愛は いま   鬼りんご

(1行の字数が多いため、note上では改行の箇所とそうでない箇所がわかりにくいため、全ての行末にスラッシュを入れました)


歌ふあなたのこゑが私を染め上げてゆくのは世界が時刻と同義だからです/
朽葉色に燻る古文書の呪文は仄昏く発ち昇る現在です/
薔薇色に乱れる雲の予報はまばゆく馳せ下る現在です/
「時間とは現在の被認識形式の比喩である」(哲学少年の鉛筆はHB)/

波を蹴立てて愛が永遠を辷つてゆくのはあなたの吐息の濃度変化のせゐです/
縺れ落ち噴き上げるあなたのこゑ の密度カーヴを/
意味で微分しようとまちがえるのが私の単一機能であり/
そのゆゑを以て 世界といふ抽象を愛するに過ぎぬ と嗤はれて久しく/
既にばらばらに私はこはれ散らばって痒い と嘆く私はどこにゐますか?/
「視てゐる海の漲りを視てゐると知らず 語られた潮流を視てゐると誤認し/
視てゐるとも知らぬ波濤を原形保存するがゆゑに 迷ひの影はその瞳を彩る/
悲哀かなしみのあまり旅人は正気を急ぐ」(穹静人「何を私は視てゐるのか」)/

耀ひも青く明滅する情報は現在に消去されてゆく現在です/
閃き射す原色事件群は時間偽造工程を割く現在です/
交錯電子街をふらつけばいま透明にはぢけます 白昼ひるで 孤りで 賑やかで/

迷はせてくださいもつと深く いま寂光に吹かれつつ/
息づきしづもる あなたといふ森 そこにとどろき いま万象を傷みつつ/
うねりざはめく 海といふあなた あなたの変転/


(「こどもだま詩宣言」対応  原文縦書き・改行スラッシュ無し)

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