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聖学院高等学校Global Innovation ClassのSTEAM教育インタビュー_01

生徒自らが課題を発見して学びを深めていく「探究学習」は、 学校での学びにおいても重視されています。生徒主体の探究型教育を展開している聖学院中学校・高等学校(東京都北区)では、 Science(科学)・ Technology(技術)•Engineering(工学・ものづくり)・Art(芸術・リベラルアーツ) •Mathematics(数学)の学問領域を横断的に学ぶ「STEAM教育」を実践中です。同校で2021年度より高校課程に開設された「Global Innovation Class」のSTEAM教育について、担当されている3名の先生に伺いました。

新たな価値を生み出し世界に貢献できる人を育てる

ーーGlobal Innovation Class(以下、GIC)の特色を教えてください。
山本周先生(以下、山本):GICは、探究型教育を実践することで、新たな価値を創造する 「ものづくり」「ことづくり」を通して世界に貢献できる人を育てるクラスです。一般教科に 加えて、ロジカルシンキング・クリティカルシンキングを学ぶ「リベラルアーツ」を土台として、 世界の社会課題を英語で学ぶ「Immersion」、 サイエンスとデザインを軸にICTスキルを活用しながら学ぶ「STEAM」、ゼミ形式で個別 に設定したテーマを研究する「PROJ ECT」の 3つを柱にした教育を展開しています。

ーーGICのSTEAM教育では、具体的にどのような教科に関連した授業を実施しているのですか?
山本:高1では「ものづくり」にフォ ーカスし、 デザイン(美術)・サイエンス(理科)・情報の3教科横断型の授業を実施しています。高2では「ことづくり」にフォーカスして、デザインの代わりにデータサイエンス(数学)を加えた3教科を軸に学びます。時間割は1週間あたり2時間続きの授業が3回の計6時間で、高1であれば美術・理科・情報のそれぞれを主軸とした授業を週に2時間ずつ展開しています。

まずツールありきではなく 全体のコンセプトを明確に

ーーSTEAM教育のカリキュラムを立ち上げ るにあたって重視したのは、どのようなことで しょうか?
伊藤隆之先生(以下、伊藤):GIC開設の前年度の時点で、コンセプトについては約 2 ヶ月かけて担当教員3人でじっくり話し合いました。本校のSTEAM教育は、生徒一人ひとりの自分らしさを最大化する手段として位置付けられるものであって、「テクノロジーを使って何かやりましょう」というものではないんですね。むしろ、まずはアナログな感性を大事にすることで「自分はどういう人間なのか」が見えてくる。デザインの領域では、「五感を使ってデザインしよう」というコンセプトを明確にして、山本先生と佐藤先生と共有することから始めました。
山本:今はパソコン上だけでもデザインを完結させることができる時代ですが、手ざわり感のある部分を大切にしようということは早い段階で決めていましたね。
佐藤充恵先生(以下、佐藤):体を使い、心が動き、見方が変わるというのが、 本校のSTEAM教育の根底にあるコンセプトです。心が動くというのは、ワクワクでもモヤモヤでもいいんです。失敗することで見えてくることもあります。まずはやってみよう、何かを感じてみよう、そしてその何かを感じ取った自分の感性を大事にしようということを生徒たちに伝えるという方針は、3教科共通の認識として当初から持っていました。

左から 佐藤充恵先生、伊藤隆之先生、山本周先生

ーー具体的なカリキュラムは、どのように組ん でいったのですか?
山本:高1ではデザイン領域を主軸に、1学期は切り絵アートなどの平面のデザインから始め、2学期にはボックスアートなどでレイヤー構造のある半立体のデザインにも挑戦し、3学期には空間デザインヘと少しずつデザインの範囲を広げていく方針を決めました。そして、それぞれのデザインに活かせるような体験や、あらゆる表現活動の基礎となる「自分の感性」への理解や信頼を深めるようなプログラムを、理科や情報の授業にも取り入れていくという手法を取りました。
佐藤:最初にコンセプトを明確にしていたので、教科ごとに具体的なカリキュラムを考える段階になっても混乱はなかったですね。3人の教員間での目線合わせをしたうえで、各自が得意な分野の取り組みを提案していくという 順序で進めたのが良かったと思います。
伊藤:大まかな道筋が決まった後の段階で、デジタルのものづくりに詳しい山本先生から「レーザーカッターや3Dプリンターを使えばこんな表現もできる」といった提案をもらって、さらに授業プランが膨らんでいきました。それぞれの教員の強みを活かすためにも、日頃から他教科の先生とコミュニケーションを取ることが大切だと思います。

デジタル機器を使った表現活動を取り入れる

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山本周先生
2021年東京理科大学大学院理学研究科科学教育専攻修了。同年、聖学院中学校高等学校にて情報科専任教諭として採用。中学情報プログラミング、高校新クラスGICのSTEAM(高1デザイン・高2データサイエンス)授業カリキュラム開発・授業担当。「ニーズとチャンスが結び付くと人はテクノロジーの傍観者ではなく、主役になる」をモットーに日々活動。現在、情報科主任、校内FabLabの住人。2021年、LEGO® SERIOUS PLAY®メソッドと教材活用トレーニング修了認定ファシリテータ取得。

伊藤隆之先生
東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程油画技法材料研究室修了。聖学院中学校・高等学校美術科教諭。中高美術、及び高校グローバルイノベーションクラスのSTEAM、Projectの授業を担当。ゲーミフィケーションを教育に取り入れるなど、男子中学生のモチベーションを向上させるための褒賞のしくみとして「聖学院称号システム」を開発。また、視点の面白さを見つけるワークとして、生徒による「変な問題集」の作成。他、シルクスクリーンによるオリジナルTシャツづくりと販売、卵テンペラ実習など、教科専門性を活かした創作を指導。

佐藤充恵先生
東京農工大学大学院工学研究科生命工学専攻修士課程修了前任校 三田国際学園中学校高等学校(2013-2020)で理科主任を5年間務め、ICTを活用しながら生徒たちが自ら考えたくなる授業を推進。2020年度より聖学院中学校高等学校に入職、STEAM教育開発に携わる。校内研修ではICEモデルを校内に普及しながら、それぞれの教科独自の視点と教科を横断した学びの構築に挑戦中。日頃心がけているのは、思いついたことを口にすること。もやもやも大切な気づきであること。

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