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本の中のティータイム 。真の発見の旅とは?

疲れきった私は、マドレーヌを少し浸したお茶を一匙、機械的に口に運んだ。何とも言えぬ素晴らしい心地が私を襲った。いったいこの力強い歓びはどこから湧き上がったのだろうか?何の意味があるのか?どうしたらそれを突き止められるのか?私は二口めを飲むが、一口め以上のものを見いだせない。お茶の魔力は失われいく。私の求めている真実はカップの中ではなくて、自分自身の内にあるのは明らかだった。

マルセル・プルースト『失われた時を求めて』(原題 À la recherche du temps perdu)より


情報収集には困らないこの時代、聞いたことのない音楽、行ったことがない場所、食べたことのない食べ物になんでもすぐ手に入ります。
そうして新しい情報や知識が増えていくと楽しいと感じることがあります。でもどんどん新しい情報で生活が成り立っていき、そうしてやがて自分はなにが好きだったのかわからなくなって何が欲しいかもわからなくなってしまう時もあります。


そんな時ふとなにかのきっかけで好きだった出来事や記憶が呼び起こされます。それは音楽だったり場所だったり食べ物だったり。もちろん友人との話も然り。新しい音楽も場所も話題もそれはそれで楽しいのですが、今の情報とは違う自分の好きが詰まってるあの空気感が、ふと呼び起こされるとなんだか新しい発見をしたみたいに嬉しくなります。

その”ふとしたきっかけのこと”をプルースト現象を呼ぶそうです。


紅茶に浸したマドレーヌの匂いから過去の記憶を思い出し物語が展開していく小説『失われた時を求めて』を書いたマルセルプルーストは1871年フランス生まれの20世紀西欧文学を代表する作家です。

19世紀末からベルエポックの時代のパリは思想や芸術の自由から世界の憧れの場所でした。そんな古き良き時代に青春をすごしてきた華やかなブルジョワ階級の社交界での暮らしが書かれた長編自叙伝的小説は今でも多くの人に読まれ愛されています。


この物語の面白いところは当時の社交界の暮らしの華やかさもありますが語り手が語る名言のひとつひとつの言葉にあります。日常の何気そのことえいそがない暮らしの出来事で出会った自分の内なる感情を呼び覚ますこの小説はこうも言っています。

      

真の発見の旅とは、新しい景色を探すことではない。新しい目で見ることなのだ
The real voyage of discovery consists not in seeking new landscapes, but in having new eyes

マルセル・プルースト『失われた時を求めて』(原題 À la recherche du temps perdu)より


英知は受け売りでは身に付くものではない。自分自身で発見するものである
We are not provided with wisdom,we must discover it for ourselves

マルセル・プルースト『失われた時を求めて』(原題 À la recherche du temps perdu)より


いつの時代も求めている真実は、自分自身の内の中にあるものです。
さあ。今日も出かけよう。自分の”好き”をさがす旅に!

その答えはカップの中にあるかもしれないし。記憶の中にあるかもしれない。

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#本の中のティータイム


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