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【詩】荒野を行く者の護符

不穏なる空気が漂う闇の中、雷鳴が轟く
上空を切り裂くように走る稲妻
その光が浮かび上がらせるのは
囁き混じりの冷やかな視線と
どこまでも続く枯れた大地
僕は何も映さない瞳と何も感じてない素振り
乾き切った風が渦巻く闇の荒野を
果てを目指して歩き続ける

共に行く君は僕の道連れ
敵でもなく味方でもないただの道連れ
空気を読まない能天気な願望や
どうでもいい世間話を垂れ流し
考えの浅いくだらない日常を展開する君に
初めはスルーしていた僕だが
次第に呆れ笑いを洩らしながら
適当に相槌を打ったり
馬鹿馬鹿しく思って笑い飛ばしたりしていた

道の具合によって僕達は
先に行ったり後を行ったり並んで歩いたり
僕は
「なぜ一緒に行ってくれるの?」と聞かない
「なぜ一緒に行くの?」とも聞かない
どうせ君のことだ
「ん~、行く方向が同じだから。偶然だね」
と言って済ますに違いない

そんな日々が繰り返される中
僕は果てへと辿り着いていた
荒野は終わったのだ

僕が君の本心を知ったのは
それから随分経ってからのことだ
久しぶりに会った僕達
再び共に歩きながら
先を行く君が僕を振り返った時
その瞳に宿るものに僕は見覚えを感じた
荒野を共に歩いた時に目にしていたそれは
「僕を気遣う思い」だった

どうして、気づかずにいたのだろう
荒野を行く日々の中で何度も見ていたのに
凍りついたように心を閉ざし
感情を鈍麻させて自分を守っていた僕は
その思いに気づく余裕がなかったのだ
決して本質に踏み込まずに
わずかな波風さえも立てずにそっと傍にいる
というそのやり方は
あまりにもさり気なさ過ぎた
僕に聞かせたどうでもいい話の一つ一つが
僕の心を解きほぐすためのものだったのだ
全くそんなことを思ってさえいない
という素振りでいながら
本当は全てが
荒野を行く僕を守るためのものだったのだ

随分と遅くなってしまった礼を言う僕に
君は大したことではないと言うように笑った
気づかれなくてもいいとも思っていたから
とさえ言う君は
真に利他の人だった
その心こそが
荒野を行く者の護符足り得るような
力の源だったのかもしれない


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