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魔女ラ・ヴォアザン

■ラ・ヴォアザン
フランス(パリ)出身。

本名はクロエ・ヴォアザン。
毒薬調合師。
あらゆる悪党、ご婦人達の良き相談役。

媚薬や毒薬の調合を得意とする為、
悪人達の世界で[三流の調停役]と呼ばれる。

子供の頃から優秀な姉(エル・マゴット)に憧れ、
姉の真似をする子だったが、
姉からは塵の様に扱われ、全く相手にされなかった。

やがて姉が妖術の世界に足を踏み入れると、自分も後を追うが、
その世界の才能が全く無かった為、断念する。

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やがて姉は邪悪な魔女になり、多くの者を呪い殺したが、
しかし、魔力など無くても、呪いなどなくても、
腐ったニンジンがあれば人を殺す事は出来る・・と、
クロエは、ある日気づき、
それ以来、あらゆる毒物、薬物を我流で狂信的に勉強する様になる。

やがていつの間にか、
パリ中の誰もが恐れる邪悪な毒薬師になっていたが、
姉や兄は、彼女の調合を
[ただ腐った魚を混ぜるだけの子供のままごと]と嘲笑った。

自分を決して認めてくれる事がなかった絶対的な姉や兄の存在は、
彼女の中で人生の壁となる。
[この才能も持たない、輝きも持たない惨めな自分とは何なのか?]
その答えを求め、彼女は自分の毒学で
姉や兄を何度も殺そうとする様になる。

しかし、大魔女である姉や、薬学を伝統ある大学で学んだ兄は、
彼女の三流の毒など、いとも簡単に無効にしてしまう為、
彼女の企みはいつも失敗に終わる。

彼女はプライドが高い故に、他者から学ばない事が歪んだ誇りである
(両親が、姉と兄にだけに教育を与えた事を彼女は許す事はない。
よって、彼女は[親が自分にそうしない限り]
一切の教育を受けないのである)。
それ故に、彼女は永遠の三流となり、
決して、正式な術を学ぶ事がない為、
都の薬剤師達の域に達する事はない。

調合台の上に置かれた毒アサリを、
彼女はちゃんとしまわないので、
アサリの出した液によって彼女の調合はいつも狂ってしまう。

パリの悪党達の世界では、その毒力は一目置かれ、
彼女の毒はどんな強靭な獣ですら瞬殺すると言われている。
ただし、彼女の媚薬は、飲んだ者が即死してしまう為、
あまり使い物にならない。

最も好きな毒は蟹の毒で、その毒の長年の服用の為、
身体の痛覚が全く麻痺している事が、
まるで姉の[氷の表情]を手に入れた様な気分になる為、彼女の自慢。

彼女にとって、殺した姉が死体になる事は、認識していない。
ただ、姉を殺した後、姉が自分を認め、
愛してくれるのだろうと思っている。
決して叶わない願いを持つ故に、彼女もまた魔女なのである。


スペイン・オペラ楽団「墓の魚」
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