知っていますか?MAC
こんにちは。手術室看護師のnanaです。
吸入麻酔に調べると必ず出てくる「MAC」というワード。英単語というだけでそれが何を意味するのか嫌煙しがちだと思います。
なので今回は「MAC」についてです。
MACとは
最小肺胞内濃度(MAC: Minimum Alveolar Concentration)は,吸入麻酔薬の強さを示す指標であり,麻酔の深さを定量化するための重要な概念です。具体的には,動物実験において外部刺激に対する反応が50%減少する濃度を指します。
もっと簡単にすると,1MACである吸入麻酔薬を使用した時に皮膚切開を行うと50%の人で体動が起こるということです。
MACが低いほど麻酔作用が強く,反対にMACが高いほど麻酔作用が弱いことを示します。しかし,MACと鎮痛作用の強さは必ずしも相関しないことに留意する必要があります。鎮痛作用は,麻酔薬の種類やその他の因子によって異なるため,MACと鎮痛作用の関係は複雑です。
年齢もMACに影響を与えます。一般的には,教科書に記載されているMACの値は40歳の成人を基準としています。しかし,年齢が上がるにつれてMACは低下する傾向があります。
MAC-awakeとは
MAC-awakeは,麻酔から覚醒する際に,患者が言葉による簡単な指示命令に応答できる肺胞内濃度を示します。これはおよそ0.33MACとされており,麻酔中の意識レベルを定量化する上で重要な指標です。現代の麻酔では,手術中や手術後の鎮静目的で吸入麻酔薬が使用されることが一般的です。その際,MAC-awakeは患者の安全性と快適さを確保するために考慮されます。
一般的な手順としては,麻酔導入時に十分な鎮静が確保された後,MAC-awakeの約2倍の余裕を見て,0.7MAC程度の濃度で吸入麻酔薬が維持されます。また,麻酔中に十分な鎮痛が確保されるように注意が払われます。例えば,セボフルランは一般的に1%から5%の範囲で使用され,鎮痛と麻酔の両方の効果を適切に調整するために慎重に管理されます。
以下よく使われる吸入麻酔薬です。
1.イソフルラン(Isoflurane)
イソフルランは一般的な吸入麻酔薬の一つであり,MACは1.15%です。つまり,イソフルランを1.15%の濃度で供給することで,平均的な成人患者の50%が外部刺激に反応しなくなる麻酔深度が得られます。
つまりこんな感じです。
2.セボフルラン(Sevoflurane)
セボフルランは麻酔導入や維持に広く使用される吸入麻酔薬であり,MACは2.0%です。したがって,セボフルランを2.0%の濃度で供給することで,平均的な成人患者の50%が外部刺激に反応しなくなる麻酔深度が得られます。
しかし加齢とともにMACは低下し,年齢が10歳上がると7.2%低下します。したがって高齢者では20歳の約半分にまで低下することに注意する必要があります。
小児のMACは2.5〜3.3%です。
3.デソフルラン(Desflurane)
デソフルランは急速な麻酔の導入や回復を可能にする吸入麻酔薬であり,MACは6.0%です。つまり,デソフルランを6.0%の濃度で供給することで,平均的な成人患者の50%が外部刺激に反応しなくなる麻酔深度が得られます。
これらのMACの値は,一般的な成人患者に基づいていますが,年齢や体重,その他の因子によって異なる場合があります。したがって,患者ごとにMACを調整することが重要です。MACの適切な調整には,患者の年齢や健康状態,手術の性質などを考慮する必要があります。
また,MACは鎮痛作用とは必ずしも一致しないことに留意する必要があります。麻酔薬の種類やその他の要因によって,MACと鎮痛作用の関係は異なります。したがって,鎮痛を確保するためには,MACだけでなく,追加の鎮痛薬や補助的な治療法を検討する必要があります。
吸入麻酔薬のMACは,麻酔医や看護師が患者の麻酔深度を適切に管理する上で不可欠な情報源です。患者の安全性と快適さを確保するために,MACを適切に理解し,麻酔管理に活用することが重要です。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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