◇読書◇ドーン 平野啓一郎

この本は平野啓一郎氏が提案する「分人」という概念が全編を通してかなり色濃く出て来ていて、作中の中だけで理解するよりも予備知識として知っていてから読んだ方が作品に違和感なく入り込んでいける気がしたので、稚拙ながら少しまとめてみるので興味が湧いた方は是非、平野啓一郎作品を読んでみてください。

僕が平野啓一郎作品に興味を持ったのは、佐渡島庸平さんという編集者の方がSNSで「分人」という事を解説しながら平野さんの「ある男」という作品を紹介していたからで、基本的に僕は信頼している方が薦めていたものには時間の許す限り触れるようにしていて、佐渡島さんもその中の一人でそれが平野啓一郎作品との出会いでした。

「分人」というのは、人と人が接する時にそれぞれの人はその時に接している人との関係値でその時の自分が生まれて作り上げられていく、という考え方で、その「個人」が遭遇した場面毎に「分人」は生まれて成長、変化、融合したりしていくのです。具体的にすると、「あなた」が会社や仕事で付き合いのある方と接している時の「自分」の態度や考えること・発想と、「あなた」が家族や恋人と接している時の「自分」の態度や考えること・発想は違っているはずで、意識・演技して演じ分けているのではなく自然と相手との関係性で生まれて育まれていった「あなた」の要素の一部で、どちらが本当の「あなた」という区別が出来るわけでもなく、「分数」の様に特定の要素が強く出ている「あなた」の「分人」がある、とする考え方です。

個人的には、人間関係は相対的で相手がいるから自分がいるし、その逆もある、と思っていて、相手との共通の時間で経験した事や、興味・知識の範囲で今後経験することや話す内容・発想は変化する、と考えていたので自然と「分人」という考え方も受け入れる事が出来きました。多くの方も世間で「顔」と言われるものを自然と使い分けているのではないでしょうか?「子供としての顔」「会社での顔」「近所の人への顔」「親としての顔」「旧来の友人への顔」、これらを意識して演じ分けるのでは無く、どれが本当の自分というのでも無く、自然と使い分けていると思います。たとえば、地元の友達や親と話す時には自然と方言が出てしまう、なんかも相手との関係で育ってきた「自分」で普段も別に隠している意識はしていないのではないでしょうか?

興味が湧いた方は平野啓一郎作品に触れてみたり、調べてみてください。もっと詳しく、素敵に表現されていますから。では、ここから「ドーン」の感想を極力ネタバレしないように。

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