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Good-Bye September〜風街へ連れてって|#短篇小説


この短篇小説は、こちらのお話と繋がっております。


よろしければご高覧下さいませ。(過去作すべて読めます)

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Good-Bye September
〜風街に連れてって(最終話)




奈良からの帰り道の車中は、最悪の雰囲気だった。僕の独占欲が強過ぎることは充分分かっていた。


深瀬と別れている期間、彼女が誰と何をしていようと、口を挟むことじゃない。僕にそのかん何も無かったのは多忙だったからで、別に彼女に遠慮した訳じゃない。


それでも、もし終わった何かがあったとして、彼女に男の影がさすのは耐え難かった。



交際が再開してしばらくした頃、彼女は出張中の話を僕にしたことがある。




体育会系の営業の先輩と食事に行ったあと。


珍しく、

―――仕事〈イベント〉が無事終わったから。

ということで、場所を変えて飲みに行こうと言われた。


半分バーのような店で、やたらとカクテルを何度も勧めてくるので、こわくなって【シャーリー・テンプル】というノンアルコールのカクテルをたのみ続けた。先輩はそれがノンアルコールと知らないようだった。杯を重ねるうち、先輩は不思議な顔をしながらつぶれかけてしまった・・・




そんな話で彼女はくすくす笑っていたが、僕は全然面白くなかった。


男性とふたりで行く泊まりがけの出張、というのは、やはり危険だと感じただけだった。


あまり干渉すると、うまく行かなくなる。


過去にそれを学んだはずなのに、自分の感情の落としどころが、いつまで経っても掴めなかった。




秋の訪れは、朝と夕から順番に来る。もうすぐ草むらには虫のすだく声が聴こえるだろう。


深瀬と気まずい顔で、あの日「じゃあ、また」と家へ送ったあと、何となくうまくきっかけが作れず会わない日が続いた。


日常生活のルーティンをこなしていたら、あっという間にひと月近く過ぎてしまったのだ。僕はやや焦っていた。



彼女の性格から言って、向こうからも何の音沙汰も無いのは、前回別れ際まで僕が無愛想だったので、控えているに違いなかった。


(―――これは、不味まずいよな・・・)


仕事中は忘れているのに、決まって通勤途中にもやもやした気持ちになる。オフィス街の駅のコンコースの雑踏をすり抜けながら、ふと、こんなことを思っていた。



(―――普通の顔をしているけど、彼氏彼女のことで悩んでいる人間は、どのくらい紛れてるんだろうな・・・)





2度めの乗り換えで、座席に腰を下ろせた。電車の乗客の雰囲気が、少し似通ってきた。


(本でも読むか・・・)



ビジネス用のバッグから、文庫本を出そうとファスナーを開けかけたとき。


(――――ん?!)


視線の先、車両の奥のほうに、深瀬に似た背格好の後ろ姿が見えた。髪の形、雰囲気はそっくりだが、こんな平日に東京方面に来ているはずがなかった。


別人だと思いつつ気になって、ちらちらそちらへ目を走らせた。


深瀬似の女性は、年の近そうなスーツ姿の男性と親しげに会話していた。時々、二の腕のあたりにそっと触れて、笑いながら俯向うつむいた。


そして、数駅過ぎて、ふたりは電車を降りていった。


(―――夫婦なのか・・・)


そうか、と僕は納得した。今見たふたりの関係性だけじゃなく、自分のもやもやした感情が、クリアになった気がした。


―――深瀬と、一緒に暮らそう。


―――もう、離れてお互いの心を推しはかる必要なんて、ないじゃないか。


―――深瀬は僕に声をかけてくれた。
もう一度、僕たちの絆を結ぶために・・・


それが、答えなんじゃないのか?



僕の心に「結婚」の二文字がクローズアップされた途端、じわじわと力が湧いてくるように思えた。


(今晩、深瀬に電話しよう・・・)


プロポーズの日の約束をするために。
そうだ。受け入れてくれたら、一緒に指輪を買いに行ったって、良いじゃないか・・・。



【 fin 】


▶Que Song

SEPTEMBER/宮本浩次




お読み頂き有難うございました!!


【SEPTEMBER】は失恋の歌ですが、私はハッピーエンド好きなのでこのような結末になりました😊


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また、次の記事でお会いしましょう!


🌟Iam a little noter.🌟



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