ポートフォリオ作成基礎講座(中編)
みなさんこんにちは。株式会社リクルートホールディングスが運営するアートセンター「BUG」のスタッフです。
BUGではBUG Art Award関連イベントとして、菅亮平さんによる「ポートフォリオ作成基礎講座」を開設しています。ここでは、第一回目のアワードの募集期間中の2023年3月20日に開催されたレクチャーの文字起こし原稿をもとにして、菅さんに書き下ろしていただいた講義録を公開します。
講座に参加できなかった方やもう一度内容を確認したい!という方、どうぞご活用ください。前・中・後編の全3回に分けて講座内容をお届けします。
【前編】
【中編】
【後編】
3. ポートフォリオの構成
3.1. 氏名と連絡先
次に、ポートフォリオの主な構成内容について説明していきましょう。これも一般によく用いられる形式の話として受け止めてください。
まず、氏名や連絡先です。次に、経歴ですね。経歴の書き方には「CV」と「Biography」の二つがありますが、これは後ほど説明します。そして、ビジュアル・アーティストのポートフォリオであるわけなので、もちろん作品や展覧会の図版をはじめとした画像資料が最も重要な内容になってきます。そして、それら掲載作品・画像を説明する情報としてのキャプションがあり、その他に作品のテーマや制作の背景などを説明したテキストを掲載する場合も多いです。これを美術の世界では広くステートメントと呼びます。また、作品や展覧会についての論評・批評文や紹介記事などが参考文献として掲載されることもあります。ここからは、一つ一つ見ていきましょう。
氏名と連絡先に関しては特に説明はいらないと思いますが、メールアドレスに加えてウェブサイトや広報用のソーシャルメディアのアカウントがある場合はURLを掲載します。アクセスしやすいように、QRコードをレイアウトするケースもよく見られます。
また芸能・芸術関係の世界では、アーティストのセルフポートレート写真を「アーティスト写真(略:アー写)」と呼び、掲載する人も多いです。アー写は、オフショット的に撮ったものであれ、ライティングして作り込んで撮ったものであれ、アーティスト自身が選択したものですよね。従って、自身をどのように見られたいかという自意識や美意識が端的に現れます。
3.2. CVとBiography
経歴については、主に二つの方法で表記されます。一つは「CV(シーブイ)」、もう一つが「Biography(バイオグラフィ)」です。「CV」は、もともとラテン語の「カリキュラム・バイティ」の略であり、アーティストとしての全てのキャリア、あるいは主だったキャリアを抜粋して、項目ごとに分けてリストの形で年代順に記載します。一方の「Biography」は、語義の中に「伝記」という意味が含まれていることからも推察できるように、経歴の概要を文章形式で表記したものを言います。
「CV」の主な項目について簡単に説明していきます。
まず、生年、出生地、現在の活動地ですね。特に重要なのは、現在活動拠点としている場所で、「Lives and works in Tokyo(東京都在住)」というように表記します。生年に関しては、もちろん生まれた年という意味ですが、生年を公表しない・わざわざ表記しないというアーティストもいます。おそらく、年齢の公表はエイジズムにつながる可能性があること、あるいは「80年代生まれのアーティスト」など、世代としてくくられたりジェネライズされたくないという考えによるものと推察されます。
「Educational background(学歴)」を書く場合は多いと思います。最終学歴などですね。そして基本的に「Exhibition(展覧会)」は、個展とグループ展で分けて書きます。「Bibliography(参考文献)」は、刊行物や自作に関係する批評文・記事などのことです。「Lecture(レクチャー)」は、トークイベントや大学での講義など、不特定多数を対象とするような公開の場での口頭発表を行ったというキャリアです。「Award」は賞のことですね。オープンコールなどのコンペティションの入賞・受賞経験です。「Grant」は助成という意味ですので、獲得した奨学金や助成について書きます。賞と助成をまとめてGrantとして書く場合もあります。そして、公的機関あるいは有名なコレクターに作品が所蔵されることは、ある種のステータスでもありますので、「Public / Private Collection」の項目で所蔵先を列挙します。
そして、「Final Updated Date(最終更新日)」は、必ず記載したほうが良いと思います。例えば、あるアーティストのウェブサイトを2023年に見たときに、そこには2018年までの経歴と作品だけが掲載されていたとします。その場合、実際にはそのアーティストが近年に展覧会をしていたとしても、「この何年間は展覧会をしていないのかな?」と思われたりもしますよね。多忙なアーティストあるいは不精なアーティストであれば、何年もポートフォリオやウェブサイトを更新できていないということは実際にありえます。他者にしてみれば、情報がいつの時点に更新されたものかは分からないので、最終更新日を記載しておくことは一種のエクスキューズとして有効だと思います。
アーティストによって活動形態や活動方針は異なりますので、CVに含まれる項目も本当に多岐にわたります。研究という性格を強く持った作品制作を行っているアーティストであれば、「Research」という項目を設定するでしょうし、映像系の作品を作るアーティストであれば上映会のイベントに参加しますので、「Screening」という項目が「Exhibition」と分けて設定されたりもします。
CVを作成するポイントとしては、とにかく自分と作品形態や活動スタンスが似ている先輩のアーティストを調べ、自分にとってのロールモデルになるようなアーティストのCVを見てみることが良いと思います。そこでポイントとしては、海外での活動経験があるアーティストのCVを参照することです。海外で活動しているアーティストであれば、バイリンガルで経歴を表記しますし、グローバル・スタンダードに対する理解がありますので、参考にしやすいと思います。
私がこれまで観測してきた範囲で、最も丁寧にCVを作成されていると思ったのは、東京藝術大学で教員もされている毛利悠子さんです。今日のレクチャーでは、お名前だけご紹介だけさせていただきますが、アーティストウェブサイトをぜひ参考にみてもらいたいと思います。
Biographyについてですが、どういうものかと言うと、文章形式で短く書かれた経歴ということです。どういう作品をつくっているかという端的な概要文であったり、主だった学歴や展覧会、受賞歴などをセレクトしてまとめたものを言います。
掲載先のフォーマットや仕様に応じて、CVとBiographyは使い分けられますが、併記されることもあります。
3.3. 肩書きの表記
ここで少し注目してみたいのは、肩書についてです。アーティストの肩書には多様性が見られます。欧米圏や英語圏で「Artist(アーティスト)」というのは、ファインアート(美術)の実践者を指しています。日本語の訳語は「芸術家」とされていますが、日本語で「芸術家」と「アーティスト」はかなりニュアンスが違いますよね ?
絵画作品を制作している人の中でも、肩書を「Painter(画家)」と書く人もいれば「Artist(アーティスト)」と書く人もいます。絵画は美術の中でも最も古い歴史を持つ領域・メディアの一つですが、「Painter(画家)」と名乗っている場合には、絵画という文脈にしっかりとコミットしその形式を背負うというある種の自負や意志を感じます。一方で、「Artist(アーティスト)」と名乗っている場合には、相対化された視点の中で絵画という表現メディアを選択している(他のメディアでの作品制作も行っている / 行う可能性がある)、という意識が読み取れたりもします。
また、例えば「日本画家」も「画家」であるわけですが、日本画という日本の風土や歴史に裏打ちされた素材とテーマに則った固有の絵画の系譜・領域において絵画作品を制作する、そうした意識から日本画家という表記もあるわけです。その他に「版画家」「写真家」「映像作家」「彫刻家」などにおいても、同様のことが言えるのではないかと思います。
つまり、肩書の表記には、その人の表現メディアに対する関わり方や文脈への意識の在り方が現れるのではないかということです。「美術家」「美術作家」「造形作家」など、その他にもいろいろな実例がみられますので、これから気をつけてみてみると面白いと思いますし、自身に対してどの表記がしっくりくるのか、あるいは既存の表記のいずれにもあてはまらないのか、そうしたことも考えてみてください。
3.4.図版とキャプション
ここからは、図版についてです。図版については、これだけでもう一本レクチャーを組まなければいけないのですが、主だった内容を列挙してみましょう。
作品の全体あるいは一部を撮影した写真、そして展覧会の展示風景、いわゆるインスタレーションビューが中心になります。その他に、作品の制作過程や理論的背景への理解を促すために、スタジオでの制作風景やダイアグラムなどの図版も掲載されることがあります。
ビジュアル・アーティストのポートフォリオにおいては「写真や画像が命」ということはもちろん言うまでもありません。どのようなアーティストであっても、写真と一切関係を持たずにアートワークを展開していくことは考えにくいですから、写真の光学原理やデジタル画像の成り立ち、カメラの操作、撮影技術、ライティング、カラーマネージメント、画像編集などに対する、基本的な知識と技能が備わっていることは強みになります 。
写真はどんどん増えていくものなので、一つの作品や展覧会、プロジェクトごとに、それぞれのコンセプトやビジョンを象徴するベストショットを選定することも念頭に置いておくといいのではないでしょうか。
ではここからは、キャプションについて説明していきます。作品集などを見れば、どういう形態の作品の情報がどのように記載されているのかということは分かると思いますが、改めて整理して解説したいと思います。
作品タイトルは、英語ではイタリック体で表記します。これは知っておくといいでしょう。日本語ではそうした決まりはありません。文章の中で作品タイトルを引用する場合には、二重山括弧《》が使用されます。
制作年は、その作品が完成した年を記載するのが一般的だと思います。2016年から2023年というように、長期にわたって取り組まれた作品やプロジェクトもあるので、年をまたぐ場合には相当する年数を「2016-2023」などのように表記しましょう。
平面や立体物など物理的なオブジェクトとしての作品にはサイズを、映像やサウンドは「タイムベースド・メディア」などとも呼ばれますが、時間の長さを表記します。
メディアや素材も必ず表記しますが、これは技法の場合もあります。例えば版画で言うと、「Etching(エッチング)」などですね。「Ink on paper(紙にインク)」とは通常表記されないと思います。
作品の所蔵先があればそれも書きます。個人のコレクターが作品を所蔵している場合には、「Private Collection(個人蔵)」と、個人名を明かさずに匿名の形で表記することが多いです。作品が美術館や企業などに所蔵されている場合には、「Collection of the 〜(〜蔵)」というように書きます。そして、アーティスト本人で作品を持っている場合に、「Collection of the artist (作家蔵)」という表記がありますが、エマージングのアーティストであればほとんどの作品が手元にあると思いますので、ポートフォリオに掲載する作品のキャプションにわざわざ書く必要性はあまりないと思います。
作品制作に協力してくれた人や企業、団体などがいる場合には、その氏名・名称と内容を書きます。また、写真に映っている作品はアーティストの著作であるわけなのですが、それを撮影した写真自体には撮影者の著作権が発生しますので、クレジットが必要になることも覚えておいてください。©️をつけて氏名を表記する場合が多いですね。
では、自作で恐縮ですが、それぞれの作品形態ごとの表記例と注意事項をみていきましょう。
絵画であれば、素材を列挙して表記しますね。主には支持体の種類・形態、そして絵具の種類です。例えば、「Oil on canvas(キャンバスに油彩)」 といった表記が一般的です。
写真の場合は、素材や技法というよりはプリント方法を表記します。インクジェットプリントやタイプCプリント、ゼラチンシルバープリントなどですね。絵画や写真など、平面作品の場合は、縦・横の長さを示すことが必要です。単位については、センチでもミリでも、大きな作品の場合にはメーターでも構いませんが、基本的には統一したほうが良いと思います。アメリカの美術館やギャラリー、オークション会社などでは、インチとセンチが併記されている例をよく見かけますね。
立体作品のキャプションについてです。3Dなので、W=横幅(width)、D=奥行(depth)、H=高さ(height)の情報が必要となり、WDHの順番で表記します。また、立体に限らず、平面でもインスタレーションでも用いられる素材の表記方法として、「Mixed media(ミクストメディア)」がありますが、構成要素として様々な素材を用いているものの、それらを列挙することに特段の必然性がない場合などに使用されます。シンプルに「いろいろ使って作った」というような意思表示です。
映像メディアでは、複数面に映像を投影したマルチプロジェクションのインスタレーションなどもありますが、単一の映像作品であれば、「Single channel video(シングルチャンネルビデオ)」という表記方法がよく見られます。時間の長さは「時、分、秒」を「° 、 ’、”」の記号を用いて、「1時間2分52秒」であれば「1°2’52”」というように表記をします。
次に、インスタレーションの場合は、その作品を設置する会場によってフレーミングのスケールが自ずと変動するため、明確なサイズを規定できないことがしばしばあります。その場合には「Size variable(サイズ可変)」と表記します。
展覧会の記録としての会場風景写真の場合には、「Installation view of Solo Exhibition 〜(〜展示風景)」などと表記すると良いでしょう。また、展示場所となったスペースの名称、さらに都市や国名を書き加えることがあります。ただ、例えば「ロサンゼルス現代美術館」など、固有名詞の中に都市名が含まれていれば、その場所がロサンゼルスであることは自明です。一方で、Tokyoなどの大都市・国際都市であれば、日本の東京だと世界中の人が認識してくれるので、Japanと書き添える必要はないかもしれません。外国の人にとってその都市名が何なのかピンとこない場合、国名まで書くという必要性が分かるかと思います。
その他に、アーティストによっては制作プロセスの説明のための画像や図が説明文と併せて示されることもあります。作品の制作風景を物語るスタジオの写真などを、一種のイメージ画像としてページ構成の中で効果的に差し込んだりされることもありますね。そうした作品以外の図版にも、説明のキャプションや撮影者のクレジットは付けておきましょう。
キャプションは、単に作品概要としての情報を示すという役割にとどまらず、その作品のアイデンティティを表す上でとても重要な観点を含んでいる側面があると思います。「Oil on canvas(キャンバスに油彩で描かれた絵画)」という表記は、その表現としての様式自体が、あらかじめ西洋における絵画史の文脈を内包しています。
一方で、会田誠さんの《紐育空爆之図(にゅうようくくうばくのず)》(1996年)は、日本画の六曲一隻屏風の形式を下敷きにされていますが、キャプションには「襖、蝶番、日本経済新聞、ホログラムペーパーにプリント・アウトしたCGを白黒コピー、チャコールペンシル、水彩絵具、アクリル絵具、油性マーカー、事務用修正ホワイト、鉛筆、その他」と、全ての素材が列挙して表記されているんですね。これは、「事務用修正ホワイト」など一般的に画材として使われないようなものも含め、身の回りにあるものを駆使して制作するというブリコラージュ的なアーティストの制作スタイルの一端が示されているようにも考えられます。
3.5. 作品リストの準備
作品のキャプションをまとめていくにあたっては、作品のメタデータとしての情報を整理しておく習慣が重要です。例えば、ポートフォリオを編集している際に「この作品のサイズは何センチだったっけ?」みたいなことはよくあるので、作品リストを日頃からエクセルなどでまとめておくことを推奨したいと思います。
例えば、作品タイトル、制作年、制作期間、完成日、素材・技法、サイズ、備考(作品の内容)、作品の所在地、所有者、所有者の住所・連絡先、額装・ケースの有無、額の製作業者、梱包状況、撮影の有無、撮影者、展覧会の出展歴、記事・レビュー等の情報、販売価格、その他の特記事項のような項目立てが考えられますが、それらはアーティストごとに異なってくると思います。そして、いずれ発生するかもしれない作品の保存・修復作業を見越して、どこのメーカーの接着剤を使ったとか、そうした情報を備考欄に記載して、作品の「Readme(リードミー)」の作成に役立てられるようにするなど、いろいろな工夫が考えられますね。
作品リストに関連して説明しますと、「Inventory No.(インベントリー・ナンバー)」がアートの世界では重要なものとしてあります。これは「目録」という意味になりますが、個別のアート・ピースと対応させた通し番号の記号です。
例えば、作品で「Untitled(無題)」のものが、たくさんあったりする場合もありますよね。そうした場合に、「2023年に制作した《Untitled》の作品です」と言ったところで、どの作品の話をしているのか分からなくなるということがあると思います。「rk-2023-pt-001(rk= Ryohei Kan / pt=painting)」というように、自分なりのルールに基づいて通し番号を設定することは、作品リストを系統だったものにし、アーカイブの観点においても事業運営においても合理性があります。
3.6. 大学での課題の扱い
学生の方のために少し説明をすると、やはり大学の課題で制作したものは、本来的な意味での作品と区別しなければいけないと思います。単純に課題として行ったのでなく、その課題の枠組みの中で作品を作ったということであれば、それらを分け隔てる必要はないかと思いますが、「勉強」として行ったものに限って言えば、「これを本当に作品としてポートフォリオに載せていいのかどうか?」ということを検討してみた方がよいと思います。
もちろんですが、大学での課題や研究を否定しているわけではありませんので、もし載せる場合には、課題名や課題文、その概要をキャプション情報と併記するなどして、「大学のこのような課題で作品を作りました」「大学でこのような実習・研究をしました」ということを明示できる構成を考えるといいと思います。
3.7. ステートメントと参考文献
「Statement(ステートメント)」は、これは特にアートの領域だけではなく、広く社会一般で使われる言葉です。日本語では「声明文、陳述、申し立て、供述、発言」などと訳されますね。つまり、ある主体者が自らの意思をもって考えを表明する行為全般、あるいは表明されたものと考えて良いでしょう。
アートでは、アーティストの創作上の考えや理念、その方針などについて意見を表明したもの、または作品それ自体について、作品の背後にある考えや制作過程、フィロソフィなどが書かれてあるもののことです。アートワーク全体について、個別のピースとしての作品あるいはシリーズについて、展覧会についてなど、説明の対象となる範囲や射程、観点もさまざまです。
例えば、アートワーク全体を包括するようなステートメントであればテーマについて書くでしょうし、個別の作品あるいはシリーズについてであれば、直接的な創作意図としてのコンセプトを書くでしょう。展覧会の場合には、その展示を構成するパースペクティブとして、テーマとコンセプトの双方にまたがる観点で文意を形成するでしょう。
作品の創作意図を詳述する際にも観点はさまざまです。例えばりんごを描いている絵画であれば「なぜりんごを描いているのか」というモチーフの話をする場合もあるでしょうし、「最初にこれをやって、次にこれをやって、さらにこれをやって作品を作る」というようなプロセスの説明に重点を置く場合もあります。また、ゴミ箱から拾ってきた雑誌を作品のマテリアルとして使うことに意味がある作品であれば、素材の選択の説明にプライオリティがあるかもしれません。
一方で、アーティストの出自や属性などが直接的に制作の背景になっている場合などは、自身のバックグラウンドを説明することもあると思います。具体的に言えば、ステレオタイプな例ではありますが、戦争を経験した中東出身のアーティストがいたとして、そういった自身の生い立ちにある政治的な背景が作品の問題意識に直接的に繋がっているのであれば、そうしたことをまず最初にテキストの中で触れなければいけない、といったような具合です。
また、リファレンス(参照・引用)という観点もありえるでしょう。明らかにマルセル・デュシャンの《大ガラス》のパロディとしての作品を制作したということであれば、出典先である《大ガラス》自体について言及することが求められるわけですね。
このように、テキストを書く内容は、アーティストによって、作品によって、状況によってさまざまですが、文量は概ね300〜800字の文字数を目安にするとよいと思います。もっと長く書かれる場合もあるのですが、できる限り端的にまとめられることが多いと思います。
最後に、「Bibliography(参考文献)」についてです。自分の作品や展覧会に関して記事や論評が出た場合は、その内容や紙面をポートフォリオ内に掲載する場合もあります。そうした文献に関するキャプションの表記方法について、論文やレポートの場合は幾つか方式がありますが、概ね「著者名、本の名前、出版社名、出版年、ページ数」というような順で表記する事がルールです。一方で、それらをCVの中で列挙する場合は、経歴という性格上、出版年が先に来る形で書かれます。