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シンデレラ・コンプレックス〜手書きの名刺~|#短篇小説


この短篇小説は、以下のnoteの続きになります。

よろしければご高覧下さい。

↓ ↓ ↓


【前回の抜粋】

「―――どうせ、営業なんでしょ」


和美は冷めた目でそれらのLINEを眺めていたが、日々LINEの通知が届き、たまに自撮りの画像が入ったりするのを見ているうち、連絡が途切れると、言いようもない欠落感に襲われるようになってきた。



(何で、涼哉りょうやはホストになったんだろう・・・?)



お店の無地の名刺に・・ネームペンで書いた「片桐涼哉」の名前の文字が、頭に浮かんだ。


(中略)


あるとき。

和美が何気なく観ていたYouTubeの「おすすめ」に、


【Over Nightの締日しめびナンバー発表!!】



というサムネイルの動画配信があるのを見付けた・・・

「和美と絵梨花〜手書きの名刺」




シンデレラ・コンプレックス
〜手書きの名刺〜




和美の目はテレビに釘付けになった。


YouTubeのサムネイルを、ドキドキしながらリモコンで選んで押した。




YouTubeでは、売上げの多いホストのナンバーが発表されている。ナンバー10から、マイクコールで源氏名が呼ばれ、カメラが向けられると、女性と並んで座っているホストが映る。


TOP3の月間の売り上げは1000万を超えていた。


(私の年収より多い・・・)


和美には計り知れない世界だった。


店内の壁沿いにめぐらされたソファで、女性(“姫“と呼ぶらしい)といるホストの様子は、彼らなりの明暗が分かれているのが垣間見えた。


まばらな拍手とともに、呼ばれて嬉しそうな顔を見せる者もいれば、長いソファの背に手を回して、俯向うつむき加減で暗い顔をしているホストもいた。おそらく、不本意な結果なのだろう。


(結構、厳しそうな世界だな・・・)


と和美は感じた。当然かもしれないが、まだ数ヶ月前に手書きの名刺だった涼哉りょうやは、その中に映っていなかった。


YouTubeに出ている締め日から月が明けて、6月5日になっていた。


ふと気になって、先月末の涼哉のLINEメッセージを見直してみる。


―――「元気? 最近 顔合わせてないね

また話したいな」


相変わらず、営業しているような、淡白なような・・・微妙で曖昧あいまいな言葉が並んでいた。


(向いてないのかな・・・)


和美は、涼哉の店での姿を想像した。彼がライトや鏡面や音楽で、華やかに演出された世界の中にいて、一生懸命テーブルをセッティングしたり、露のついたグラスを拭いていたりするのを考えると、何となく何かに心が掴まれるような気がするのだった。



不思議と、女性と座っている姿をイメージすることはなかった。





「―――え、毎日LINE来てるの!?」


絵梨花は周りの人が思わず耳をそばだてるくらい大きな声で、和美に問いかけた。久し振りにランチしようと約束をした日、食後の会話で、和美の近況を伝えたのだ。


「・・・うん。お店に行った夜から」


和美はホットミルクティーのカップを持ち上げた。


絵梨花は左手でアイスコーヒーのストローをもてあそびながら、右手をテーブル越しに伸ばす。


「・・・ちょ、ちょっと、見せてみ。
そのLINE」


絵梨花は半分和美の保護者の気分でいる。正直、あまりひと・・には見せたくなかったが、仕方なく自分の席の横に置いてあるバッグをさぐって、携帯を取り出した。


「トーク見るよ。・・・何だっけ?そのホストの名前」


涼哉りょうや


和美が名前を告げると、一瞬絵梨花と目が合った。彼女はうなづいて、しばらく携帯をスクロールしながら読んでいた。


「・・・はぁー。ホストってまめ・・なんだねえ・・

私の担当した男は、生活キツキツで貧乏だって言ったら、なーんにもアピールして来ないわ」


絵梨花は、はい、と携帯を和美に返す。


「―――で?どうしたの?

また、そのホストに会いに行きたくなった??」


いつも絵梨花はそうなのだが、先回りして直球で質問してくる。だから、和美はまごまごして挙動不審になる。


「いや、その・・・どうしたらいいかな、と思って。LINEブロックしたほうが良い?」


「ん・・・良いんじゃない?和美はさ、余りにも男慣れしていないから、そういうプロの人に話を聞いてもらったら?

私、ついて行ってあげるよ。行こ?」


急にまた展開が進んで、和美は慌てた。絵梨花は悪戯っぽい目つきをきらきらさせながら、和美に顔を寄せて言った。


「―――あのさ、女磨きの修行だと思って、あっちが驚くぐらい綺麗にして、お店に行ってみようよ。手伝ってあげる」


和美は絵梨花の顔をまじまじと見直した。


どうやら、絵梨花は冗談を言っているのでは無いようだった・・・






【continue】


▶Que Song
golden hour/王OK(COVER)



🌟Iam a little noter.🌟



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