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プロダクトライフサイクルから考えるBtoB運用型広告の基本戦略とは?

BtoBにはBtoBなりの運用型広告のやり方が存在します。

今回はプロダクトライフサイクルから考えるBtoB運用型広告の基本戦略とは?と題して、導入期のサービスとそれ以降のサービスの運用型広告の基本戦略について触れいたいと思います。

こんな方にはピッタリな内容です。
・BtoB向けの運用型広告に取り組みたい
・スタートアップでBtoB向けサービスを展開している
・BtoBの運用型広告をしているが成果がイマイチ

コンパクトにしようとしたら文字数が5,000文字超えてしまったので(涙)
少し長いですが、最後までお読みいただけますと幸いです。

サービスのカテゴリーは検索されるのか?されないのか?まずはプロダクトライフから考える

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プロダクトライフサイクル(PLC)とは? 成長フェーズに適したマーケティング施策を解説より引用

プロダクトライフについて話すと長くなるので割愛しますが、
要するにあなたのサービスのカテゴリーは検索されるのか?されないのか?という所がまずはポイントになります。

導入期であれば、カテゴリーの認知が低いので検索数も少ないいだろうし、成長期や成熟期になればカテゴリー認知も上がり検索数も多くなることが多いです。

具体的な例で考えてみましょう。まずはカテゴリーが検索されるサービスについてです。

例えば、請求書作成のSaasを提供しているとしましょう。「請求書作成ツール」や「請求書発行システム」といったワードで一定数の検索があるので検索広告の優先度が上がりますね。

他にも同じようなサービスを提供している企業も多いので市場自体も成長あるいは成熟期に近いのではないでしょうか?

逆にカテゴリーが検索されないサービスとはどんなものでしょうか
カンタンに表現するとスタートアップが始めた新しいサービスなどが当てはまるでしょう。
新しいジャンルのため、そのサービスのカテゴリー名が市場に認知されていないので検索すらもされない状況です。しかし、課題やニーズなどはあるケースもあります。

smartHRの事例から考えてみましょう。
2015年ごろにSmartHRはリリースされていますが、初期ユーザーはFacebook広告を活用して獲得したそうです。

例えば、先ほど話したSaaSの比較サイトは、自分たちが机上の空論で設定したユーザー課題を基に開発していたので、ユーザーのニーズに関して聞かれても、「こういうニーズがあると思います」という想定でしか話せませんでした。そこで、いざユーザーヒアリングを行ってみたところ、課題そのものが存在していないことがわかったといいます。その反省を活かして『SmartHR』を企画した際は、Facebookで人事・労務の担当者にターゲティングした事前登録用の広告を出しました。予算2万円で。まだプロトタイプすらできていないときだったんですが、広告を止めてからもクチコミで登録が増え続け、1ヶ月で200名くらい集まりました。チャットツール経由でのアクセスが多いことから情報がシェアされていることがわかり、「それだけ世の中に求められているサービスなんだ」と、ユーザーニーズがあることを確信しました。
引用元:「現場が語る、BtoBマーケの最前線~人が欲しいと思うものを、まずつくる~株式会社SmartHR 宮田社長の視点」

今でこそ、様々なプレイヤーがSaas型の人事労務ソフトを提供していますが、当時はまだプレイヤーが少なく、人事労務ソフトの検索数も多くなかったと思います。直近だと人事労務ソフトなどで検索して探す人も増えていると思いますが、当時は検索も多くなかったのでFacebook広告をうまく活用してリードを増やしていたのでしょう。


このように検索されるサービスであればまず検索広告から始めた方が良いですし、されないのであれば、Facebook広告などを活用した方がいいでしょう。後ほど、カテゴリーが検索されるサービスとされないサービスごとでの運用型広告の優先順位は記載します。

CACは上がり続ける傾向にある

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CAC(カスタマーアクイジションコスト|顧客獲得までに要したコスト)は顧客層を広げれば広げる程、高くなる傾向にあります。そのことを分かりやすく、記載しているのが上記の北の達人コーポレーションさんの決算資料です。「2021年2月期 決算説明会資料」より引用しています。

プロダクトライフと近い部分もありますが、市場がまだ初期状態で他社の競合もいない&目新しいものにチャレンジしたい顧客が獲得でき、初期のCACは低くなる傾向にあります。しかし、市場が認知され他社が参入してくると、広告費も高くなりCACは自ずと高くなります。

広告媒体のCPCは上昇傾向

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https://www.karooya.com/blog/google-ads-benchmark-report-by-tinuiti-q2-2021-key-highlights/より引用

米国を拠点とするデジタルマーケティングエージェンシーであるTinuitiが出したレポートですが、Google広告においてCPCがY/Yで+36%も上昇しています。

運用型広告は少ない金額から出稿ができますが、CPCやCPMが年々上がってきています。運用型広告に取り組む企業が増えているからこそ、起きていると私は考えており、CPCが上昇すれば自ずとCACも上昇してくることが多いでしょう。

長期的にBtoBマーケティングを成功させるにはLTVをいかにして上げていくか?

CACは広告を始めたころから上がり続ける傾向にあり、劇的に下げることは中々、難しいものです。一方、BtoB企業として他の部分で努力できるのがLTVを最大化することじゃないでしょうか。

LTVが増えれば、リード獲得に対する許容のCPAが上げられて、運用型広告において他社よりも強気に入札を上げられます。さらに、タクシー広告やカンファレンス開催やセミナーなど他のマーケティング施策にも踏む切れるでしょう。

今回はあくまでも運用型広告の基本戦略ですのでLTVの話は深く触れませんが、いずれにせよ他社よりも強いマーケティング施策を実施する上でLTVの最大化は避けては通れないことでしょう。

では、カテゴリーが検索されるサービスとそうではないサービスごとの運用型広告の優先順位について触れたいと思います。

検索されるサービスのBtoB運用型広告の優先順位

結論から話すと以下の順番で進めていくことが多いです。

検索連動型広告
主要媒体でリマーケティング配信
Facebook広告(リード獲得広告)
各種ディスプレイやSNS広告でWPで新規リード獲得

なぜ、この順番が良いのか?を以下に記載していきます。
まずは顕在層が拾えるリスティングから実施
まずやるべきは顕在層にアプローチできる検索広告です。

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BtoBマーケティングとは?BtoCとの違いや重要性、プロセスについて解説より画像を引用

こちらの図にもある通り、現在のBtoB購買行動において、営業マンに聞くより事前に情報収集をして予め、検討をつけてからお問い合わせをすることがほとんどです。

また、BtoBはBtoCと違い、TwitterやInstagram上で情報が落ちていることが非常に少ないです。BtoCであれば商品名でSNSで検索すれば出てくることが多いですがBtoBでは少ないでしょう。

そのため、主な情報収集元が検索エンジンになることが多く、検索広告はBtoBマーケティングにおいて主戦場になることが多いと考えています。(ターゲットする業態などにも異なることが多い。ターゲットがインターネットを使い情報収集しない業界であれば異なる。)

さらに、検索広告の一番のメリットが商材を探している、課題を解決したい人に広告を当てられることです
CRMを提供している企業であれば「CRM 比較」「CRM 導入」「CRMおススメ」などのキーワードに出稿すれば、CRMを比較検討探している人に広告を出すことが出来ます。

このようなCVRの高そうなキーワードから出稿をすることをおすすめします。なお、これらのCVRが高そうなキーワードで配信してCVが取れない場合はLPやサービスの設計に問題があることも多いです。

検索広告は比較される広告です。特定の課題を解決するサービスを探していて、ドンピシャのキーワードに対して配信される広告ですので、それでCVRが悪いということはまず、LPなどの改善が求められます。

まさにバケツに穴が空いている状態で水を注いでも溜まらないように、ある程度のCVRが出る状態で運用型広告に取り組むことが重要です。

顕在層を網羅したらFacebook広告などのSNS広告を活用し潜在層を獲得

CVRが高いキーワードでの検索広告でやりきり、GDNやYDAでリマーケティング配信を行ったら次はSNS広告を攻めていきたい所です。

ただ、SNS広告は検索広告と同じような考えでは取り組んではいけません。なぜなら、SNS広告と検索広告ではユーザーのモチベーションが違います

SNS広告は、なんとなくFacebookやInstagramを見る中で気になるものをクリックして見ている状態です。課題を解決するべく検索したり、探し物をして検索したりしている時と比べるとユーザーのモチベーションが検索広告より劣ることが多いです。

そのため、SNS広告で問い合わせやサービスの資料請求を狙うというよりは、お役立ち資料請求やセミナーなどのハードルの低いCVポイントを設けて、リード獲得に振り切った方が良いケースが多いです。

ここまでは大枠の優先順位について触れたので、以下からは優先順位ごとに各媒体について注意点などを記載していきます。

検索連動型広告

先にも述べた通り、CVRが高いであろうキーワードから優先的に配信していきたい所。
その他にも以下の部分は注意したいですね。
・配信時間帯を業務時間帯に
・デバイスはPC中心
・自社の商圏内で配信
・法人用と分かるような広告文

以下の記事がコンパクトにまとまっているので参考にしていただくといいかもです。
BtoB向けの検索連動型広告で成果を出すために注意したい3つのポイント
また、上記以外にもポイントがありますが、記載すると長くなってしまうので今回は割愛します。

私の肌感覚的な所でCPCの相場や商材にもよりますが、資料請求であれば1万~5万、問い合わせであれば10万前後などが相場かなと思います。

主要媒体でリマーケティング配信

GDN・YDAを中心としてリマーケティング配信を行いましょう。自社サイトに訪れてスグにコンバージョンに至らなかったが、数週間後や数か月後にお問い合わせや資料請求する方たちも沢山おります。

機会損失の無いように最低限リマーケティング配信は実施したいですね。
業種業態にもよりますが、ちゃんと運用調整を行っていればリマーケティング配信でCPA1万~3万円程度に収まることが多いかと思います

3万円を超えてくる場合はリマーケティングリストや配信手法、クリエイティブを見直した方が良いですね。

Facebook広告(リード獲得広告)

BtoBでFacebook広告を行う場合に真っ先に取り組んでもらいたいのがリード獲得広告という配信メニューです。

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https://digitalidentity.co.jp/blog/ad/facebookleadad.htmlより引用

通常のFacebook広告だと、クリエイティブをクリックすると指定のLPに遷移しますが、こちらのメニューはFacebook内で問い合わせ完了が完結します。そのため、通常の配信よりもCVRが高まり、CPAが通常配信の3/1や2/1になるケースが多いです。

以外に取り組まれていない企業も多く、利用すると、ほとんどの企業でCPAが下がる為、私がBtoB企業のFacebook広告運用を行う時に必ずと言っていいほど提案するメニューです。

リード獲得配信×ホワイトペーパーなどのお役立ち資料であればCPA3,000円~10,000円程度で取れることも多く、セミナー集客もこのリード獲得配信でも獲得できることが多いです。CPAもピンキリですが無料セミナーでコンテンツが良ければ5,000~15,000円くらい。

ただ、デメリットとして、問い合わせや申込情報がFacebook広告内に蓄積されるため、サンクスメールを送るように手間がかかったり、CVRが高くなる分、リードの質が落ちたりがあります。リードの質や業務フローについては解決策があるのでまた、別の記事で紹介しますが、BtoBであれば必ずと言っていいほど取り組んだ方がいい配信メニューです。

各種ディスプレイやSNS広告でWPで新規リード獲得

Facebook広告をやり切ったら他の媒体にも広げていくのも検討してみましょう。
SNS広告であれば以下を検討するのがおススメです。
・LinkedIn
・Wantedly Ads
・EightAds
・LINE広告
・Twitter広告

基本ホワイトペーパー配信であれば上記の媒体でも獲得が期待できるでしょう。ただ、各媒体の特色を抑える必要があります。

新規向けのSNS広告と並行してBtoB特有のターゲティングができる媒体などもあるのでそれらの媒体も検討してもいいですね。具体的には以下です。
シラレル
アドマトリックスDSP

IPアドレスやEightの名刺情報など様々なデータベースと連携してディスプレイ広告面に広告を出せるのがこれらのDSPの特徴です。

検索されないサービスのBtoB運用型広告の優先順位

検索広告よりもFacebook広告の優先度があがります。それ以降は一緒なので割愛します。
1.Facebook広告
2.検索広告

Facebook広告

なぜ、Facebook広告から始めるかというとターゲティング精度が優れているからです。
人事関連に興味がある人をターゲティングしたりできるのも、もちろんですが、Facebook広告の真髄はクリエイティブやLPでターゲティングができる部分にあります。

クリエイティブやLPでターゲティングできるなど、Facebook広告のヘルプには特に記載は無く、運用していての肌感覚になります。(笑)

ただ、数値にも明確に現れる部分があります。具体的にはノンターゲで広告グループを作り、広告を3~5つ入稿。そして、広告を1つずつonにして配信してみると、CPMが変わってきます。

例えば、「請求書作成ツールです。」みたいなクリエイティブを使った場合、CPMが高くなることが多いです。僕の中での考えだと、CPMが高い=狭いターゲットに配信されている。と考えています。つまり、請求書作成ツールに興味があるシグナルを発している人にでていると思っています。これらのシグナルを発信しているのは少ないため自ずとCPMが高くなります。

他にも「経理業務を効率化するTips」みたいなクリエイティブにするとCPMは安くなります。請求書作成ツールに興味ある人から対象ユーザー層が広くなるからですね。

Facebook広告はターゲティングが優秀なのでこんな感じで、クリエイティブとLPに合わせてターゲティングしてくれることを考えて、事前にターゲティングの設定をしないで配信することも増えています。

しかしながら、類似オーディエンスもかなり優秀なので活用はします
顧客リストを沢山保有している企業であれば積極的に使ってください。

話が長くなってしまいましたが、検索で顕在層を狙えない場合はFacebook広告を活用してターゲット層が反応しそうなクリエイティブ&LPでうまく狙っていくことが必要になるかと考えています。

ただ、ターゲット層がSNSを使わない層やFacebook広告では拾えないシグナルがある(広告媒体上のシグナルについては長くなるので別のテーマで記載予定)場合はFacebook広告でもターゲティングが難しく、そもそもWebでリードを取れるビジネスでは無いかもしれないですね。

さらに、Facebook広告なので検索広告よりはモチベーションが劣るのでCVポイントはお問い合わせなどよりも資料請求などハードルの低い方がCVRが高くなるので良いです。

検索広告

カテゴリーが検索されないサービスは検索で攻めていくのが難しいです。なぜなら検索がされないのでそもそものアプローチが出来ないからです。

しかし、だからと言ってお手上げなのか?そういう訳ではなく、打ち手はあります。
まず取り組みたい打ち手としては、同じジョブを解決する別手段のカテゴリーや商品の検索に広告を出すことです。(ジョブとは解決したい困りごとで定義します)

クラウドソーシングサービスを具体例に上げて考えてみましょう。
今ではリソースが足りない場合はクラウドソーシングサービスを使い、スポットでフリーランスや主婦の方に仕事を依頼するのが当たり前になってきています。

しかし、クラウドソーシングサービスが日本に登場したのは2008年ごろらしいですが、当時は「クラウドソーシングサイトおすすめ」「クラウドソーシング依頼」「業務委託依頼」「フリーランス依頼」などのキーワードでの検索も少なかったかと思います。

そのため、クラウドソーシングサイトが解決できるジョブを別手段で探している人をターゲットにして広告を配信するというやり方を取る必要があります。

クラウドソーシングサービスで解決できるジョブは、リソース不足を解消し仕事を円滑に進め、売上アップやコスト削減をするといった所でしょうか。

そうであれば、「デザイナー採用」「事務採用」「データ処理採用」など採用をしてリソースを解消仕様としている人たちに対して「採用ではなくフリーランス依頼してコスト削減」など検索広告を出してコンバージョンを狙っていくやり方もあります。

あくまでも一例ではありますが、要するに解決できるジョブの別手段からスイッチできないか?という発想で検索広告を利用します。

ただ、この場合の配信手法として注意することがLP上のコミュニケーション設計です。スイッチをする手段に対しての優位性をLP内で伝えるコミュニケーションが無いと、スイッチが出来ないので、LPの構成をしっかりと作る必要がありますね。

番外編|CVポイントの設計してから配信がおススメ

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https://sairu.co.jp/method/btob-marketing/003より引用

本記事の中で、SNS広告はCVのハードルの低いものが良い。だったり、問い合わせ以外にも資料請求を設けた方がいい。などの記載がありましたが、運用型広告を始める前にCVポイントの設計を行ってから配信した方がいいです。

なぜなら、CVポイントがお問い合わせだけだと、ハードルが低く、CVRが低くなるためCPAが高くなってしまうからです。お問い合わせ以外にも資料請求を設けると、CVRが上がりCPAが下がりCV数が増加します。

BtoBの場合は検討期間が長いため、情報収集をする上でまずは、資料請求をしたいということが多いです。いきなりお問い合わせすることは珍しいのではないでしょうか。

こんな形でCVポイントを複数用意することが必要になりますが、CVポイントの設計ついてはサイルさんが詳しく解説してくれていますし、僕も運用型広告の観点からCVポイントの設計についてはまた、別の機会にお話したいと思います。

まとめ|型はあるがプロダクトに合わせて優先順位を変えていく必要がある

今回はプロダクトライフサイクルから考えるBtoB運用型広告の基本戦略と題して、導入期のサービスとそれ以降のサービスの運用型広告の優先順位について記載をしてみました。

これらは1つの考え方の参考にしてもらえれば幸いです。というのも全てのサービスがこちらに当てはまるわけでもないですし、色んな変数がある訳です。自社に活かすとなった場合、会社ごとや市場、顧客ごとにローカライズしていく必要があるかと思います。

その際に基準になる考え方や型があると、思考しやすいので参考になったら嬉しいですし、自社に活かす場合どうすればいいのか?など質問をもらえたら嬉しいです。


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