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自閉症児の親になってから「レインマン」をまた見てみる

30年前に見た時と、全く違う印象になった。で、やっぱり面白かった。

まず、チャーリー(トム・クルーズ)が高級中古車販売の業者とは言え、車のスペックや販売台数など、めっちゃ細かい数字をベラベラ喋る。
「あっ、やっぱり兄弟だから傾向はあるんだ!」
いるいる、こういう兄弟児! リアリズムが半端ない。

チャーリーがたびたびイラつき、キーってなって同じ単語を繰り返すところも、今は、
「傾向じゃん」
と思うが、公開当時は見てて
「テンション高いなぁアメリカ人」
位で気にしてなかったと思う。チャーリー=定型発達の代表、みたいに見ていて全然気が付かなかったが、相当グレーだった。

傾向が強いが社会性があり成績もよく、世渡りもできるグレーの弟と、
社会性ゼロで自分の世界に閉じこもる、サヴァントありの兄(ダスティン・ホフマン)。
対照的でいて、とても似てる兄弟の話に見えた。うちの兄弟(兄ASD、弟ADHD)に通じるものを感じる。父親の気持ちになると、
「いや本当、大変だわー!」
となった。兄の方が療育センターに通園してたら親子日に、この兄弟の父と、
「弟は一見大丈夫なところが難しいんです」
「わかります!」
みたいなやり取りをした気がする。

でも、見てて不自然というか、大相撲なら物言いを付けたくなる場面もあった。

レイは体を触られるのを嫌がるのに、楊枝のパンケーキ屋でチャーリーに首を掴まれて、ちょっと不穏にはなるけど、そんなに騒がなかった場面。
「これ、こんなもんじゃすまないのでは?」
と思う親、多いと思います。その場でパニック起こすか、後々ずっと引きずるんじゃないかなぁ。まぁでも自閉症は100人いたら100通りなので、行司の軍配通りでいいです。

あと、有名なカジノのシーンもどうかな。あんな視覚聴覚ともに刺激だらけの、初めて行ったところに、落ち着いて座っていられるかな? チャーリーが8万ドルを手に入れないと話がまとまらない&サヴァントの特性のキラキラ演出だと思うけど、なんつーかファンタジーが勇み足というか。でもまあ100人いたら100通りだしね。うん。軍配通りで。

ひとつ発見があった。
常々、療育に懐疑的な人って不思議だなぁ、と思っていたけど、「レインマン」再鑑賞で気がついた。あの人たちは自閉症が治ると思っているんだ、きっと。モーテルについて、例のアボット&コステロの漫才を唱えて落ち着こうとするレイに、
「ギャグが分かれば症状もよくなる」
え? 治るとでも思ってんの? と思ったが、チャーリーと同じ考えなんだろう。だから、
「療育は医療じゃないのに。療育に時間を割くなんて虐待だと思う」
とか言っちゃう人がいるんですね。あ、10年くらい昔の話です。

別れのシーンでチャーリーが、
「1週間後(?だったか?)に会えるよ。何時間後?」
と聞くとレイが、
「○○時間後、分だと○○分後、秒だと○○秒後」
と答えるの、うちのADHD次男もやってたので「おおおおお」と思った。

トム・クルーズ的かと思っていた次男がダスティン・ホフマン寄りだったとは!


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