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キロンとカオス

キロンが土星領域と天王星領域を通過する、変化変容をもたらすポイントであることは、占星術的にある程度共通認識の事だと思います。(※それについて詳しくは別の考察(キロンの活用法)を読んでください。)しかし、何故キロンは強固な土星を打ち破る事ができるのか?という事についての考察です。

その解釈には現在の人類学から考えられている神の概念についての研究が、視界をクリアにしてくれます。例えば、中沢新一という人類学者の著書の中で「神の発明」という人類がどのように現在の神の概念(一神教と多神教、そしてカソリックのような三位一体の特殊概念になったか)の話が書かれているのですが、その中で重要なのが、原初の神の概念(原初の時点ではそんな「神」という概念は無いのですが説明の都合上ここでは「神」と言います。)で、これは要は高次のカオス状態の事をを示している事がわかります。

「高次」というのは、今私達の目の前にある”現実”にいつでも「コップ」と「橋」を入れ替え可能になっているような状態で、こう話すとそんな事はありえないと言いたくなると思いますが、インディアンなどのシャーマンの記述の中では普通に出てくることです。しかし、当然、現在の東京にシャーマンが降り立ち、彼らの世界観でものを発すれば「分裂症」という病名を当てがわれてしまうでしょう。

しかし、原初の神の時点では、それは現実(という表現は当てはまらないのですが、一応。)に対しても、実際に交換可能な状態を保持していたからこそ、宇宙誕生から起こった宇宙の渦の結果、高度なエネルギー場が現在の世界を作っているので、それを「高次のカオス」状態という事になんら問題はないと思います。つまり結果的に一つの「コップ」というものに安定しているように見え、それが「橋」に変わるとは思えないため、それを世界が了承して「コップ」で在り続けているという状態が、今です。

その事を理解してもらえば、おのずと人は何かしらの固定された観念の中を自分独自の一つの世界として生きている事が分かります。この固定された観念の中にいることを、占星術的に言えば土星の領域内にいる人と言います。

つまり、土星領域とは「その人」の中にある、個人的な論理的世界の解釈で、それは「これはこうなんだ!」という個人の精神を世界の中で安定させる「枠」なのですが、これを突破すると待っているのが天王星域です。天王星域の人を簡単に言えば「とっても変わっている人」と表現するのが一番優しい言い方だと思います。しかし天王星域で生きる人は、普通の社会的常識というものに当然のように当てはまらない特異な存在であるため、長くそこに居続ける人を現在の人工的な社会では恐怖し精神病院に送られてしまうでしょう。

つまり、それは一番身近な例でいう所の「鬱」状態です。鬱状態は土星域にいながら、精神はキロンのカオスの働きによって天王星に行こうとしているのですが、それをこれまでの「安定」が抵抗している状態です。そう話すと鬱は楽しいことではないので、土星領域に安住していたいと思うかもしれませんが、しかし、そういった天王星領域に少しはいかないと、人は土星によって冷やされ固められてしまいます。それはいわゆる「これはコレ」という事が少しでも変化すると怒り出すような頭の固い人になっていく効果がある為、どのような人もたまには天王星領域に入る時間があるほうがイキイキと生きられるのです。

では、そんな土星から天王星という別の枠に移行させられるキロンは何をしているのかと言うと、それまでの固定観念を破るのですから、つまり先ほどの「コップ」が「橋」になる事を了承するような高次のカオスを個人の中に生む作用なのだと思います。

それをもう少しかみ砕いて話せば、土星は結局、「その人」にとっての論理的解釈に落ち着いた「冷えた思考」なので、その思考は、今日と明日を繋ぐ安定を産みますが、そのままでは人は同じ毎日を過ごす事になります。そこで、キロンというカオスが干渉すると、今日と明日を不安定にして、別の世界に変えてしまう。

カオスという渦に巻き込まれた精神は、確かにいったん分裂症的な要素をはらませますが、その効果で目の前の世界観を変化させ、天王星域まで移行する事を可能とさせてくれている訳です。しかし、天王星まで変化した精神も、その状態で「安定」すれば、そこで冷えて固まり、即座に土星的要素に変わってしまうか、天王星的要素を「保持」し続けるならば、その人の生活は常に分裂症的な危険な状態になると言えるのではないでしょうか。

前回のキロンの活用法でも書きましたが、キロンそのものは「安定」とは程遠いカオスで、快感になるようなものでは無く、自分自身の心の安定を取っ払う作用でもあるのですが、その不安定の中から新たな安定を見つけた時、人は成長したというのではないでしょうか?

以上、キロンとカオスの関係でした。

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