【トリテ】ビッド、ビット、ベット【ファミコン】─用語をめぐる冒険─
びーていると申します。普段はtwitterでボドゲ関連のもろもろをリツイートしたりしております。この記事は春99さんが主催されている「ボードゲームに関わるエトセトラ Advent Calendar 2022」の5日目向けに作成しました。
ちなみに昨日のアドベントカレンダー4日目の記事はドミッチさんの創作トランプゲーム「インタラクション」の紹介でした。タイトル通りのインタラクション強めのゲームで、各プレイヤーの得点可能状況を見ながらのじりじりとした駆け引きが面白そうです。
さて、今回記事のテーマはタイトルにもなってる用語「ビッド、ビット、ベット」。実は私、トリックテイキング(トリテ)の「ビッド」のことを「ビット」って言ってるのを見ると気になってしまうのです。
まあ、「ビッド」を「ビット」と言ったところでフツーは文脈から意味が分かるので問題ないといえばないのですが…。
今回はこの2つの用語にさらに語感の似た「ベット」も交えて色々とつらつら綴ってみようと思います。
ビッド (bid) ─トリックテイキング用語─
トリテのビッド
って訳でトリテのアレはビッ「ド」。単にトリック数で勝敗が決まると手札運に左右され過ぎるとこを補うルールですね。敢えてトリック落としたい時が出てきたり、勝敗を見据えて他人の手札をコントロールしたり…という個人的に感じる「トリテらしさ」ができる要因になってる気がします。
入札のビッド
このビッド(bid)、もともとは「賭ける」とか「予想する」みたいな意味ではなかったりします。
そんな訳でビッド、元は競り(オークション)用語なのでした。ボドゲだとスカウトのワンモアゲームさんの競りゲー「ビッダーズ!」のタイトルなんかでそちらの意味で使われてますね。
ちなみにこの「ビッダーズ!」、最近海外のパブリッシャーさんからリメイク版「レピュテーション」のkickstarterでのCFがありました。記事執筆の2022 12/5時点でもまだレイトプレッジ可能みたいです。
トリテと入札の間に
トリテのビッドと入札のビッドにどんな関係が…という点については、例えば以下の記事で考察・説明がなされてます。
元はトリックテイキングのビッドに競り落としの要素があったってことみたいですね。勉強になるなあ。
ビット (bit) ─コンピュータ用語─
0と1のビット
そんな訳で、ビッ「ト」(bit)は「二進数を表現する数字 (1 or 0) 」だとか「何桁の二進数で表せるか?的な感じのデータの大きさの単位」という意味のコンピュータ用語であったりします。
なので「ビット」という語は通常、「ビッド」の誤記以外ではなかなかボドゲ関係の文面には出てきません。ですが、せっかくですから今回は敢えて「ビット」絡みのボードゲームもちょっと見てみましょう。
ビットの名を持つゲーム
まずは8ビットトリック、8ビットモックアップ、8BIT BOXなど、「8bit」と題されたゲーム群。レトロゲームやそのドット絵を意識したゲームに「8bit」の名が冠されるようです。8bitといえばファミコンですからね。
特に8ビットトリックが興味深い。トリックを取ることで獲得できるキューブ「ビット」を8個集めなければならない、でも集めすぎは減点…と、敢えて「ビッド」と「ビット」をかけたかのような趣向となっています。
他にビットが名前に入っているゲームを探すと、クニツィアさんのビット(Bits)というのがあったりします(参考:「ふうかのボードゲーム日記」さんの記事)。あんまりビットっぽくはないかな。ドット絵モチーフっぽくはありますが。
あとゲットビット! (Get Bit!)ってのもありますがこちらはサメゲー。このBit、0と1のbitではなく「噛む (bite)」から派生した用法ですね…。タイトル和訳すると差し詰め「噛まれるっ!」となるでしょうか。こんな場合もあると。
二進数のゲーム
次に二進数を扱うボードゲームを見てみます。ある意味こっちの方が本家「ビットのゲーム」と言えるかもしれない。
国内のゲームを見てみると、二進数と論理演算がテーマのbinary(バイナリィ)やXORIO(エクソリオ)というゲームがあったりします。変わり種ではトランプの表記を二進数にしたバイナリートランプなんてものも。
ただ、あんまり数はないですね…。BGGで二進数を意味するbinaryで検索してみてもあまり引っかからないところを見ても、二進数はボードゲームのテーマとしてはマニアックすぎるのかもしれません。
なぜ誤記るのか ─ ビットは遠くになりにけり
ここで「ビッド」を「ビット」と書いちゃう問題に立ち戻るのですが、「ビット」って用語が身近ではなくなったことが一因な気がします。
昔のキッズ、ゲーム機の演算ビット数を諳んじられたものでした。ファミコンは8bit、スーファミは16bit、プレステやセガサターンは32bit…みたいに。でも今はSwitchやPS5の演算ビット数知ってる人ほとんどいないですよね。
仮想通貨ビットコインなんてのもありますが、それでも「ビット」は人の肌感からちょっと遠い言葉になってしまった。それがなんとなく誤用される原因なのかなー、と思ったりするわけです。
ベット (bet) ─ギャンブル用語─
賭けのベット
と、いう訳でベットは「賭け」を表す用語です。ビッドとの違いですが…だいたい以下のような感じでしょうか。
(1) 賭けの対象
ビッドはあくまでトリテ用語で自身のトリック数のみが賭け対象。ベットはもっと広範な賭け一般を表す用語で、他者の結果も賭けの対象になる(競馬など)。
(2) 賭け金の要素
ベットでは「賭け金」の要素がある場合が多い。ビッドにはその要素はない場合が多い。
ちなみに「ゲームメカニクス大全」では253ページで「UNC-01:ベットとブラフ」としてベットに触れられています。…が、タイトルの通りブラフと抱き合わせにされてるうえに触れられてる内容もブラフのほうがメインだという。(ちなみにビッドについてはこの項目と517ページの「CAR-01:トリックテイキング」でちょびっと触れられてる)
ベット要素のあるゲーム
ここで、いくつかBGGのゲーム説明文に「bet」を含むゲームを見てみましょう。見事なまでにギャンブルゲーばかりでなんとなく感じがつかめます。
ベットの新潮流
近年ポーカーやそのオンラインゲームであるポーカーチェイスが盛んになってきており、今後ポーカー的な要素―ベットとかも―を取り入れたボードゲームが来る気が個人的にはしています。そんな訳で、ベット的な要素の入れ方が新しい気がするゲームを3つほど紹介。
OPEN
スートありマストフォローな大富豪。一部公開の手札から「誰が勝つか」を予想したベットでも得点可能。意外性ある人に賭けて勝たせるのが肝要。「他プレイヤーにベットする」要素を入れることでキングメイクもゲーム性として取り込んだ感じになってるのも興味深いところです。
ウォンテッド★ウォンバット
手番で次めくるカードが$1,000〜$10,000のどれなのかにベット。当たればそのカードがもらえる…という坊主めくり系ギャンブルゲーム。
・見事当てたら連チャン可能(外せばドボンで1枚ももらえない)
・$1,000を3つ集めたら5千換算 → 連続して$1,000に賭けたくなる
・$10,000のみ外しても山札に戻る→終盤は大当たり$10,000の確率UP
と欲張ってリスク取りたくなる仕掛けが多いのが秀逸。大きな賭けを当てての大騒ぎ/外しての阿鼻叫喚は、ベットの楽しみの大きな要素なのかも。
マーベル・スナップ
マーベルのアメコミヒーローを題材としたデジタルカードゲーム(DCG)。オンライン対戦ゲームは勝ち星をベットするゲームみたいなものですが、このゲームはそこにポーカーなどの「レイズ(賭け金上乗せ)」や「フォールド(勝負を降りる)」っぽい要素を入れることで独特の駆け引きが生まれています。
この辺については例えば以下のnote記事などが分かりやすい。
MARVEL SNAPはいかにして既存のデジタルカードゲームの課題を克服しようとしているのか
おわりに
そんな訳で「ビッド、ビット、ベット」にまつわるお話でした。……ビッドのことビットって書いちゃう人多いよねーというだけのお話だったのに随分と膨らんだものです。
ボードゲームに関わるエトセトラ Advent Calendar 2022、次回は…いまのところ9日目のSN DUCKさんの記事になるのかな?精力的にボードゲームのクラウドファンディング情報を発信されてるSN DUCKさんですが、どのような記事になるのでしょうか。※2022 12/9 SN DUCKさんの記事「石油がテーマの作品には名作しかない!(諸説あります)」がアップロードされました。なるほど、こう来ましたかー。
(12/5追記)……と思ったら、新たに7日目にべよさんの登録がありました。興味深い海外のボードゲーム関連コラムの翻訳記事を作成しているべよさんの今回の記事は「ルールの書き方・翻訳講座」とのことでこちらも楽しみです。
(12/7追記)さらに有名ボードゲームブログ「ニコボド」のニコさんが8日目に登録されました。タイトルは「Tabletopiaのすすめ」。オンラインテストプレイでよく聞くシステムのお話ということでこちらも楽しみですね。
(12/21追記)6日目にyskさんの記事「ボードゲームの英文ルールを手っ取り早く抄訳する一例」が追加されました。PDFの英文ルールをサクっとDeepLで翻訳する環境の構築について…ですね。
また、私は23日目も担当しており「再考・ラブコメ会 ─ラブコメもののボードゲームのメカニクスについて─」という記事を公開予定です。お楽しみに。
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