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【NYY】"異常"なポテンシャルを秘めるSpencer Jones

2017年にClarke Schmidtを指名して以降,ヤンキースはドラフト1巡目指名において立て続けに野手有望株を指名してきましたよね。

2018 Anthony Seigler【C】
2019 Anthony Volpe【SS】
2020 Austin Wells【C】
2021 Trey Sweeney【SS】

Seiglerは故障などもあってようやく2022年に真価を発揮した感はありましたが,VolpeはFV55-60級のプロスペクトへ成長を遂げると,捕手守備能力を向上させたWellsも一部媒体でTop100入りを果たす存在へ。Sweeneyの指名はギャンブルでありましたが,今のところ可も無く不可も無くと言ったところでしょうか。

そんなヤンキースが2022年の1巡目25位指名で獲得したのは,またもやポジションプレイヤーでありました。その名はSpencer Jones。リスクはあれど上手くモノにすることができれば,今後何年にも渡ってチームを勝利に導けるような原石であると思っています。

今回はそんなJonesのプロフィールや選手としての魅力などに触れられればと思います。

基本情報

★Spencer Jones(スペンサー・ジョーンズ)
2001年5月14日生まれ(現在21歳)左投左打
身長201cm 体重102kg 外野手

Baseball Reference

カリフォルニア州出身のJonesはラコスタキャニオン高校時代にも著名なドラフト候補でありました。投手&一塁手を務める二刀流というだけでなく,身長201cmという未曾有のアップサイドを有しており,各媒体からは”2巡目指名候補”との評価を受けるほど。
実際には本人が名門ヴァンダービルド大学への進学を強く希望していたこともあって,エンゼルスから31巡目指名を受けただけに留まります。

しかし進学1年目は怪我の影響もあって野手出場に留まりポテンシャルを発揮できず。尺側側副靭帯損傷によるTJ手術を敢行したこともあって,2年生からは二刀流ではなく外野手に専念しますが,2年目も全くといっていいほど活躍できずに評価が急落。それでも,2年目後半にCape Codリーグに参加(Austin Wellsも参加し評価を上げたリーグ)。木製バットながら25試合で打率.314 3HR 6盗塁 OPS.904(リーグ16位)という高水準な数値を叩きだすなど,ここにきてようやく真価を発揮。出身地の西海岸エンシニータスと東海岸ケープコッドはアメリカ大陸の正反対に位置しますが,実は父Chris Jonesの両親はケープコッド在住であり,Joneにとっては幼い頃から何度も訪れている地。リーグ参加時には祖父母の家に宿泊し,多くのサポートを受けたことが伺えます。

ゆかりの地できっかけを掴んで迎えた3年生シーズン,遂にJonesが爆発します。右翼手として62試合に出場すると打率.371 12HR 14盗塁 OPS1.103というNCAA-SEC内でもTop10級のパフォーマンスを残し,ドラフト前に評価が急上昇。1巡目後半の指名権を持つヤンキースなどが獲得に興味を示します。

また,6月にペトコパークで行われたドラフトコンバインにおいても衝撃のパフォーマンスを披露。スイングスピード:80mph(全体8位),最高打球飛距離:412.7ft(全体2位),30ヤードダッシュ:3.60sec(全体3位)という数値からもフィジカルやポテンシャルがクラス指折りであることが分かるかと思います。それだけに留まらず,10回計測された打球のExit Velocityは103.6mphMax Exit Velocityは112.2mphに到達。
アスリートの身体能力を評価するLoden Sports社も,コンバイン前に行った独自テストの結果を受け,彼を「AN OUTLIER ATHLETE(異常なアスリート)」と形容しています。

Just .22% of all athletes that Loden Sports has tested have achieved a 9 or higher in both Power and Speed. Spencer is a special breed of unique: he’s the top-end power and speed combo.【原文】

Loden Sportsがテストした全アスリートのうち,”Power”カテゴリと”Speed”カテゴリの両方で9点以上を獲得したのはわずか0.22%しかいません。Spencer Jonesは,PowerとSpeedのトップエンド・コンボを持つ特別な存在なのです。【筆者翻訳】

MLB DRAFT SPOTLIGHT: SPENCER JONES, AN OUTLIER ATHLETEより

一方で,活躍した3年生シーズンにおいてBB%=11.7は優秀でありましたが,K%=23.5という数字は不安要素であり,コンタクト面でのスキルを案じる球団は少なくなかったでしょう。
評価がまとまらない中で迎えたドラフト当日,ニューヨーク・ヤンキースがJonesを1巡目指名(全体25位)するに至りました。

ヤンキースが200cmを超える外野手をドラフト1位指名したのは今回が初めてではありませんよね。そう,2022年に62本塁打を放ってMVPに輝いたAaron Judgeも同じプロフィールを持っていました。(思えばカリフォルニア出身)
私としては,Jonesも好きな指名ではありましたが,1stオプションは1巡目最終盤までスリップしてきていたBat Fliper Drew Gilbertのスティール指名。同じようにトラッキング指標が優秀な選手でしたが,残念ながらアストロズが賢く指名。「高身長Jonesにとって終生のライバルは低身長のGilbertに」なんて2017年MVPばりの展開を期待しています。

ドラフト後の8月にはルーキー級FCLでデビューすると3試合で5安打1HRとレベルの違いを見せつけすぐさまLow-Aへ昇格。ここでも22試合で打率.325 3HR OPS.905と適応。危惧されていたコンタクト面は課題もあれどK%=18.9,BB%=10.5といった水準にまとめあげています。
来季開幕は恐らくHigh-Aで迎えることとなりますが,期待は膨らむばかりですね…!!

■打撃

Jonesの身体能力に触れる上で欠かすことのできないツールが「パワー」でしょうか。3年生の春には119.1mph(191.6km/h)というNCAA最高記録の打球初速度を打ち立てただけではなく,平均打球初速94.5mphなどコンバイン同様にモンスター級のRaw Powerを秘めていることが分かります。

そんなパワーポテンシャルが「本塁打数にリンクされているか?」はまた別であり,Mason Mcrae氏の記事によれば「打球角度25 度~ 45 度の間で放たれた打球数はわずか14球(全打球の10%程度)。アプローチ調整が必要かもしれない」とのこと。課題は明白であり,GBの多さによってまだまだGame Powerが開放されるに至っていません。(実際にLow-AにおいてもGB%=47.7,BABIP.387。一方で25度~50度の打球比率は22.8%に上昇)
また,Low-Aでは引っ張り方向の打球が35.4%,反対方向の打球が43.1%という傾向が出ており,この辺も矯正が必要でしょうかね。

コンタクト面においては先述のBB/Kなどは予想以上に健闘をみせていますし得意の速球に対してwOBAcon.492と非常に優秀でContact%やChase%もGreat。一方でカレッジ時代からの懸念であるオフスピードボールへの対応には苦戦しており,今後も見守る必要がありそうですね。(上図のxwOBAは参考程度)

■走塁

コンバインやLoden Sports社の計測結果からもわかるとおり,間違いなく走力もプラスツール。通常これだけの高身長選手になると走力は低下しますが,Jonesの場合は幼少期より父・Chrisから正しい走り方をたたき込まれたようで,これも功を奏しているかもしれませんね。
Low-Aにおいても積極的に盗塁企画を行うNYY傘下の方針にマッチしたのか,22試合で10盗塁を果たしています。

★Loden Score社のダッシュ計測データ
   10ヤード  30ヤード
1回目 1.71sec   3.92sec
2回目 1.71sec   3.88sec

MLB DRAFT SPOTLIGHT: SPENCER JONES, AN OUTLIER ATHLETE

上記調査によれば”Tall-Largeなアスリートの平均Speedを【12段階中5】と評価しているが,JonesのSpeedは【12段階中9】というスコアが出ている”とのこと。

上記の動画は6打数6安打を記録した映像ではあるものの,Runツールを確認するには一番良い動画です。

■守備

高校時代はファースト,大学時代はライトを守っていましたが,ヤンキースは全試合センター起用を試みていますし,Runツールの高さからみても守備範囲は問題ないと思います。思えばヴァンダービルド大学には2023年のドラフト1巡目候補であるEnrique Bradfield(クラス№1の守備・走塁能力を誇る)がいたためにポジションを譲り渡していたのでしょうかね。アームについては故障歴もありますが,体格&投手経験によってもたらされるツールはプラスと考えています。

一方の懸念はやはりそのサイズによる故障リスク。Judgeのように中堅守備をこなせるにこした事はありませんが,高身長だけに守備負担が常人よりものしかかることは憂慮すべきでしょうかね。左利きのためにコンバート先は両翼・一塁手しかありませんが,個人的にこれほどダイナミックなツールがあるのならば一塁転向はやってほしくないですね。もちろん怪我してからだとそんなこと言う余裕なくなるけどさ。

■各媒体からの総合評価

2022年ドラフト直後にはMLBPpelineから「球団内7位相当のプロスペクト」といった位置づけでしたが,Low-Aなどの結果を受けて更新された2023年プレシーズンにおける評価は急上昇。
Baseball Prospectus発表のTop101ランキングにおいては堂々の全体57位(J-DOMを抜いて球団内3位)に位置しています。
Baseball America発表のTop100には入りませんでしたが,「10 Players Poised To Join Top 100 Prospects List In 2023」と題された”惜しくもTop100選外の10人”に選出されるなど,評価は依然として高いです。

明日発表されるMLBPipelineのTOP100入りは厳しいと思われますが,今季前半もHigh-Aなどでインパクトを残すことができれば夏のランキング更新で選出される可能性も高いのではないでしょうか。(「そんなもん,誰でもそうやないか?」っていうツッコミ)

私もJonesを「Pereiraよりも格上,Dominguezと同等のシーリングを秘める傘下2-3位程度のトッププロスペクト」と考えていますし,課題のアプローチ調整が上手くいった場合はVolpe卒業後の傘下№1プロスペクトに君臨するのではと考えています。もちろんリスキーではありますが,コンタクト面の改善が見られずともPower-Run-Fielding-Armの4ツールだけでも数年後のMLB起用に繋がる可能性も考えています。
ちなみに2019年ドラフトクラスであったことからもわかるように,Volpeと同い年(今季で22歳)の選手。つまりPereiraとも同い年。俄然楽しくなってきましたよ。

最後に

Joneの打球が上がるのが先か,Pereiraの打球が上がるのが先か,僕と500ペリカBetして勝負してくれるヤンキースファンを探しています。
ひとりで「スペジョ」とかいうクソダサいあだ名呼びしてますけど,流行って欲しくないですね。

<以下,参考文献>


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