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ブリティッシュライクに笑おう! 「空飛ぶモンティ・パイソン」傑作10選

私が “モンティ・パイソン” というワードを初めて耳にしたのは小学生の頃。DREAMS COME TRUE 「go for it!」(1993)という曲に「黒は好きじゃない モンティ・パイソンも あなたの好きなのは 好きじゃない!」という歌詞があり、「モンティ・パイソンってなんだ?」と思ったのをよく覚えています。

モンティ・パイソンは、6人で構成されるイギリスの伝説的なコメディグループです。1969年から1974年までイギリスのテレビ局 BBC で放送されていた「Monty Python’s Flying Circus(空飛ぶモンティ・パイソン)」は、喜劇王 チャールズ・チャップリンから受け継がれる “鋭い社会風刺” に、“知的でシニカル” “毒々しくてナンセンス” と言った要素が合わさり、イギリス・コメディ特有の個性を築き上げた最高傑作です。のちに世界中のアーティストやコメディアンに影響を与え、ジョン・レノンに「生まれ変わったらビートルズではなく、パイソンのメンバーになりたい」と言わしめたほど。かっこいいですね。

「空飛ぶモンティ・パイソン」のコメディの特徴、それは<スケッチ>と呼ばれるコントです。普通、コントというと<パンチ・ライン>と呼ばれるオチがあるものですが、モンティ・パイソンが目指したお笑いにはオチがありません。オチがない代わりに、コントとコントの間をクレイジーなアニメーションが繋ぎ、笑いの連鎖がテンポよく続いていきます。このアニメーションは、メンバーの1人テリー・ギリアムが制作を担当していたことから、ギリニメーションと呼ばれました。

モンティ・パイソンを知ってから数十年。自分がモンティ・パイソンで大笑いする大人になるとは思ってもみませんでした!

今回は、私が愛してやまない、空飛ぶモンティ・パイソンのコントの中から、世界的に知られる傑作10選をご紹介したいと思います。

『Cheese Shop(チーズ・ショップ)』

シーズン3・エピソード7

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【あらすじ】
博識ぶった客がチーズ専門店を訪れます。店主が出てきて、どんなチーズが欲しいか尋ねます。客「レッド・レスターはあるかね?」店主「ありません」客「ティルジットは?」店主「ありません」客「ケアフィリーは?」店主「ありません」。客が次々にチーズの名前を並べますが、世界で最も人気のあるチェダーでさえ在庫はなく、客は意地になって、知る人ぞ知る美味しくないチーズや、架空のチーズまで持ち出して、実に43種類ものチーズの名前を出してきます。客「チーズの在庫は本当にあるのか?もし『いいえ』と答えたら頭を撃ち抜くぞ」と脅し……!

【みどころ】
・回りくどく「お腹がすいている」「チーズが買いたい」と伝える様子がいかにもイギリス人らしい
・あなたは、チーズの種類がいくつ分かりますか?
・強烈なクライマックスを迎えたと思いきや「はあ?」とびっくりなエンディング

『The Funniest Joke in the World(世界一おかしいジョーク)』

シーズン1・エピソード1

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【あらすじ】
第二次世界大戦下のイギリスに、売れない作家がおりました。彼は「世界一おかしいジョーク」を創作したことで自ら笑い死にします。彼の母親もまたそのジョークを見て笑い死に、ジョークの回収を試みた警察官も笑い死にしてしまいます。次々と犠牲者を出す殺人ジョークの噂はイギリス陸軍に届き、対ドイツ兵の武器としてドイツ語に翻訳されます。ドイツ兵だけが理解できる殺人ジョークにより甚大な被害をうけたドイツ軍は、ヒットラーの命令により新たな殺人ジョークの開発に乗り出しますが……。

【みどころ】
・殺人ジョークの回収を試みる警察官が笑い死にしないために講じた対策がまた滑稽
・読んだら死んでしまう殺人ジョークを、イギリス軍はどうやって翻訳したか?
ドイツ軍が開発した殺人ジョークを耳にしたイギリス人の反応

『Spam(スパム)』

シーズン2・エピソード12

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【あらすじ】
イギリスでよく見かける大衆食堂。バイキングたちが食事をする中、バン夫妻が天井から吊り降ろされて登場します。店主はメニューを読み上げます。「豚肉と煮豆とスパム」「スパムと卵とソーセージとスパム」「スパムとスパムとスパムとスパムと煮豆」。スパム嫌いの夫人は憤慨しスパム抜きで注文しますが、店主は頑として受け入れません。逆上する夫人を挑発するかのように、バイキングたちがスパムの歌を合唱します……。

【みどころ】
スパムメール(迷惑メール)の語源となった有名なコント。第二次世界大戦の影響で食糧不足に陥っていたイギリスでは、スパムだけが手に入れることのできる数少ない肉でした。そのため、イギリス人はもううんざりするほどスパムを食べることになるのです。
しばらくトラウマになりそうないほど連呼されるスパム
・意味不明なバイキングたちの存在

『The Ministry of Silly Walks(バカ歩き省)』

シーズン2・エピソード1

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【あらすじ】
バカ歩きを推進する「バカ歩き省」と呼ばれる架空の省庁が舞台。ある日、ピューティー研究員が、バカ歩き開発のための助成金を申請しに、バカ歩き大臣を訪ねてきます。ピューティー氏が研究中のバカ歩きを披露したところ……。

【みどころ】
・おバカな政策でも、こうだと決めたらおバカに遂行してしまうおバカな政府の姿
イギリスで一世を風靡したシリー・ウォークをとくとご覧あれ!

『Argument Clinic(討論クリニック)』

シーズン3・エピソード3

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【あらすじ】
討論をしたくてたまらない男が、討論クリニックにやってきます。初診なので5分のお試し討論をしようと、バーナード氏の討論の部屋に入ります。男「ここは討論の部屋ですか?」バーナード「もう言いましたが」男「言っていませんけど」バーナード「言いましたよ」。言った言わないの水掛け論は男が求めていた討論ではないため、「これは討論じゃない、ただの反論だ!」と苦情を言い、そこから討論とは何かの討論が始まります……。

【みどころ】
・どんな切り口からでも討論を始められる討論好きなイギリス人の姿
討論と反論のちがいについて改めて考えさせられる
・クリニックにあるその他の部屋にも注目!

『Nudge Nudge(ちょんちょん)』

シーズン1・エピソード3

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【あらすじ】
パブで労働者階級の男中流階級の男に話しかけます。「あなたの奥さん、いける口なんでしょ、ちょんちょん」「何の話ですか?」「分かっているんだから、ちょんちょん」「話が見えないな?」「とぼけちゃってもう!ちょんちょん」。礼儀をわきまえない労働者階級の男は、話をどうにか卑猥な話題へ持っていこうとします。中流階級の男はついに堪忍袋の緒が切れて……!

【みどころ】
・世界中、酒場に行けば1人はいそうな迷惑客のイギリス版
労働者階級の男と中流階級の男の対比がおかしい
・このコントを見たあなたは、きっとどこかで “ナッジ・ナッジ” を言おうと思うはず!

『The Spanish Inquisition(スペイン宗教裁判)』

シーズン2・エピソード2

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【あらすじ】
舞台は北部イングランドの街ロジャー。いかにも労働者といった男がやってきて「粉ひきが壊れた」と娘に説明しますが、男の訛りが強すぎて娘は何を言っているのかさっぱり分かりません。苛立った男が「スペインの宗教裁判みたいに責めるなよ!」と叫ぶと、赤い服を着たスペイン宗教裁判の審問官3人組が現れて、決め台詞をかまします!「まさかの時の宗教裁判!」15世紀、人々を恐怖に陥れた拷問の数々が今よみがえる……!?

【みどころ】
呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃーん!と審問官3人組が飛び出す名シーン
・エピソード2の最後のスタッフロールまでネタの一部なのでお見逃しなく
ナンセンスの真骨頂!ただ笑ってください

『The Dead Parrot(死んだオウム)』

シーズン1・エピソード8

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【あらすじ】
男は、30分前に買ったオウムが死んでいることに気づき、苦情を言うためペットショップを再び訪ねます。店員は「寝ているだけです」「フィヨルドが恋しいんです」と詭弁を撒き散らし、決して認めようとはしません。男は頭にきて、「これは “故オウム” だ!死体だ!命尽きて、永眠している!生涯の幕を閉じ、昇天なされたのだ!つまりこれは “元オウム”(an ex-parrot)なのだよ!」とアホらしくまくし立てます……。

【みどころ】
詭弁と苦情はイギリスの華!?イギリスでよく見られる光景かも
・店員にオウムが死んだことをまくし立てる長台詞は有名です
・このコントを創作したグレアム・チャップマンが48歳の若さで亡くなった際、ジョン・クリーズがこの長台詞をもじって弔辞を読みました

『Dirty Fork(汚れたフォーク)』

シーズン1・エピソード3

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【あらすじ】
1組のカップルが高級レストランにやってきます。男がフォークが少しだけ汚れていることに気づき、ウェイターを呼びとめて交換してほしいと丁寧に頼みます。するとウェイターは、カップルが呆気に取られるほど謝り始めます。次に給仕長がやってきて、フォークの汚れを見るや否や「皿洗い担当を全員クビにしろ!」と命じ、支配人を呼びます。支配人は深く謝罪しながら、スタッフの苦労話を語り、感極まって泣き始めます。ついには料理人が現れて「この冷酷なクレーム魔め!」と叫び、カップルに包丁を振りかざします……!

【みどころ】
・フランス訛りのウェイター、息子が刑務所に入ってしまった料理人、戦争の古傷が痛む給仕長など、登場人物の個性が際立つ
・日本のお笑いで言うところの ♪チャンチャン で終わる感じがパイソンらしい名コント

『The Lumberjack Song(木こりの歌)』

シーズン1・エピソード9

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【あらすじ】
人を切り裂きたい衝動に駆られる理容師が、「僕はこの仕事は嫌いだ。本当は木こりになりたかった!」と告白します。木こりの衣装に着替えながら、木こりの素晴らしさを並び立て、ついには木こりの歌を歌い始めます。理容師の歌声に合わせて、カナダ森林警備隊のユニフォームを着たコーラス隊まで登場、歌を盛り上げます。ところが、気分をよくした理容師が次第に自身の女装趣味を暴露しはじめ……!

【みどころ】
・木こりの歌は、その軽快な曲調からパイソンが歌った歌の中でもとりわけ有名です
“笑ってはいけないものを笑いの対象にする” というパイソンコメディの定番
・切り裂きジャックを知っている方はもっと楽しめますよ!

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いかがでしたか?

1つでも気になる作品を見つけていただけたら嬉しいです!

「空飛ぶモンティ・パイソン」は Netflix で全シーズンご覧いただけます。コント→アニメ→コントの繋がりもパイソンコメディの醍醐味なので、ぜひエピソード全編を通して観てみてください。

それではまた次回!

YOKO

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