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聖学院高等学校Global Innovation ClassのSTEAM 教育インタビュー_02

生徒自らが課題を発見して学びを深めていく「探究学習」は、学校での学びにおいても重視されています。生徒主体の探究型教育を展開している聖学院中学校・高等学校(東京都北区)では、Science(科学)・ Technology(技術)•Engineering(工学・ものづくり)・Art(芸術・リベラルアーツ) •Mathematics(数学)の学問領域を横断的に学ぶ「STEAM教育」を実践中です。同校で2021年度より高校課程に開設された「Global Innovation Class」のSTEAM教育について、担当されている3名の先生に伺いました。

教育レポートの_01はこちらからご覧ください。

生徒たちを「思考」から解き放ち自分の感性を信じるきっかけを

ーー1学期の導入時期に実践している取り組 みの一例を教えてください。
伊藤:色や光の三原色などの色彩学を学んでから、自分たちで手作りした「テンペラ絵の具」で絵を描くというワークに取り組んでいます。テンペラ絵の具は、500年以上前の古典技法で、卵の黄身と顔料を混ぜて作る絵の具です。これまでチュープに入った絵の具しか見たことのなかった生徒たちにとって、実際に黄身や顔料の手ざわりを感じながら絵の具を作るというのは、ものづくりの原点を体験することでもあります。実は、私は美大の大学院時代、技法や材料の研究をしていたんですよ。自分の好きなテーマをきっかけに、色彩の豊かさを五感で感じてもらえたらと思って取り入れたのが、このワークです。

ーー生徒が自分の感性への理解や信頼を深 めるための取り組みとしては、どのようなこと をしているのですか?
佐藤:「色のかんかくストレッチ」というワークでは、身のまわりのさまざまな色を写真で集めて、そこから感じた印象をレポートにまとめます。たくさんの赤いものの写真が集まったときに、「どういう赤なのか」ごとに分類するように伝えると、最初は「食べ物の赤」「乗り物の赤」というように思考に基づいた分類をする生徒が多いんです。「そうではなくて、自分の感覚で分類して」と伝えると、生徒たちの多くは戸惑います。でも、「これは人を引きつける赤」「これは温かみを感じる赤」というように自分の感覚を言葉で表現して、それを友達に認めてもらう体験をすることで、「自分のこの感じ方でいいんだ」と思えるようになっていくんですね。当初の戸惑いが自分の感覚 への信頼に変わっていくプロセスは、見ている側としてもなかなか感動的ですよ。

「色のかんかくストレッチ」

ーーグループワークが多いとのことですが、 発言が控えめな生徒へのフォロ ーはどうしていますか?
伊藤:
主に二種類の対策をしていて、一つは生徒の性格に配慮したグループ編成をすること、もう一つはチームビルディングを最初に行うことです。導入時のチームビルディングでは、LEGO®ブロックを活用して、それぞれの生徒の価値観が分かる簡単なものづくりに取り組んでもらっています。この活動がアイスブレイクとなることで、その後のグループワークを進めやすくなります。
山本:授業ではいきなり大きな成果を求めずに、スモールステップで進めて、小さな成功体験を積み重ねてもらうことを意識しています。絵を描くのはハードルが高いと感じる生徒も、「写真を撮ってきて分類しよう」という提案にすれば取り組みやすくなりますよね。

LEGO®ブロックを活用して生徒の価値観をみる

ーー評価はどのようにしているのでしょうか?
佐藤
:評価基準を記載した表を用いて学習到達度を判定するルーブリック評価の手法を用いて、「目に見える形としての成果」と「できること」といった切り口で、「主体性」「思考カ・表現力」「知識・技能」といった評価の観点ごとに4段階で評価しています。それぞれの活動で到達してほしい「少しがんばれば達成できる」レベルを3に設定して、1と2は標準レベル、 4は特に優れているという評価になります。
伊藤:デザイン領域では、成果物に加えて制作過程も評価の対象にしています。なぜそのようなアウトプットになったのか、そこに至るまでの自分の内面の変化や工夫などを説明できる力があるかといったことも、評価の一つの指標になります。なお、あまりにも自由度が高すぎると評価が難しくなってしまうため、あらかじめ創作の形態を指定することも大切ですね。3学期に行う空間デザインに関しても 「40cm四方の板を3面つなぎ合わせたボックスを使って」という制約を課すことで、その範囲内での表現を促すようにしています。
山本:評価に関しては私たちなりにエ夫はしていますが、現在の方法が完璧なものかというと、そうではありません 。生徒の中には、制作活動には没頭するけれど活動報告のレポートを書くのは不得手といったタイプの生徒もいます。目に見える形としては表れない 生徒の内面の変化や学びといった部分を、どう評価につなげていくかは今後の課題です。

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山本周先生
2021年東京理科大学大学院理学研究科科学教育専攻修了。同年、聖学院中学校高等学校にて情報科専任教諭として採用。中学情報プログラミング、高校新クラスGICのSTEAM(高1デザイン・高2データサイエンス)授業カリキュラム開発・授業担当。「ニーズとチャンスが結び付くと人はテクノロジーの傍観者ではなく、主役になる」をモットーに日々活動。現在、情報科主任、校内FabLabの住人。2021年、LEGO® SERIOUS PLAY®メソッドと教材活用トレーニング修了認定ファシリテータ取得。

伊藤隆之先生
東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程油画技法材料研究室修了。聖学院中学校・高等学校美術科教諭。中高美術、及び高校グローバルイノベーションクラスのSTEAM、Projectの授業を担当。ゲーミフィケーションを教育に取り入れるなど、男子中学生のモチベーションを向上させるための褒賞のしくみとして「聖学院称号システム」を開発。また、視点の面白さを見つけるワークとして、生徒による「変な問題集」の作成。他、シルクスクリーンによるオリジナルTシャツづくりと販売、卵テンペラ実習など、教科専門性を活かした創作を指導。

佐藤充恵先生
東京農工大学大学院工学研究科生命工学専攻修士課程修了前任校 三田国際学園中学校高等学校(2013-2020)で理科主任を5年間務め、ICTを活用しながら生徒たちが自ら考えたくなる授業を推進。2020年度より聖学院中学校高等学校に入職、STEAM教育開発に携わる。校内研修ではICEモデルを校内に普及しながら、それぞれの教科独自の視点と教科を横断した学びの構築に挑戦中。日頃心がけているのは、思いついたことを口にすること。もやもやも大切な気づきであること。

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