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某プロスポーツ選手

出会い

ハイスペック男性が集うことで知られているマッチングアプリで、わたしと彼は出会った。

ここではRと呼ぶことにしよう。

「シンプルにものすごくタイプだったのでメッセージしました」

唐突にメッセージを送ってきたRは、アプリの中でも年収レベルが最上位層にある男だった。

どうせテンプレなんだろ〜?

と怪しさを感じていたのだが、ぼやけた写真とは裏腹に熱量を感じる自己紹介文に興味を持った。

ふーん、おもしれー男。

わたしはRと一度会ってみることにした。

惹かれたきっかけ

5つ星ホテルの35階にあるラウンジでわたしとRは待ち合わせをすることになった。

青い空と都会を背景に、アフタヌーンティーをしているかわいい女子たちがよく映える。

Rは「ちょっと遅れるから先に頼んでていいよ」と言ってくれたので、わたしは梨のスパークリングジュースを優雅に飲んでいた時だった。

「お待たせしました〜」

そこに現れたのは明らかに高そうなスーツに身を包んだちょんまげ姿の大柄な男だった。

ラーメンマンのような男を想像してもらったら分かりやすいかもしれない。

うわ…ミスった…何この人!怖すぎる!

ヤ○ザと言われてもおかしくないくらいに威圧感のあるRの姿に、わたしは言葉を失った。

とっさに直前までスマホで見ていた「ハンバーグの作り方」の画面をRに見せ、「和風ハンバーグか煮込みハンバーグ、どっちが好きですか?」と尋ねると、Rはにっこりと笑った。

「何、作んの?かわいいね」
「まじで俺のタイプなんだけど」

事業を経営しながらプロスポーツ選手をしているというRの話はどこまでもぶっ飛んでいて面白かった。

お酒を何杯か飲むと、断る隙もなくRはわたしとの次の約束を取り付けた。

空は茜色に染まり始めていた。

事件

Rと2回目のデートで、わたしは人によってはトラウマレベルの事件に巻き込まれてしまう。

その日、Rはわたしを個室のイタリアンに呼び出した。

お酒が進んできた頃だった。

「俺と付き合ってみる?」
Rにそう言われて、思わず首を縦に振ってしまった。

「俺はまじでいいと思ってる」
「こんなに話聞いてくれる優しい子いない」
「俺は真剣だよ」

Rはわたしを大絶賛しながら、さりげなく隣に来てボディタッチをしてきた。

「これからよろしくな」

外に出ると、大粒の雨が降り始めていた。

わたしは結構酔っていたので、2軒目はタクシーで向かおうというRの提案を快く受け入れた。

タクシーが向かった先はホテルだった。

終焉

Rとホテルの部屋で2人きりになり、これから何が始まろうとしているのかを悟った時、急に恐怖が襲ってきた。

こいつヤリモクやん…。

挑発的な態度で服を脱ぎ、ベッドに誘うRを横目に、わたしの気持ちは完全に冷め始めていた。

「こういう男ばっかや…」
「もう誰にもこういうふうに扱われたくないから結婚したいと思ってるのに」

勇気を出して口に出せた安堵と悔しさが入り混じって、頬を大粒の涙が伝っていく。

Rは力強い腕の筋肉でわたしを抱きしめながら、こう言った。

「そんなつもりなかった」
「付き合ったからいいと思った」
「お願いだから帰らないで」
「俺にもう一度チャンスをください」

もうわたしにRの言葉や態度は響かなくなっていた。

「思ってたのと違うので帰ります!」

腕を振り払うようにしてホテルから抜け出し、通知の鳴り止まないRの連絡先をブロックして、この関係に終わりを告げた。

P.S. アスリートの腕の力は想像を絶するくらい強かったwww わたしは元気です。

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