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墨のアートでハートを鷲掴みされてしまった。書家 金敷駸房(かなしき しんぼう)さん

私はある雑誌でさまざまなアーティストやアスリートへのインタビューを担当していた。残念ながら、廃刊になってしまったけれど。

 書家であり、墨のアーティストである金敷駸房さんには2度取材させていただいている。最初は2014年、2度目は2019年だった。

 金敷さんは書の世界で大活躍している注目の方で、書家の友人が大推薦する方だった。彼は書によるアーティフィシャルな個展を何度も開催されている。仕事としては、NHKの大河ドラマや朝ドラの中に出てくる手紙なども、金敷さんの筆によるものだ。ま、これは彼のほんの一面に過ぎないけれど。

3メートルの文字が空を舞った

 取材の最初の回では、墨を含むと30キロにもなる長く太い毛筆で、巨大な和紙に「道」という文字を一気に書いてもらった。長身でイケメンの金敷さんが発する息遣いと筆の音が大ホールに響く。ほぼ3メートルもある文字は紙の上にとどまらず、まるで空間に舞い上がるように見えた。もうカッコよすぎて、うっとりな記憶がよみがえる。

豆腐にイカ墨で書いた生の作品

 2度目はなんと豆腐にイカ墨で「心」という文字を書いてもらうという遊びに挑んでもらった。お弟子さんたちが取り寄せたさまざまな豆腐に次々と試し書き。「イカ墨だから、食べられるね」とみんなで笑う楽しい時間だった。生まれたのは、それはそれは美しくユニークな作品で、保存できないのが残念で仕方がなかった。なんせ豆腐とイカ墨は、生ですから。

作品の前で立ち尽くす

金敷さんは単に墨を使っているだけのアーティストではない。古典を学ぶ文字のプロ。墨と文字で、黒と白の世界を切り拓く書家でありアーティストなのだ。

 昨年は東急文化村で開かれた個展も作品の前で息を呑んだ。ギャラリーの壁一面に描かれた圧巻の書や小さな額の中のユーモア溢れる文字に、目は釘付け、心臓は鷲掴み。しばし呆然とするほどだった。

 金敷さんの書の大ファンとなった私は、ここ数年、すっかり親しくさせていただいている。私のジャズライブにまできていただけるほどに。

 ファンだけれど書には門外漢の私。それがなんと、次に創られる金敷さんの作品集に私の文章を載せていただくことになったのだ。思ってもいなかったことで、まさにライター冥利につきるとはこのこと。
 あー、すみません。またプチ自慢してしまいました。




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