2020年度の妊娠届出数及び人工妊娠中絶数の状況

以前、拙稿「気になる統計 新型コロナウイルスの流行による少子化への影響」で取り上げた妊娠届出数の続報が5月26日に厚生労働省から公表されていました。同時に人工妊娠中絶数の状況も公表されています。それぞれ公表資料にグラフが掲載されているので引用します(引用元「令和2年度の妊娠届出数の状況について 」「令和2年度の人工妊娠中絶数の状況について 」)。

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両者を見くらべると多少形は違いますが、どちらも昨年5月から低下して10月頃までいったん上がり11月にまた下がるものの12月には2019年に近い数字まで上がっています。妊娠届出数は人工妊娠中絶数より1か月分公表が先行しているので本年1月の数値も出ていますがこれは再び大きく低下してしまっています。

両者がおおむね似たような増減の傾向を示しているのは実際の妊娠数が減っているからだと思われます。昨年の夏から秋にかけてはコロナ感染がおさまって消費なども戻ってきていましたが冬になると再び感染が拡大して現在に至ります。そうした感染の状況がちょっと遅れてこのグラフに現れているのでしょう。実際に妊娠した時期と届け出の日の間にタイムラグがあるためです。自粛の程度が強まると妊娠数も減ってしまうという相関関係がかなりはっきり表れているのではないでしょうか。

そうであるなら今月までの状況を考えると現在の妊娠届出数も低調になっている可能性が高く、その結果2021年の出生数は2020年よりもさらに減ってしまうことが危惧されます。今年度に生まれてくる子供の数は現時点でほぼ決まってしまっているからです。

他方、5月25日には同じく厚生労働省において「地域における保育所・保育士等の在り方に関する検討会」が開催されました。同検討会に提出された資料によると2025年に保育所の利用児童数がピークを迎えるとされています。その資料から該当ページを引用します。

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注釈によるとこの試算の前提として国立社会保障・人口問題研究所による0~5歳人口の推計値を用いているようですがコロナ禍の影響によりどうみても実際の数が推計値を下回りそうな気がします。コロナ禍により待機児童の解消時期が思いがけない形で早まるかもしれません。

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