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子育て支援が、日本を救う。


今年度のスタートとなる、4月2日。

朝日新聞の朝刊トップを飾ったのは、「待機児童問題」でした。


多くの学生や社会人が、意気軒昂と新たな門出を迎える一方で、悲しい思いをしている人がこれだけいて、かつこれだけ長い間解決されていない社会は、やっぱりおかしいと思うんです。


朝刊トップを飾ったとは言え、「保育園落ちた日本死ね!」の2016年に比べ、待機児童問題が世間で大きな話題になることは減り、「問題」として認識する人も減ってしまったのではないでしょうか。


問題が収束するフェーズに入ったことで、話題になる機会が減っているのであれば、決して悪いことではありません。

が、冒頭の記事や、昨日厚生労働省が発表した数字を見ても、そのフェーズに入っているとは考えにくい。


自分自身、保育業界から離れてしまった身のため、決して偉そうなことは言えませんが、今でも苦しんでいる人がたくさんいることは事実です。


改めて、この問題を考えて頂きたいと思い、以前書いた記事に加筆修正を加えました。



【『子育て支援が日本を救う』を読んで感じたこと】


待機児童問題をはじめ、今日の日本に現存する多くの問題は、互いに繋がりがあるため、一朝一夕では解決出来ないというのは、事実だと思います。

簡単に解決出来る問題であれば、多くの人が長い間苦しんでいるなんてことは、あり得ないはずですから。


 ただ、これら日本が抱える問題(待機児童の増加、少子高齢化の加速、財政難、自殺率の上昇など)に相互の繋がりがあるならば、裏を返せば「共通する根本の原因を見つけ出し、対応策を講じることができれば、ドミノが倒れるかのように解決できる」可能性を孕んでいるとも言えます。



 では、根本の原因への「対応策」とは何か。

 そんな疑問を、統計学の観点から解き明かしたのが、京都大学大学院准教授・柴田悠さんによる『子育て支援が日本を救う -政策効果の統計分析-』です。

こちらは、タイトルの通り「子育て支援が日本を救う」という論理的な仮説を、様々なデータの分析を通して検証していく内容となっています。


では、この作品を読んで感じたことを、何点か書き記しておきます。

 


①「子育て支援」はスーパーヒーローではない


「子育て支援が日本を救う」は、間違いではないと思います。


積極的に子育て支援を行うことで、待機児童問題が解消され、労働意欲のある女性が社会進出を果たし、日本の労働生産性とGDPは上昇相対的貧困率も低下するはずだという仮説は、しっかりとした裏付けもあり、信頼に足る分析結果だと思うからです。


ただ、「子育て支援を行えば必ず日本が良くなる」と考えるのは早合点。


子育て支援はあくまで「第一歩」。
ドミノ倒しで言えば、最初の1コマ。
次のドミノが倒れなかったり、倒れたとしても正しい方向に向かわなければ、全てが水泡に帰してしまうことでしょう。


最後の1コマまで倒し、明るい絵を完成させるためには、国民一人一人が理想の社会を考え抜き、それに向けて行動していく姿勢が求められると思います。

 


②今、まさしく子育てに奮闘している全ての方を応援したい


現在の日本で子育てをすることは、非常に大変なことだと思います。


保育園に預けるだけでも、ひと苦労。

預けられなければ、待機児童。

預けられても、子供が熱を出せば仕事を切り上げて引き取りに行く。

家事と育児で休まる時間が無い。

国は、少子化を問題視しているはずなのに、2人目、3人目を産んでも、もらえる補助金は雀の涙。


これでは「子供を産みたい」と思う人が増えないのも無理はありません。

仮に、政策で母数を増やすのが難しいのであれば、せめて今現在子育てをしている方々に対しては、国として応援の意を表明するべきではないでしょうか。


変だと思うかもしれませんが、自分は親子連れの方とすれ違う時には「ありがとう。頑張ってください」と心の中で思っています。
今の自分には、そんなことしか出来ませんが…

 


③統計学が最強の「学問」である


たとえ自分の頭で考えて「これが正しい!絶対に実行すべきだ!」と感情に任せて訴えたところで「過去5年の推移はこのようになっているが、この時点で、この政策を実行すれば、今後これだけの変化が生じる」という論理には、なかなか勝てません。
(仮に、その考えが正しかったとしても)


これは、選挙演説などを見ていて感じる人も多いのではないでしょうか。
涙ながらに訴える政治家と、事実をもとに冷静に語る政治家の、どちらが信頼に足るか。

それくらい「数字、ファクト、ロジック」(=統計学)は強いということです。

 


④ただ、統計学だけでは動かない現実もある


例として「涙ながらに訴える政治家と、事実をもとに冷静に語る政治家」を出しましたが、時に両者の勝敗が逆転する場合があります。


時代の趨勢や、民衆の感情、政治家のカリスマ性、または本性の露呈など、様々な要因は考えられますが、要は「数字だけで人は動かない」ということです。


時に感情で物事を決定し、失敗することもあれば、成功することもある。

そのようにして世界が発展してきたのも事実です。


統計学は最強の「学問」だけれど「実践」という観点では、必ずしも最強ではないということも心に留めておかなければいけません。

 


⑤ある側面だけを見て物事を判断してはいけない


仮に、日本の経済成長率が年々上昇しているというデータがあったとします。


これだけを見ると「成長」という言葉から「日本もどんどん豊かになっていて素晴らしいじゃないか!」と考えてしまいがち。


たしかに、経済が成長することは国家にとって悪いことではないと思います。

が、そもそも「経済成長率」とは、「国内人口一人当たりの物質的豊かさの増大」を表します。

「国内人口一人当たり」とは、つまり「平均的」ということです。


「平均的」とは、例えば「国民の大半は貧しいままで、少数の億万長者の資産だけが増加している」という構図でも成り立ってしまいます。

今の日本(もしくは世界)が、まさにその道に進んでおり、いわゆる「格差社会」が加速しているんです。
(『21世紀の資本』の中でピケティが危惧している事態)



格差を無視した経済成長を目指してしまえば、必ずどこかで破綻をきたすはず。


表面的な数字に囚われることなく、常に「本質は何か」を見極める努力をしていきたいと思います。




【最後に】


三田紀房さんのマンガ『エンゼルバンク』に、こんなシーンがあります。


世の中の解決していない問題の多くは解決不可能だからではなく誰も「本気で」解決しようと思ってないから

本気で取り組めばたいていのことは解決できるんだよ



これを「理想主義だ」と批判することは簡単です。

「じゃあ、お前がやってみろ」と言うこともできるでしょう。


ただ、ぼくは前回の記事にも書いた通り、どこかで少しでも問題が生じているなら、それが無くなるようにみんなで協力していきたい。


もちろん、自分ひとりが発信したことで生じる波紋など、微々たるものでしかありません。

かつ、今はただ文章を書いているだけで、実際に手を動かしているわけでもありません。


けれども、この文章を読み、待機児童問題(あるいは他の問題)について考えようと思う人が、1人でも出てくれたら、決して無駄ではないと思います。



日本が大好きだから、日本をかっこいい国にしたいから、ぼくはこれからも発信を続けていきます。



悠仁(@kjm_you



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