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美しさと残酷さはとても近いージャン・コクトーやターセム監督、石岡瑛子が見せてくれる世界

観たことはなくても「美女と野獣」を知らない人って多分いませんよね。特にディズニーのアニメーション、実写版のそれはかなりの人が観ているのではないでしょうか。もちろん私も両方観ました。

音楽も画像も美しいし、勇気とか愛とか人間にとって大事なものを伝えてくれる素晴らしい作品なのですが、私にはディズニーの「美女と野獣」は素敵すぎました。ひねくれているのかもしれませんが、童話ってほんの少しの毒があるからこそ良いっていうのが私の持論なのです。


ジャン・コクトーの美女と野獣

画家で作家で映画監督でもあった多才なジャン・コクトーという人がいました。彼が撮った1946年の「美女と野獣」で私は童話だけが持つ美しさと残酷さが紙一重の世界に魅せられました。

コクトーの世界では野獣の容貌はあくまで恐ろしく、テーブルや壁の燭台に至ってはなんと人の手なのです。それと対比してのベルの輝くような美しさを見せてくれるコクトーの「美女と野獣」はまさに大人のための童話と言えるでしょう。

この作品で私は「美しさと残酷さはとても近い」と気づきました。


ターセム監督の「ザ・セル」と「落下の王国」


これまで多くの映画を観てきましたが残酷さをまとった美を一番見せてくれたのはなんと言ってもターセム監督です。彼はナイキなどの CMを作っていた人なので映像にこだわることには定評がありましたが、「ザ・セル」と「落下の王国」で彼の世界観は結実したと言っても良いでしょう。
両方とも一見の価値がある、と私は思います。

ザ・セル
簡単に言えばこの作品はジェニファー・ロペスが演じる精神科医が殺人犯の意識に入り込み、彼の世界を見るという一本です。この説明だとクリストファー・ノーラン監督の「インセプション」を思い浮かべる人も多いのではないかと思います。

両者の決定的な違いは「ザ・セル」で主人公と観客が見る世界が狂気と残酷さに満ちたものである点です。私は怖くて途中で観るのを止めようかと思いました。でもターセム監督の作った残酷な世界があまりに美しく最後まで観てしまいました。

https://www.youtube.com/watch?v=Yvz41ya92wk


落下の王国

ターセム監督2006年の作品です。重傷を負ったスタントマンの青年がモルヒネ欲しさに同じ病院に入院している少女に自分で作った童話を語るという設定の一本ですが、この世界が、涙が出るほどそして怖くなるほど美しいのです。まさにターセム監督の面目躍如です。
(残念ながら配信はありません。私は探しまくって中古のDVDを買いました)

この予告編だけからでも青年が語るおとぎ話の世界の美しさが十分伝わると思います。ぜひご覧下さい。

ターセム監督は「ザ・セル」で作りきれなかった世界を「落下の王国」で実現し、おそらく彼の中で作りたいものが終結したのでしょう。この作品以降の彼の映画は肩の力を抜いたように感じられます。作りたいものを作りきった、そういう映画との関わり方って幸せだな、私にはそう思えます。

残酷さをまとった美ー石岡瑛子というアートディレクター

ターセム監督の映画に欠かせなかった石岡瑛子

石岡瑛子(2012年没)は日本が世界に誇るアートディレクターです。
彼女無くしてターセム監督の美しく残酷な世界は成り立ちませんでした。


*石岡瑛子が作った衣装の一部です。誰にも真似できない世界です。



F・F・コッポラの「ドラキュラ」

同じく石岡瑛子がいたから具現化できた映画にフランシス・フォード・コッポラの「ドラキュラ」があります。テーマからも分かるようにこれもまた残酷さと美しさが共存してこその世界です。

この作品での苦悩を演じたゲイリー・オールドマンの素晴らしい演技、ウィノナ・ライダーの悲しいまでの美しさは石岡瑛子が作ったと言っても過言ではありません。

そして石岡瑛子の世界観ゆえに「この映画はホラーではなく芸術だ」と評されもするのです。

最後に

映画は作品ごとに色々な楽しみを見いだせます。

私は時に美しさを強く求めて映画を観る事があります。今日書いたのはそんなリクエストに応えてくれる映画たちです。

美しさに満たされた世界を感じるのは人間としてとても幸せなのではないかな、私は心の底からそう思います。


最後までお読み頂きありがとうございました。
どうか今日も皆様が人生の2時間を使う価値のある映画に出会えますように!















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