「 未定 」#45 One page of my heart


 イズコは『幻惑の森』で『金の苺』を見つけることに失敗した、その時に銀の鬼の追手にひどい傷を負わされ、ソイールの街の前で倒れているところを発見された。今は宿屋の『ミノン』で療養している。肉体的なダメージは療養所での治療と時間の経過による自己治癒力で回復はしたものの精神面での状態異常から抜け出せないようである。それだけ『銀の鬼』による攻撃が大きな影響を及ぼしているのだろう。一日中部屋のベッドで横たわりうつろな目で空中をみていて殆ど動かないらしい。宿屋の代金はしばらく滞在してもお釣りがくるくらいに支払っているらしいが、友人のバッセーロからの依頼の金があるからだろう。
 痩せっぽちのスネアは情報をどこからか仕入れることに長けている。以前に情報屋に雇われていたことがあったらしい。彼は酒場『エロイーズ』でイズコに関する情報をブローボに伝えていた。

「なあ、ブローボ、2杯目もいいかい。エール酒もいいけどワインはうまいねえ。いや情報を持ってると飲み代に困らないや」饒舌にスネアは語る。

「ああ、飲んでくれ、ソーセージも食べるかい?」

「ありがてえ」

「奴には関わらないほうがいいよ。『銀の鬼』のお気に入りの家畜なっている。という事はだ、独占するために奴に近づく人間には危害が加えられるということだ。放牧している家畜みたいなものさ」腹を擦りながらグストフは口を挟んだ。

「あ〜ところでスネアよ、頼みがあるんだ。幻惑の森に金の苺を探すためのパーティーを組みたい。イズコをパーティーの一員としてスカウトしてきてくれ」ブローボはスネアにそう話した。

「ぶっ、、な、なんだって~〜!!!」
スネアは飲んでいたワインを吹き出した。
「その依頼はワインやソーセージより高くつくからね、、、」

翌日。
スネアはイズコのもとを訪れブローボの依頼を伝えた。イズコは上半身を起こし反応があったものの、何も言わずにバタリと再びベッドに横になり眠り込んでしまった。

2日目
スネアは再びイズコの元を訪れ金の苺を探すパーティーに参加するよう促す。イズコは首を縦に振ったものの視線は中を見たままで精気がなかった。
「わかった、、、」その一言のみしかない。

3日目
スネアが数匹のバトルビートルに襲われた。大きな怪我はなかったようだが彼にこれ以上の負担はかけられない、ブローボはそう思った。

4日目
ブローボは宿やミノンの前に来てイズコの部屋の前と思われる前で大きな声で話した。
「いや〜冒険者なら夢や目標は諦めちゃだめだよなぁ〜〜。夢っていいよなぁ〜〜。そうそう、俺も今目標あってさ〜〜苺たらふく食いてぇなぁ〜〜苺、苺!!」
なんの反応もない。

5日目
ブローボは再び宿屋の前に立っていた。
手に大きな石を持ちイズコの部屋の窓にそれを投げつけた。
窓が石によって割られ大きな音が響く。

「ごらぁ、いつまで寝とんだぁぁぁぁ!!!このイカサマの魔術師がぁ〜!とっとと起きねえとぶっ殺すぞ!!俺はなあ、この俺は、こうみえてもパーティーの仲間を置いてけぼりにしないで、いつまでも待ち続けるのが信条なんじゃい〜!早く集まらんかこのボケがぁ〜!!!」
大音響で響き渡るブローボの怒鳴り声。

窓が割られた穴より光が見えた。その瞬間大きな火球がブローボめがけて飛んできて爆発をした。ブローボのくしゃくしゃの髪の毛がより縮れて逆立ち、顔がすすで真っ黒になっている。

「何すんだぁ〜この野郎っ〜!!」
怒りに満ちた顔で窓から姿を表したイズコ。
なんと無謀な奴、、、こんなこと言うやつはお前が初めてだ・・・
その目には薄っすらと涙が浮かんでいた。


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