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【大学教員公募】大学の先生になるには?公募のプロセスや段階別の心構え

 「大学教員になるには」「大学の先生になるには」といったテーマの記事が増えつつある中で、改めてこのような記事を書く必要はないのかもしれません。一方、他の方が書く記事と私自身の経験とにズレを感じることもあります。大学の人事など一つとして同じものはないので当然です。そう考えてみると、他の方が述べているものと異なる私の経験にも、具体例の一つを提示するという点である程度意味があり、共通部分について再三語ることも、「王道」をより濃く浮かび上がらせるものとして一定の意義があるのかもしれません。
 そういったことを考えながら、経験談混じりに本記事を書くに至りました。

1.応募先を探す

 「大学の先生」を自身の将来像として描く時期は人それぞれです。中には小学生のころから研究者の夢を追う人もいるでしょうし、大学院に進学してから大学教員を目指す人もいるでしょう。いずれにしても、具体的な就活を意識するのは、自立した研究者としての実力を備えた時だと思います。
 実力を備えた時といっても、これは人によって異なります。ほとんどの人は「まず博士号」と考えています。私自身は博士号取得以前(取得見込み状態)に就職が決まり、また同世代でもわりと少なくない若手が博士号を取らずして就職を決めていますので、「まず博士号」とは考えていません。一定数の論文を書き、教歴を有している状態が「実力を備えた時」であると考えています。これも、私が社会科学系の一分野の人間であるからかもしれません。状況は、学問分野により大きく異なります。
 いずれにしても、実力を備えたといえる段階にきたのであれば就活スタートです。ほとんどの人は、Jrec-in(JREC-IN Portal (jst.go.jp))で大学の公募状況をチェックすることになります。フリーワード欄に自身の専門分野に関する単語を入れ、応募できそうな公募がないかを探ります。
 中には、知り合いを通じて誘いを受ける方もいるかもしれませんが、それはごく稀です。

2.公募内容を確認し書類を作成する

 興味のある公募が見つかったら、応募資格やどのような書類が必要なのかをチェックします。応募資格には、多くの場合「博士号取得者(=博士課程修了者)またはそれに準ずる研究業績を有する者」とあります。こうした要件を引き合いに、上記の如く多くの方は「まず博士号をとれ」というわけですが、要件には「または…」と書いてあるため必ずしも博士号取得者のみが採用されるわけではありません。私自身は、「博士号をもっていなくても欲しい人材がいるならばとりますよ」という大学側の意思表示であると考えています。実際、当時「博士号取得見込み」であった私が採用通知をいただいた2つの大学(1つは大規模国公立大、1つは中~大規模私立大、別記事参照)は、応募資格を「博士号取得者またはそれに準ずる研究業績を有する者」としていましたし、昨年度、本年度就職を決めた友人ら(近接分野、3名)も、いずれも博士号未取得ですが同様の条件の公募を通過しました。
 博士号云々よりも、大学側にとってほしい人材であるかどうか(もっと言えば、選考委員の心を揺さぶるような一芸をもっているか、将来性があるか)の方が重要だと思います。若さも武器になりますので、自信のある方は博士号取得前であっても是非公募に挑戦していただきたいと思います。
 「生存者バイアスだ」と言われればそれ以上何も言うことはありませんので、そのような方はまず博士号取得を目指して頑張ってください。
 話がだいぶ逸れましたが、応募に必要な書類は大抵、履歴書、研究教育業績書、主要な業績3点~5点、提出業績の要約、課題作文(研究と教育の抱負など)です。大学教員になるために国家資格は必要ありません。ただし、採用に値する業績は必要です。ベースとなるものを一通り作っておけば、それを応募先の大学に合わせて改変していくことができます。「産みの苦しみ」と言いますが、こうした書類は早い段階できちんとしたものを作っておくことをお勧めします。

3.郵送(メール応募)してひたすら待つ

 応募書類を郵送(最近ではようやくweb提出のものも見かけるようになりました)した後は、ひたすら結果を待ちます。この生殺し状態の期間は本当につらいですが、仕方ないです。「一旦忘れて研究に集中しろ」とよく言われますが、無理な話です。どうにも研究に手がつかない人は私の記事でも…というのは冗談で、通過した場合の妄想を素直に繰り広げればよいと思います。面接のこと、さらに先の、新生活のこと、色々想像して具体的に考えておくことは大切です。こうした具体的な妄想は、書類審査を通過した後で大きな役割を果たします。引っ越しや地域に根差した社会活動など、面接で採用を前提とした具体的な話に及ぶことがあるからです。
 いずれにしても、この期間は辛抱です。少なくとも〆切から1か月の間に必ず選考委員会や教授会が開催されますので、1か月は待つとよいかと思います。1,2週間ほどで諦めるのはやや早計ですが、1か月以上音沙汰なしの場合はあまり期待しないほうがよいでしょう。どれくらいで書類審査の結果が通知されるかを知る術はありませんので、一応、1か月を一つの目安にするとよいだろうということです。

4.結果が届くーお祈りか面接通知かー

 1か月以上経ち、忘れたころに届くのは、おそらくお祈りレターです。一方、数日から数週間ほど経ち、知らない番号から電話があれば面接通知の可能性大です。通知の仕方も様々だと思います。私の場合、2大学とも「結果は書面で通知」とありましたが、まず電話が来て、その後書面にて通知がありました。お祈りであれば、その大学との縁がなかったということ。「この大学には人を見る目がない」と自分に言い聞かせ、次の公募にチャレンジしましょう。面接通知であれば、ひとまず歓喜です。おそらく、2~5人に絞られているはずです。面接試験を突破するために全力で準備をしましょう。

5.面接

 面接にもさまざまなパターンがあります。基本的には模擬授業+面接、さらにその後学長面接や理事面接が待ち構えていることもあります。ただし、ほとんどの場合は模擬授業+面接で決まるといってよいでしょう。その後の二次、三次面接は、規定上必要な形式的なものであることが多いです。
 模擬授業は非常に重要です。別記事でも書いていますが、自分本位かつ「無難な」授業をしても印象には残りません。大学・学部のレベルや、学内カリキュラムにおける当該授業の位置づけを事前に分析したうえで、現在流行りのアクティヴ・ラーニングを盛り込んだ授業を行いましょう。誰にでもできる授業をしても面白くありません。おすすめは、面接官を巻き込んだ授業展開です。何らかのプラットフォームを用意しておき、そのリンクをQRコード化して面接官のスマートフォンで読み取らせ、強制的に授業に参加させます。あくまで1つのアイデアですが、ウケは抜群です。
 また、面接に呼ばれている以上、見られているのは人柄です。誠実さ、清潔感、コミュニケーション能力など、同僚として働くに値するかどうかが審査されているのです。もちろん緊張するとは思いますが、細かな所作まで見られていることを自覚して面接に臨みましょう。

6.結果を待つ、届く

 ここでまたつらい時間です。ひたすら面接結果を待ちます。早ければその日のうちに連絡がくると聞きますが、私の場合は1~2週間待ちました。本当に大学によってまちまちです。通知方法も大学によって違うとは思いますが、私含め周囲は、電話で採用通知→書面送付の流れです。
 吉報であれば歓喜ですね。新生活に胸躍らせながら、新年度の準備にとりかかりましょう。お祈りであれば、次です。ただ、面接で不合格の場合は反省会を開いた方がよいかと思います。少なくとも、自分より人格的に魅力的な人がいたという事実から目を背けず、どのような点が至らなかったのかを考察しておいた方が次につながります。業績的には面接によばれるレベルに達しているのですから、次の面接は確実にものにできるよう、いいステップ台にしましょう。

7.さいごに

 大学教員になるには、たいていの場合上記のプロセスを辿ることになります。ほぼ例外はないといってよいでしょう。大学教員になったとしても、給与や職場環境によりホワイトだったりブラックだったりします。しかしそれ以前に、大学教員としてきちんと食っていけるかどうかが重要であり、研究者として職を得られるかどうかは天国と地獄の分かれ目です。
 拙い私の記事ですが、少しでも皆様の参考になれば幸いです。
 

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