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スマブラステージ【AD.1735.蒸気力排水機】

 このスマブラステージはイギリスの発明家トマス・ニューコメンが開発した蒸気力を用いた炭坑用の排水ポンプを描いたものです。

 水が沸騰して気化した水蒸気の力で物を動かす研究は、紀元後1世紀の古代ギリシャの時代から行われていましたが、あまり大きな力は出せていませんでした。しかし17世紀に入ってから研究は進展し、1712年にニューコメンが開発した排水ポンプは初の実用的な蒸気機関となりました。

 16世紀以降イギリス(大ブリテン島)で鋼鉄の需要が増えていましたが、当時は鋼を作るのに木炭を使っていたので、木材が足りなくなり鋼鉄の生産が滞りました。
(鋼鉄の製造についてはこちらをご覧ください↓)

 石炭は不純物の関係で鋼鉄づくりに適さなかったものの、石炭を蒸し焼きにしたコークスを使えば石炭でも鋼鉄を作れるようになり、イギリス各地で石炭の採掘が活発化することになります。
 石炭を掘り出すときに、炭鉱にたまった湧き水をくみ出すのに多大な労力がかかっていたので、排水を効率化するためにニューコメンのポンプは作られました。

 水が水蒸気になると体積が約1700倍になります。容器Aを炉で加熱して蒸気を満して、容器Bに入った冷水で冷やすと容器A内の蒸気が水に戻り、体積が急激に収縮する時の圧力(赤矢印)をテコCで増幅して地下の水桶Dを持ち上げて湧水を汲み出し、石炭を燃やして生じたガスを煙突Eで排気します。


このスマブラステージでは水桶とテコが連動して動きます


 ニューコメンのポンプによって石炭採掘は効率化できましたが、燃料効率は低く、掘り出した石炭の1/3程度がこのポンプを動かす燃料に消費されていました。1769年にジェームズ・ワットによってより効率的な蒸気機関が開発され、その後も蒸気機関の効率化と応用は進んでいきます。

・蒸気機関の応用
 18世紀のイギリスの綿織物作りでは、織機や紡績機が改良がされて、それまで職人が手作業で行っていた工程が自動化されるようになっていました。これらの機械は水車を使って動かしていましたが、蒸気機関を使うことで近くに川がなくても工場を建設できるようになり、蒸気機関が改良され出力が上がるとともに、織機や紡績機、印刷機や旋盤などが高速で動かせるようになり各種産業の生産量が急上昇しました。

 蒸気機関は移動手段にも応用されます。それまで重い荷物は馬に運ばせたり、運河の浮力で軽くして船で運んでいました。蒸気力で貨車を動かす蒸気機関車が1804年に発明され1825年に旅客運行されるようになると、大量の物資を短時間で運べるようになり、陸路の物流が劇的に増加、社会は発展していきます。19世紀後半には蒸気力を使った自動車も実用化され、農業用のトラクターや、土木建築用のショベルカーやクレーン車が使われていました。蒸気船は1783年に発明され1807年に営業運航が始まり、それまでの帆船と併用され、19世紀中ごろに蒸気船が主流となりました。

 こうして蒸気機関は様々に活用されて人類に恩恵を与えましたが、ボイラーの爆発事故、騒音、石炭の煤による大気汚染や排水問題のような人間への悪影響も発生しました。
 工業化(産業革命)についても、機械による労働災害、劣悪な労働環境、工場所有者(資本家)と労働者の貧富の差の拡大、工業化した国とそうでない国との軍事力の格差による侵略行為の活発化、それによる植民地の人道的被害と宗主国との格差など、様々な問題が発生し、解決は試みられたものの現代まで問題は尾を引いています。

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