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知っているからできるとはかぎらない。

前回のブログで書いたアスベストで思い出したローマ帝国の鉛中毒。その昔、「これは便利だなあ」と広く使われていたけれど、当時はもちろんその害なんて分かっていなかった、という共通点。

ローマ帝国と鉛は深い関係がある。

鉛がローマ帝国の滅亡に寄与したのではないか、と言う人もいるくらい。鉛は柔らかくて加工しやすいので、理想的な建築資材として当時ローマ中の建築物に広く使用されました。家庭でも、鍋や保存容器、雨どい、水道管まで鉛を使っていました。実際に、ローマに引き込まれた全長420キロ以上の11本の水道は、ほとんどが鉛でつくられていました。

近年の科学的調査から、ローマ時代の鉛中毒はかなり深刻だったことが分かりました。イタリア全土の20ヶ所の遺跡の多くの人骨を調べた研究では、ローマ時代の人骨には、それ以前の人骨に比べて最大10倍もの鉛が含まれていました。そして、ローマ帝国が滅亡した後の人骨を調べると、鉛の濃度は正常値に戻っていました。

そりゃそうだよね。

鉛の水道管を通ってくる水を毎日飲み、鉛の鍋を使って料理をつくり、鉛の容器で保存していたんだもの。中でも当時人気のあった食べ物が、ぶどうを煮詰めたデフルトゥムと呼ばれるもの。鉛の鍋を使って、ぶどう果汁をぐつぐつと煮込んでいたわけです。

でも当時の人たちは、鉛の害について気づいていなかったようです。鉛中毒は、痛風や不妊、記憶障害を引き起こす。そして怖いのは、ついには精神に異常をきたしてしまう。確かにローマ帝国には、だいぶ頭狂ってるなあというような皇帝のエピソードも残っている。

人々がじわじわと精神異常をきたしていく国、というのを想像するとかなり怖いですね。


結局のところ、後からになってみないと分からないことってたくさんある。でもこの現代を生きる私たちのことを顧みてみれば、体に悪いと分かっていても、やめられないことだっていっぱいある

その昔は自然の中でとれるものを丸ごと食べていたのに、今の時代、加工食品食べ過ぎだし、砂糖も摂りすぎ、スマホ見すぎ、夜更かししすぎ。タバコだって良くないと分かっていてもやめられない人はたくさんいる。

だから私たちは、知っているからできるとは限らない悪いと分かっていても、ついつい誘惑に負けてしまうのが人間なんだ

私たちだってそのうち後世の人たちに、「あの当時は、タバコを吸ったりお酒をたらふく飲んだりしていたんだって。まったく信じられないね」と言われる時がくるかもしれないですね。

夜ピアノを弾くときにワインを飲みたくなる・・・

分かっちゃいるけどやめられないことってありますか?


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