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魔女コルボ

■コルボ
フランス系スペイン人。

両親と共に彼女はフランスから移民して来たが、
閉鎖的なスペインの村の中で
フランス人である事を理由にいじめられる。

ある時、子供達にリンゴが配られたが、
コルボのリンゴだけが青いリンゴだった。
他の子供達は赤いリンゴを持って、
彼女の青いリンゴを笑ったが、
彼女はその青いリンゴをとても美味しそうに食べてしまった。
子供達は、彼女があまりに美味しそうに
青いリンゴを食べたので、
「自分達が青いリンゴを食べれば良かった」と悔しがった。

チラシ黒の2

また、ある時、スペイン詩の朗読の授業が行われたが、
子供達は彼女のウナムーノの詩集を隠してしまった。
しかし、彼女は自分の朗読の番になっても困る事もなく、
フランスのヴィヨンの詩を暗唱した。
その詩と言葉があまりに真理だったので、
子供達は「古典には勝てない」と悔しがった。

また別の日には、
[神様から愛されている]事について、子供達は、
[スペイン人が一番愛されているのだ]と彼女に自慢した。
しかし、彼女は満足した顔で、「その通りだ」と頷き、
「フランスは、そこまでの信仰心が無くなってきているので、
もっと自由に色んな罰当たりな事が楽しめるのだ」と言った。
「過剰な愛は重いだけだ」と。
子供達は[自由]を羨ましがって、口々に神を罵った。
すると、その為に全員が神に呪われてしまった。

それを見た村の老人が、驚いて彼女に言った。
「何て事をするんだ!!
確かにいじめていたのは子供達だが、
だからって復讐に呪いをかけるなんて!!」
すると彼女は笑って言った。
「私は、いじめられていません。
私がずっと彼らをいじめていたのです。
そもそも、神に呪われるまでもなく、
最初から貴方達には呪いがかかっていたではありませんか!」
そう言われて老人はまた驚いた。
「馬鹿な事を言うな。
一体、どんな呪いがかかっていたというんだ?」
それに対して彼女は言った。
「フランスに対するコンプレックスに
始終支配されているという呪いですよ。
貴方達はそこから決して解放されないのです。
白雪姫は継母にいじめられていた訳ではなかったのです。
そもそも彼女は欲しいものは全て持っていたんですから。
苦しめられていたのは継母の方なのですよ。」

その後、彼女は、魔女達の集会によく現れたが、
誰も彼女を馬鹿にしたり、喧嘩しようとはしなかった。
悪霊達は彼女を見て口々に呟いた。
「強大な影を恐れない者は、
逆にその影の恐れを見抜いてしまうのだ。
しかし、ひとたびそんな力に気付いてしまった者は、
もう人間でいられる筈もない。
人間とは自分の影に怯え、他者の光を叩く者なのだから。」と。

スペインの不穏な内戦が始まる
ちょっと前のお話らしい。




スペイン・オペラ楽団「墓の魚」
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