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3️⃣【JK目線で書いたコロナ禍の青春小説】『終わりある既来へと』
前回🔻
コロナウイルスは、進化する人工のウイルスなのかもしれない。
死者の少ない日本のコロナウイルスと、死者の絶えないアメリカのコロナウイルスは別物におもえる。
たとえば、そう遠くない未来に地球環境が壊滅するとして、月と火星に移住する日が来るとしたら、地球上の人口を減らして、生き残った全員が移り住めるようにしなければならなくなる。
そのための人類削減計画が秘密裏に進行しているのだろうか。
耳鳴りが始まって、都市伝説の雑誌を閉じた。
世界の核心に触れると、いつも耳鳴りが酷くなった。
コバエが入りこみそうな窓に鍵をかけて、羽のない扇風機をつけた。
冷たい風が鼻孔に詰まる。とうめいな鼻水がうつむいただけで垂れてきて、鼻をすする音を聴いていたら、自分が泣いているようだった。
母親は都内のデザイン会社の社長で、父親は一トントラックで運送業をしていて、二人でなかよく真夜中に帰ってくる。
そのため祖母と二人で生活しているのだが、祖母はずっと書斎にいて、たまに買い物に出かけたりするのだけれど、またすぐに書斎に閉じこもる。
どこかで赤ちゃんが泣き叫んでいて、おかあさんが必死にあやしていた。
私だけが社会から隔絶されている。
世界から孤立している、と嘆いている人は、私のほかにも数えきれないほどたくさんいるのだろう。
赤ちゃんの慟哭が、十秒間ほどつづいた。
学校生活だけが、私の孤立をマボロシにみせていた。
ここまで長かった。明日は、ようやく、半年ぶりの登校だ。
分散登校をするらしい。クラスメイトを四つのグループに分けて、決められた時間に少人数で登校、あるいは授業を行います、と郵送された保護者宛ての手紙に書いてあった。
朝九時から昼十二時が、私とトモカ、ナギハ、ルナ、カツノリ、コウキ、ワタリの計七人から成るAグループの時間帯で、女子勢と全員、仲がよかったから男子勢はほとんど無視をするつもりだ。
コロナ禍による自粛期間が長くて、クラスメイトの名前や顔が、ほとんど出てこなかった。
自粛期間に入る前もアルバイトで忙しくて、特に仲が良いメンバーとしか話さなかった。
物静かなキャラクターを装いながら、他のクラスメイトと赤の他人のように接してきたため、グループワークのたびに初対面の緊張が、私を寡黙にさせた。
クラスメイトと再会できる喜びと不安とがにじみ出て、タオルケットがほんわりとふくらむ。
風呂上がりに塗りつけたベビーパウダーが素肌とパジャマのあいだを転がっている。
全身をくねらせて脚をひらくと、さらっとした空気がタオルケットやパジャマ、敷布団を押しのけて、不浄な現実と私とを引きはがしてくれた。
何も身にまとっていないかのような恥じらいと、何か巨大な存在に護られているかのような、安心感がタオルケットのなかで混じりあっていた。
じんわりとまとわりつく寒気がして、胸がしめつけられる。タオルケットが私のからだをかたどっていた。
真っ黒な夜空のどこかに、白い光を感じて、窓の奥を見上げる。ミルキーホワイトのやさしい白が、夜の闇に注がれていた。
定位置に現れた月は、欠けている様子がなく、完全な満月だった。
夜空に浮かんだ太陽にもみえた。
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