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【仮想旅行】1978年鹿児島行【前編】

ども、ゆさっちです。
相変わらずテレワークをこなしながら、巣ごもり生活をしています。

乗り鉄もままならない状況で、仮想旅行用にKindleで1978年10月の交通公社(現JTB)の時刻表を買いました。
当時ゆさっちは12歳、乗り鉄で遠くに行けるわけもなく、時刻表でブルートレインのスジ(ダイヤ)を追っては、まだ見ぬ地に想いを馳せていました。

そんな小僧の時代を思い出して、仮想旅行記を書いてみました。
設定はもし、ゆさっちが当時大人の乗り鉄だったらって感じですかね。
あくまでもフィクションですので、細かい誤りはご容赦くださいね。
写真はWikipedia等あちこちからお借りしました。
楽しんでいただけるといいのですが。
では、はじまり、はじまり〜

ーー
「旅に出よう」
漠然とした想いに駆られ、福島駅のみどりの窓口の前に立っていた。
待合室のTVが先日、ヤクルトスワローズが阪急ブレーブスを降して、球団初の日本一に輝いたことを伝えている。

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「今年はいい年だったな」
感慨にひたりながら窓口に歩を進める。

「さて、どこに行くか」
備え付けの時刻表に目を落とす。
最初に出てくるのは新幹線。(当時は新幹線は東海道・山陽しかないので単に新幹線と表示されていました。)
次がエル特急、その次の寝台特急のページで手が止まる。
「寝台特急(ブルートレイン)か」
東京駅からは西日本各地に向けて多くの寝台特急が出ている。
九州方面だけでも
16:00 さくら 長崎・佐世保
16:45 はやぶさ 鹿児島本線経由西鹿児島(現鹿児島中央)
17:00 みずほ 熊本・長崎
18:00 富士 日豊本線経由西鹿児島
18:25 あさかぜ1号 博多
19:00 あさかぜ3号 下関
多彩なラインナップが揃っている。

「さて、どれにするか。そういえば、西村京太郎って作家の新作の『寝台特急殺人事件』面白かったな、あの舞台は「はやぶさ」と「富士」だったな、今回は走行時間の長い「富士」にするか。」
指定券の申込用紙にペンを滑らせ、窓口の駅員氏に差し出す。
受け取った駅員氏は一瞥すると慣れた手つきでマルス(指定券の発券機)の駅名等が書いてある金属製の板をパタンパタンとめくりながら該当する項目にピンを刺していく。

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「鮮やかなものだ」
その手さばきに関心する。
端末の「YES」と書かれた緑色のランプが灯り、チケットが吐き出される。
料金と引き換えにそれを受け取ると改札口へ向かう。
「ひばり16号に乗れば、余裕で間に合うな」
旅立ちの高揚感とともに車上の人となる。

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「やっぱり、特急列車はいいなぁ」
リクライニングシートでくつろぎながらそうつぶやく。
急行列車ならミニ周遊券を使えば急行料金は不要だが、座席はボックスシートで、所要時間も福島ー上野間を3時間15分で結ぶ特急より1時間多くかかる。
コーヒーやビールが飲みたければ食堂車もある。
目を閉じて、この旅のこれからに想いを馳せているうちに、はからずも午睡の時間となった。

国電を降りると、東京駅は帰宅を急ぐ人たちのラッシュアワーが始まっていた。
しかし、12番線と13番線はこの時間帯、ほぼ寝台特急の専用ホームとなり、スーツケースを牽いた旅行客が目立つ。
他のホームとは違う、遠くを目指す旅行者が集う、独特な雰囲気を醸していた。
列車が入線してくるまで、しばらくホームを行き交う人をなんとなく観察する。
「あのカップルは新婚旅行か?行き先は宮崎かな」
会社の同僚らしき人々に見送られているのは、転勤で九州へ赴く人だろう。
発車時刻の30分ほど前になると、構内放送で富士が入線してくる旨のアナウンスがあり、いよいよ気分が高まってくる。
そして、24系25型13両編成に荷物兼電源車と牽引するEF65形1000番台機関車を加えた長大編成が入線してくる。

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ホーム前方ではカメラを構えた少年たちが「富士」の雄姿を収めるべく、あちこちを駆け回っている。
そういえば、牽引機関車は今月からEF65の500番台から1000番台に変わったが彼らの評判はどうなのだろうか。
自分は特急牽引機の象徴であるステンレスの帯を巻いた500番台に一票を投じたい。

指定券の表示を見ながら、一夜の宿となる寝台を確認する。
1号車のA個室、今回は奮発した。

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決して広いとはいえないが、B寝台が開放2段式、3段式であることを考えれば快適だし、プライバシーも確保される。


検札を受け、しばらくすると発車時刻を迎える。
「7列車、発車!」
車掌が運転士に合図を送ると、僅かな衝撃のあと、ゆるゆると動き出した。
出発定時、西鹿児島到着は翌日の18:24、24時間24分、1574.2kmの行程である。

進行方向左側の車窓では、東京駅を同時刻に発車した広島行のひかり145号がしばし静かに寄り添うが、やがて圧倒的な加速で去っていった。
「そういえば、新幹線は3年前に博多まで延伸したんだな」
17:00発のひかり15号に乗れば、その日のうちに博多に着いてしまう。
鉄道も高速化され、こういった旅情ある寝台列車の未来はどうか。
いまは盛況のブルートレインの将来に想いを馳せる。

この列車も次第に速度をあげ、新橋駅を通過する。
ホームでは家路を急ぐ人たちで溢れている。
その光景を個室の中でくつろぎながら見ている非日常さにくすぐったさに似た感覚を覚える。

列車は横浜を過ぎ、次の停車駅、熱海を目指して走っている。
時刻はまもなく19:00。
憧れていた寝台特急の食堂車(8号車)に足を運ぶ。

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ビールとビーフシチューをオーダーする。
待つことしばし、頼んでいたものが供される。

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(写真はトワイライトエクスプレスのものです)

旨味が凝縮された濃厚なデミグラスソースがビールに合う。
ビーフも口の中でほろほろと崩れる。
「いつ来ても・・・。」
と思う、食堂車でビーフシチューを食べるのは至福の時だ。

個室に戻り、備え付けの浴衣に着替えると、スキットルのウイスキーを飲りながら、車窓に目を向ける。
駅を通過する度に、人々の日常とすれ違う、これが夜汽車なのだと思う。
同じ場所を昼間に通過しても、こうした感慨はないだろう。
やがて列車は次第に速度を落とし、大きな駅に停車しようとしている。
腕時計に目を落とす。
もうすぐ23:00だ。
「名古屋か」
この次の停車駅は4:27の福山である。
個室の照明を落とし、横になる。
車輪が線路の継ぎ目を叩く、単調なリズムが子守歌となり、眠りについた。

ーー
長くなりそうなのでここで一旦区切ります。
よろしければ、後編も読んでくださいね。
後日アップします。(^^)/

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