですが、「生物のプログラミング」についてご紹介します。

【PCではなく、生物相手にプログラミング?】

 PCやスマホなどに計算や画像表示などの命令を指示する、これがざっくりとしたプログラミングだと思ってください。基本プログラミングはコンピュータに対して行うものですが、その指示する対象がコンピュータではなく「生物の細胞」に対して行うことです。
 つまり、生物の細胞に命令文を作ってコンピュータのように操作できるようにする技術のことです

 細胞もコンピューターも実は似たような働きをしています。情報(シグナル)をインプットして受け取り、それに即したアウトプットをします。

遺伝子の情報とPCの情報は意外と似ている

引用元:https://anmin579.com/2020/03/10

 わかりやすい例は「インスリン」ですね。もしフラペチーノを飲めば血糖値が上昇し、膵臓の細胞が「血糖値上昇」というメッセージを受け取る。そしてアウトプットとして、膵臓の細胞はインスリンを増産させて血糖値を低下させます。

【どうやってプログラミングを実行するのか?】

 これらの細胞は、DNA組み換え酵素と呼ばれるタンパク質を使ってDNAを切り刻み、シャッフルして、再度くっつけることで命令を実行させます。正確には、「新しい命令文を書き込む」ではなく「既存の命令文を改ざんする」イメージですね。要はハッキングです。

 実際に2017年3月27日にDNAを操作する実験が成功したと科学雑誌『Nature Biotechnology』に紹介されました。命令としてはシンプルなもので、「引き金となる情報を受け取ったときは、~の作業を行わない」という命令文です。研究者らはこれを利用し、命令に応じて発光する細胞をつくりだしました。

 「DNA組み換え酵素が存在するときは青く光るタンパク質をつくらない。この組み換え酵素がない場合、青く光るタンパク質を作る」

という命令文を作り、その通りに細胞が発光したと報告しました。今後は、発光のタイミングを細かく設定するなど、はるかに複雑な命令をすることも可能とのことです。

【この技術は何に役立つのか?】

 真っ先に思い浮かぶのは「医療技術」です。特定の病気に関連するタンパク質を発光条件にすることで診断にも応用でき、病気の早期発見につながります。また、ガン細胞特有のタンパク質などを検知し、ガン細胞を攻撃する免疫細胞のプログラミング開発されています。

 さらに、酵母細胞を使って香料を製造し、香水ブランドに販売する会社もあるそうです。この酵母は酒造用の酵母と同様に糖を食べるが、アルコールをつくる代わりに芳香化合物(香水の香り成分)を排出します。ただし、分裂のたびに変異しやすく、また多くの分裂を繰り返すと機能が低下してしまう難点が残っており、これをプログラミングで解決する試みが現在行われています。

引用元:https://www.sumuous.xyz/index.php?main_page=product_info&cPath=1&products_id=29230

 また2016年4月7日には、米マサチューセッツ工科大学(MIT)などからなる研究チームが、バクテリアのDNAに作用して特定の機能を付与する"プログラミング言語"を開発したという報告もあります。言語のベースになったのはデジタル回路シミュレーションに使われる「Verilog」と呼ばれる物です。

引用元:https://www.huffingtonpost.jp/engadget-japan/dna-programing_b_9621512.html

用意された機能は約60種類もあり、酸素やブドウ糖などのパラメーターに応じた反応を返します。

 研究チームはこのプログラミング言語によって、がん細胞を発見すれば抗癌作用のある酵素を出す細胞を作ったり、発酵食品の製造過程で有毒な副産物の生産を抑制する酵母を作るといった応用が考えられるとしています。

 この例と同じように、今後「プログラミング言語のオープンソース化」することで、生物に対するDNA操作技術が爆発的に普及するかもしれません。もちろんDNA操作には最新の注意を倫理観が必要ですが、こうした実験は科学の発展に大きく貢献することになると考えます。

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