市の元幹部職員による部下に対する強制わいせつ事件の全容が明らかになりました!

4月9日は不同意わいせつ罪と強制わいせつ罪で起訴された南魚沼市の元幹部職員の第二回公判が、新潟地方裁判所長岡支部で開かれました。

2月にあった第一回公判の内容をおさらいします。

第一回公判では、昨年8月18日と21日に南魚沼市役所内で種村恒尚被告(60)=元大和市民センター長=が部下の30代女性職員に対し両腕をつかむなどして抵抗できない状態にし、キスをしたと主張し、被告は起訴事実を認めました。

 検察によると、被告は被告の部下にあたる被害者に対し令和5年7月ごろから庁舎内の日直室や給湯室でわいせつ行為を繰り返すようになりました。被害者が「やめてください」「奥さんにしてください」と抵抗しましたが、種村被告は「いいじゃないか」と行為を繰り返しました。被告は、被害者を採用するかどうか決定できる立場にあり、検察はその立場を利用しての犯行だと主張しました。

 同年8月29日、暗い建物から種村被告と被害者が2人で出てくるところを同僚職員が見て、被害者の表情が強張っていたことから、被害者に事情を聴くと、被害が発覚。

 9月9日に被害者が南魚沼警察署に被害を申告しました。

 そして、4月9日、第二回公判では、別の起訴事実についての審議がありました。

 36席ある傍聴席は8割ほど埋まりました。

 まず、検察側が起訴事実を朗読しました。4月で人事異動があったからか、検察官は前回とは別の男性検事でした。裁判官が起訴事実の朗読を検察に求めました。

検察: 令和5年6月23日午後2時半ごろ、被告は魚沼市青島の路上に停められた車内で助手席に座った30代女性に対し、キスをしたり胸をもんだりした。

裁判官: この事実に間違いありませんか?

被告: 間違いありません。

 次に詳細な経緯について検察が説明しました。

検察: 被害者は市の30代女性職員で、前回の公判で話した時と同じ勤務内容。(つまり同じ被害者だということ)令和5年5月ごろ、被告が「ランチ行こう」と誘い、被害者はやむなく同意しました。6月23日、午前勤務を終えた被害者に対し、被告は「こっちこっち」と自分の車の助手席に乗せました。被害者と魚沼市内のレストランで食事をしたあと、「帰りたい」と言う被害者をひきとめ、コンビニでチューハイを買い、それを被害者に飲ませた。それから車で人里離れた場所へ行き、被害者が「やめてください。彼氏いるんで」と抵抗したが、体力に差があり、被害者は逃げることができなかった。発覚の経緯は、被告は被害者に対し、庁舎内でもわいせつ行為を繰り返していた。前回の公判で話したように、8月29日、被害者が被害を同僚に打ち明けたことで警察に申告しました。。

次に証拠物についての説明が検察からありました。

1.被告が6月23日に半日の代休を取ったことを示すもの。

2. 被害者の供述。被害者は被害後、自力で家へ帰り、気持ち悪くて家ではみがきをし体を洗いました。被害者の生活は一変し、仕事を一か月休んだ。この件は金で解決はしたくなく、被告には厳しい罰を受けてもらいたいと言っているという。
 
3. 被告人の供述。 6月23日の犯行現場は小出スキー場の敷地内で、被告が高校時代にサッカーをしていた場所で、当時の彼女のことを思い出し、犯行に及んだといいます。逮捕された当時、被告は自らの罪を軽減するために、この件について「記憶にない」と嘘をついていました。
 
次に提出する証拠物について被告の弁護人から説明がありました。
 
1. 被告が被害者に200万円を支払った証明。
 
2. 被告が市役所から懲戒処分を受けた証明。
 
3. 被告人の妻が書いた手紙。
 
「申し訳ございませんでした。私たちには4人の子どもがいますが、とてもショックを受けています。知っている人がいるところには行けなくなり、居場所がなくなりました。この事件がテレビ、新聞、ネットで広まりました。被害者が一番苦しんでいることは事実である。夫はすべてを失いました。深く反省させ更生できるよう支えていきたい。」
 
4.被告人の親戚が書いた手紙。 「関東地方に住んでおり、被告を我が家で引き取り、再犯防止プログラムを受けさせたい。」
 
 
次に、被告人質問がありました。まず、被告の弁護人が被告に質問をしました。
 
弁護人: なぜ性犯罪があると思うか?
 
被告: 刑法で重く罰せられる。女の人たちはか弱く、男性とは体の差があり、今回したことは申し訳ないと思っている。
 
弁護人: 被害者の上司で採用するかどうか決められる立場にあったが、その立場にありながら、こういうことをして過度の負担を与えると思わなかったか。
 
被告: 職場での上下関係があり、相手が同意しなくても、その意思を示すことができないとは思わなかった。
 
弁護人: あなたは公務員であり、病気を患っている被害者に対しこのようなことをしたことはどう思っているか。
 
被告: 弱い立場にある方に対し卑劣な行為をして申し訳ないと思う。
 
弁護人: 自分の家族にはどう思っているか。
 
被告: 狭い地域で、私を信じていた子どもたちに申し訳ないと思っている。言葉で言えないことを伝えるために努力していきたい。
 
弁護人: 社会復帰した場合は、どんな生活になると思うか。
 
被告: 被害者には接触はしません。この地域を離れ、関東にいる親戚の家に身を寄せ、就職し、家族に仕送りを送りたい。再犯防止のため、今回の事件の原因に向き合っていきたい。アルコールや性的依存の原因を探るため、専門機関に相談したい。
 
次に、検察から被告に質問しました。
 
検察: 職場で「たねちゃん」と他の女性職員に呼ばせていましたか。
 
被告: ありました。
 
検察: なぜか?
 
被告: 親近感を抱いてもらうため、親しみのつもりだった。
 
検察: 被告は酒癖がわるいと聞いたが、酔うと女性に触ることがあるのか。
 
被告: そういう自覚はありました。
 
検察: 被害者以外の女性にもセクハラ行為をしたことがあったか。
 
被告: セクハラかどうかわからないが、肩や腰をポンと叩くようなことはあった。
 
検察: 職場でセクハラ研修を受けたことはなかったのか。
 
被告: うけておりません。
 
検察: 被害者にチューハイを飲ませたのはなぜか?
 
被告: チューハイなら飲めると聞いたので。
 
検察: 昼間の時間だが、なぜお酒を飲ませるのか?
 
被告: 被害者は運転をしないから大丈夫だと思った。
 
検察: アルコールで抵抗できなくさせようとしたのではないか。
 
被告: ちがいます。
 
検察: 4人の子どもがいるということだが、そういう行為をする際に、子どもたちの顔が浮かばなかったか。
 
被告: その時は浮かびませんでした。
 
検察: わいせつ行為を物音が聞こえたのでやめた、ということだが、物音がなければ、続けていたのか。
 
被告: 時間的なものはありませんでした。
 
検察: 時間的なものということだが、音がしなければ続けていたということか。
 
被告: 時間的な制約はありませんでした。
 
検察: 被害者の胸を触ったりしたということだが、起訴された事実以外にも、被害者に対しわいせつな行為をされましたね。どんなことをしたのか。
 
被告: 同じです。胸を触ったり、キスをしたりした。
 
検察: 今回のことが被害者の今後の人生にどんな影響を与えるかわかっているか。
 
被告: わかっている。
 
検察: 被害者は誰かが後ろにいるだけで恐怖感を覚えるようになった。被告と同じ黒い車を見るだけで恐怖を抱くようになった。自分の家族への影響についてはどう考えるか。
 
被告: 申し訳ない。
 
検察: 被害者に対し何か言いたいことは。
 
被告: 申し訳ないということしかありません。
 
検察: 200万円を被害者へ支払ったといことだが、それ以外の謝罪はしているのか。
 
被告: していません。
 
検察: していない理由は。
 
被告: 理由は特に、、。接触するなと言われていたので。
 
次に被害者弁護士が質問します。(私は最初検察官が2人座っているのだと思っていましたが、思い違いでした。1人が検察官でもう1人は「被害者弁護士」でした。これは2008年にできた「被害者参加制度」というもので、被害者が裁判で意見を述べたい場合は検察の隣に座って意見を言える制度です。今回は被害者の代わりに弁護士が出たということになります)
 
 
被害者弁護士: 被告が職場では一番上の地位にいることを被害者は知っていたのですよね?
 
被告: 確認していません。
 
被害者弁護士: 被害者の採用の面接は被告がしていたのですよね。
 
被告: 面接というか面談で、再雇用の際に継続する意思があるかどうかの面談をするよう人事の方から言われていました。
 
被害者弁護士: 再雇用するかどうかに関し、被告の意見が上で覆ることはありませんでしたよね。
 
被告: ありませんでした。
 
被害者弁護士:6月23日ですが、なぜ被害者を食事に誘ったのですか?
 
被告: コロナが5類に変更になり、職場では懇親会等の交流がありました。被害者はそういうのに参加していなかったので、誘ってみました。
 
被害者弁護士: 大勢で集まる懇親会ではなく、1対1にした理由は何ですか?
 
被告: 当時、被害者は時短勤務で、夜の開催だと仕事が終わってから夕方まで待たなくてはいけなくなると思いました。
 
被害者弁護士: 被害者に恋愛感情はありましたか。
 
被告: ありませんでした。
 
被害者弁護士: 犯行現場ですが、レストランからの帰り道の途中ではありませんが、それはなぜですか。
 
被告: 学生時代の懐かしい場所でした。40年以上前のことで寂しい気持ちがありました。
 
被害者弁護士: 理由になっているかどうかわからないのですが、そこに行くのは被害者が希望したのですか?
 
被告: 私が決めました。
 
被害者弁護士: 被害者が「やめてほしい」と言ったのに、やめなかった理由は何ですか。
 
被告: 、、、、。(しばし沈黙) その辺の記憶は、覚えていません。
 
被害者弁護士: 犯行に及んでいる際はどんな気持ちだったのですか。
 
被告: 懐かしい思い出で、高校時代に被害者と似ている人と交際をしていました。その方が卒業後に県外へ就職するということで、「別れてくれ」と言われました。被害者を見ると、その当時の女性を思い出しました。
 
被害者弁護士: 被害者の気持ちは考えませんでしたか。
 
被告: 考えませんでした。
 
被害者弁護士: 被害者と「2人だけの秘密にしよう」と言いましたか。
 
被告: 言った覚えがあります。
 
被害者弁護士: それは言われては困るとわかっていたということですか。
 
被告: ありました。
 
被害者弁護士: 被害者が嫌がっていたことは認識していますか。
 
被告: ありました。
 
被害者弁護士: わいせつ行為の後の心境はどうでしたか。やり遂げた感があったのですか。
 
被告:それは違います。
 
被害者弁護士: 職場では被害者に対しわいせつ行為を何回もしていたとのことですが何回くらいですか。
 
被告: 記憶にありません。
 
被害者弁護士: 頻度は?
 
被告: 覚えていません。
 
被害者弁護士: 被害者の気持ちをわかろうとするよりも、被害者が言わないと思ったのですか。
 
被告: 、、、、(沈黙) それはわかりません。
 
被害者弁護士: 自分の子どもが同じ目に遭ったらどうですか?
 
被告: そこまで考えませんでした
 
被害者弁護士: 職場で聞き取り調査があったが、その時は、こういった行為をしていたことを否定していたのはなぜですか。
 
被告: 保身もあったし、男女の関係ということもありました。
 
被害者弁護士: 男女の関係というのはどういう意味ですか。
 
被告: 加害者・被害者ではなく、男女の関係と言う意味です。
 
被害者弁護士: 被害者の想いはどうだったと思うか。
 
被告: 大変な想いだろうと思う。
 
次に裁判官が質問しました。
 
裁判官: 今は無職ですか。
 
被告: はい。
 
裁判官: 酒癖が悪いということですが、これまでも他の人にキスをしたことがあったのか?
 
被告: シラフではありません。
 
裁判官: 被害者が「やめてください」と言っているのにやったということは、被害者がどう考えているのかわからないということなのか、考えが及ばないということか。
 
被告: そんなことはない。
 
裁判官: じゃあ、なぜしたのですか?
 
被告: 拒否されたという自覚がありませんでした。
 
裁判官: 拒否されていないと思ったのですか?
 
被告: なんて言ったらいいのか。拒否はされましたが、「グレーゾーン」のようなもので、拒否されてないと勝手に自分で解釈をしていました。言葉で拒否しても、実際は拒否していないと解釈していました。今考えれば正しくありませんでした。
 
裁判官: それを被害者だけにした理由は何ですか?
 
被告: 若いころを思い出したのが1点あります。
 
裁判官: 昔の思い出があるということだが、なぜ被害者なのですか?
 
被告: 昔の彼女と背格好が似ていました。
 
裁判官: 事件の原因と向き合うと言ってましたが、原因は何だと思いますか?
 
被告: はっきり自分で説明できないが、昔を思い出して、性的欲求をやり遂げたい。昔の彼女への夢を思い出しました。でも、これが原因でとは言えない。整理ができていません。
 
裁判官: 今回は何が悪かったと思いますか?
 
被告: 時代といいますか、私の考え方が古いのだと思います。「セクハラ」という新しい時代の情報を取り込めていなかった。昔の考えが染みついていた状態で他の人と接していたのだと思います。
 
裁判官: 古い考え方とは?
 
被告: セクハラというのが何かわかっていなかった。昔のコミュニケーションをそのまま続けていた。昔は上司が部下の肩やおしりを触ったりしているのをみていた。それで自分もやっていいのだと思うようになったのだと思う。わいせつな言葉を言って笑ったりしていたが、今ならセクハラになりますが、時代が変わってきたのだと思います。
 
裁判官: 相手が嫌だと言っているのにキスすることが大丈夫な時代があったのですか。
 
被告: 場面によって違うと思います。嫌だと言っているかわからないけど、(嫌がっている人にキスをするのを)それを見たことがあります。それが一般的かどうかはわかりません。
 
裁判官: 最初に性犯罪について弁護人から聞かれた際に、女性がか弱い立場にあると言っていましたが、性犯罪の被害者は女性だけではありません。それはわかっていますか。
 
被告: はい。
 
裁判官: あなたより大きな体の方に、あなたが同じことをされたらどういう気持ちになりますか。
 
被告: 、、、、。 (しばし沈黙) 今考えるのですか?
 
裁判官:もういいです。
 
次に検察の論告求刑となります。
 
検察: 被告人の行為は連続性、常習性があり、職務上の立場を利用した悪質な行為である。被害者は断れば失職させられる恐れを抱き、誰にも相談できなかった。被害の大きさが甚大であり、被害者の尊厳を踏みにじるものである。懲役3年を求める。
 
次に被害者弁護士が被害者の意見を朗読しました。
 
被害者弁護士: 数えきれないほどわいせつな行為を被告にされました。被告に対し恋愛感情はありませんでした。ランチするだけだと思ったのに、あんなことをされるとは思わなかった。誘いを断って関係が悪くなったら嫌だと思った。やめてくれと言ったのに、やめてもらえませんでした。怖くて耐えられない。説明できないくらいたくさんやられました。でも被告の一存で仕事を辞めさせられたらどうしよう。収入源がなくなったらどうしようという想いから、誰にも相談できませんでした。被告から声をかけられるたびに怖かったです。同僚が声をかけてくれて、すべてを打ち明けることができました。それでも、当初は被告が事実を認めていないと聞いて、とても不安になりました。私が嘘をついている、と思われたらどうしようと不安になりました。今回のことで自分の家族に迷惑をかけてしまいました。被告人はなぜこのようなことをしたのでしょう。これからもずっと許すことはできません。
 
 
次に被害者弁護士の意見です。
 
被害者弁護士: 被告の行為は人としての尊厳を踏みにじる行為であり、被告には真摯の反省がみられない。被害者に謝罪はしておらず、当初は犯罪行為を認めようとしなかった。自分がした行為に向き合う姿勢が見られないことから、それ相応の処罰を求めます。
 
次に被告人の弁護人の最終弁論です。
 
弁護人: 被告は200万円を被害者に支払っていること。謝罪をしなかったのは、どんな謝罪をしても受け入れてもらえるとは思えなかったからである。懲戒免職をされ、退職金も受け取れなくなった。関東で社会復帰をできる体制がとられ、被害者とは接触しない。被告の家族は大変な想いをしている。前科前歴はない。よって、執行猶予判決を求める。
 
次に被告人に裁判官が「最後に何か言いたいことはありますか」と聞きました。
 
被告人は「特にありません。申し訳ありませんでした」と言いました。
 
 最後に判決期日を4月30日午後4時からと決定し、閉廷しました。

私の感想:

● 裁判官、検察官、弁護士の仕事の偉大さを改めて実感した。法曹界の人間は弱い人を救うことができる仕事なのだと思い、多くの子どもたちに知ってもらいたいと思った。

● 被告がセクハラ研修を一度も受けていないということに驚愕しました。

● 被告が全く反省している様子がないということに驚きました。前科前歴がないし、口では謝罪をしているため、執行猶予付きになるのだろうけど、もしかしたら実刑判決がでてもおかしくないレベルではないか。

● 被告も言うように、市役所内の男尊女卑の文化・慣習が大きく被告の言動に影響しているのは明々白々であり、市役所内の改革が急務である。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?